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美紗和3

 そもそもこの町は越前大野藩の藩主土井家から当家は江戸時代から任されてきた由緒ある家系の末裔だ。

 土井家は幕末には樺太の北緯五十度以北、北蝦夷地の鵜城に会所を設けて開拓してきた。大野藩から家老と藩兵以外に町人も開拓に従事した。その中に当家の高祖父も参加していた。その子孫の末裔が昨年なくなった祖父の高村利恒だ。

 利恒としつねおじいちゃんは幕末における樺太開拓者の末裔を意識して振る舞って、手塩に掛けて育てられ逆らえないのが裕介なんだ。そんな古い話を今此処で持ち出されてもピンと来ない。この町の長老から聞かされればウ〜んと唸りたくなるが、思想の先端を行っている人から聞かされても、眉唾物だと頭の中では取り次がない。

「それは両親も納得しているのか、第一そんなもんを立証する系図なんかあるのか」

 祖父の権力は絶大で、家系に関して当時は鵜呑みをするしかない。先ずこの家の規模と町から慕われている事実が実証している。祖父にそう言われればみんなはそれ以上はぐうの音も出なかった。

 それは戦後の高度成長期を巧みに乗り切った実績もある。そこには時代が違うと言えばそれまでだが、けして先祖の恩恵は余り受けてない。曾祖父の実力の賜で、それを祖父がどう解釈しょうと裕介には関係のない話だ。

「いったい裕介からどんなことを吹き込まれたの」

 と呆れてしまった。

 今日はともか、あの蔵は祖父が亡くなるまで、誰も出入りが許されず、明日にでも蔵を探してみれば何か出てくるかも知れない。裕介の今回の帰郷で、祖父の主張の根幹が揺れると、一度は封印した蔵を開けて中を検分する必要が生じた。

「だからこれからどうすべきか、コンコンと話を詰めて居るところなのよ」

「どうして裕介だけを祖父は可愛がる、目に掛けるのだろう」

「さあ、それは両親に聞いても解らない、末っ子だから可愛がったんじゃないの」

 これはでは直接高村に会わないと、それだけではどうも腑に落ちない。


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