美紗和2
そこへよろしいですか、と木枠の間仕切りが入ったガラス障子の向こうから声がして、美紗和さんが坂部を勝手に無視してどうぞと返事をした。
典子さんがお盆に果物を載せて持ってきた。彼女は開けるなり、あらっ、と美紗和さんがどうしてここに居るのと云う顔をした。典子は奥様に言われて良く冷えた桃を切って差し入れに持たしたようだ。お盆ごと置いて典子は部屋を出て行った。
召し上がれとばかりに美紗和さんに勧められてひとくち頂いた。
「家の人は気が利くようだけれど裕介はどうしてこない、今どうしてるんだ」
「久し振りに帰ってあちこち顔を出して、そのうちに来るわよ。だから一人で淋しい思いをさせないように代わりに来てあげたわけ」
「それは良いけれど、いつまで彼奴は話してるんだ」
「よそ様と違って仕来たりには気難しい両親だから、それに大学でのお勉強も聞くから長いわよ」
それで果物を差し入れしたのか。
「両親がどうしても帰ったばかりの裕介に詰め寄ってそんな話をするんだ」
「それが裕介の持って生まれた使命だから、あの子は厳格な祖父の尊厳を一身に背負わされて来たからよ」
「どうして親や長男を差し置いて末っ子の裕介が……」
そうだ、今朝乗せてくれた運転手の大場さんがおじいさんが気に入っていたシーマの車検を聴いて思い出した。
「典子さんのお母さんを引き取ったのもおじいさんですね。全てはその亡くなったおじいさんが去年まで差配していたんですか」
「知らないところをみると裕介から何も聞いてないのね」
美紗和は少し畏まったように姿勢を正した。




