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裕介の事情1

 随分と待たされた坂部は、まだ良く事情が飲め込めないまま高村を見た。高村は姉に、もうウンザリしたと少々疲れ気味に、町まで出たいと美紗和に催促した。流石に田舎だけあって車は必需品のようだ。高村は免許はないが坂部は去年免許を取った。早生まれの坂部は高校三年生で直ぐに十八歳になると、兄弟が多い彼は早く自立する為にも直ぐに普通免許を取った。此処が苦労人の坂部と坊ちゃん育ちの高村との違いである。

「大場さんに頼めばいいんじゃないの」

 とアッサリと拒否された。

「おじいちゃん以来、居続けてる古株はダメだ。嫌なら車を貸してくれ、坂部に運転してもらう」

 そんな言い方はないでしょう。大場さんには、みんなの送迎とこの庭がいつでも見飽きないようにしてもらっていて、ととがめられた。

「だからのんびりしたいんだ。それにお前にも言いたいことが山ほど出来た」

 坂部は免許取り立てのようで運転が物騒で彼女は承諾した。美紗和は庭を抜けて玄関から続く石畳を外れた疎林の間に止めてある赤い小型車で三人は屋敷を出た。

「これは美紗和さんの車」 

 後ろに乗り込んだ坂部が訊ねた。

「そうよ、福井の大学に通うのに買ってもらったのよ」

 車に興味のない高村は、電車があるのに、これだから困るんだと言いながら要求している。美紗和さんの運転は普通だが、大場さんの車に乗ったあとの所為せいか少しぎぐしゃくしている。その典型が曲がり角に差し掛かると、少し余分に外側にハンドルを切ってから曲がり出した。

「どうだったの」

「何も変わってない、おじいさんが死ぬ前と」

「のりちゃんのことは何もなかったの」

「彼女はいとこなんだよね」

「何言ってんの、またいとこよ」

 高村は頭は良くて計算高い男だと思っていたが、親族間の間柄に関してはかなり出鱈目だ。こんな男に両親と長男はいったい何の相談をしていたのか坂部は呆れてしまった。




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