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裕介の事情3

「この冬には関西の大学に行かれたって大場さんに伺いましたが、じゃあ受かったんですね」

 マスターは「おめでとう」と言うなり。今日はサービスで特別仕立ての珈琲を淹れましょうと、選りすぐりの珈琲豆を混ぜ合わせた珈琲を出してくれた。

「そうだなあー」

 と出来上がった珈琲を飲みながら、少し照れくさそうにしながらも同じ学生の坂部を紹介した。大学へ行った裕介も珍しいが、滅多に来ない美紗和もこの店では珍客のようだ。

「此処はおじいちゃんと子供の頃によく連れて来てもらった」

「あの頃はいつも大場さんとご一緒でしたね」

 マスターの話から車を運転しない祖父は大場さんをいつも連れ添って出掛けていたようだ。あの頃は裕介君はいつもミックスジュースを作らされたお陰で、メニューに幅ができて少しは若い女の子も店に来るようになった。

「どっかのテレビ局が雲海に浮かぶ大野城を見せてから結構観光客が増えたんだ」

「ああ、それ見たことあるなあ」

 坂部に目をやりながら、どうやら雲海の城が受けて、訪れる観光客も増えたようだ。それ以外では余りここまで足を伸ばす人が少なかった。

「そう言えば昔は高村の旦那さんは、大場さんと一緒に九頭竜川へ鮎の友釣りに出掛けていましたね」

「祖父は釣りをやるんですか」

「還暦過ぎまではよく行ってましたよ。帰りはいつもうちの店へ寄ってお裾分けに鮎を頂いてましたね」

「大きい川ですか」

 坂部が訊いた。

「俺は一度嵐山の渡月橋から松尾橋辺りの桂川をバスから眺めたがあんな感じだが、九頭竜川の川辺にはあんな賑わいはなくもっと野生っぽい暴れ川だが、なんせ福井を象徴する川だ」

 二人の会話に、美紗和がこれから祖父亡き跡をどうするかでしょうと言われた。


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