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千里2

「それで美紗和さんは僕が退屈しないように話し相手に来てくれたの」

「冗談じゃないわよ、あたしはそんなお人好しでも暇人でもないわよ」

「じゃあどうして此処へ」

「裕介が、今日明日帰るのなら良いけれど長く逗留するから、誤解のないように、下で今議論している内容を少しは耳に入れてやれと頼まれたのよ」

 用意された桃は、スッカリ食べ尽くして、二人は麦茶を飲んでいる。

「それで下には誰と誰が居るんだ」

「あたしの両親と兄と弟」

「千里さんは?」

「千里さんはあなたと違って関わりたくないから多分居ないと思う」

「俺も関わりたくないんだけれど」

「勝手な人ね、じゃあどうしても裕介の誘いに乗ったのよ」

 裕介に付いて来た以上は話に乗って、何か結果を残さないとそれがお世話になったこの家に対するお礼になると言われてしまった。真に受けて考えると、そんな顔しないでひと夏を愉しめばよいのに、堅物な人ねと笑われてしまった。

 退屈しのぎに美紗和は祖父の話を少し語ってくれた。

 あたしの名前は美紗にするつもりだった。でも世間で活躍している人を見て印象が良くないのか、もう少し穏やかな娘にと和を美紗のあとに付けたらしい。

「そうかそれは良い、僕も美紗って名前の人はどうも気が強そうで、実際に美紗和さんは喋り方が穏やかできつい言葉も溶け込むように耳に入って、沈んだ気分も良くなりますからその名前合ってますね」

「あらそう」

 兄と弟からはそんな事は一度も言ってくれないと本人はぼやいている。身内だから言うのが邪魔くさいのか、もしくは今更取って付けたようで照れくさいんだ。それが本当に仲の良い兄弟の証しだと言ってやった。

「そうかしら、あたしには思ったことは思ったときに兄でも弟でも言って欲しかった。後でそれが間違いだと気付いても訂正できないように」

 と意味ありげに棘のありそうな嗤いを含ませた。


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