高村の屋敷2
そこで当家に雇われている大場に意見を求めた。
「坂部の家は三十坪もないんだ。しかも家の建坪はそれより狭いそこに今は七人住んでる、どう思う」
今まであの屋敷の庭を手入れしてきた大場にすれば「どうでしょうね」とあの庭より狭い家はピンと来ないようだ。
「まあそんな感じで最初は戸惑っても気にするな、これはおやじの方針でもあるんだ。家の者はまさに籠の鳥で、ちやほやしていてはこれからの世界では思いやられるとおやじは克之に子供が出来ると孫の将来のために、これではダメだと変えたんだ」
着いたぞと高村に言われて、もう目の前にはこんもりとした小山のような森が見えてきた。その森に包まれるように長い土塀が続く建物が姿を現してきた。
周囲も鬱蒼とした木々で、その土塀も所々遮られて見分けがつきにくかった。入り口は塀の切れ目の石柱に取り付けた鉄柵の扉が観音開きになっている。車を降りた大場が両扉を内側に押し開けた。此処で高村たちは車から降りて再び車庫に向かって動き出した車を見送って戸を閉めた。どうやら祖父が居た頃は戸を閉めるのも大場の仕事だった。
さあ行くかと疎林の間に敷かれた石畳が、緩く弧を描きながら続く登り坂の先にある玄関を目指して二人は歩き出した。やがて和洋折衷の屋敷が見えてきた。
「祖父はこの道さえあのシーマで上がらせたんだ」
「じゃあ、大場さんはあの鉄柵の開け閉めをしてここまで来て車を車庫に入れていたのか」
「勿論それ処か大場さんは祖父が出掛けるときは車のドア前で待機して開け閉めをしてから車を発進させるんだ。だから身体を動かずに栄養だけ取って、おまけに頭だけカッカッさせてどやし続けて、それで脳溢血で祖父は倒れたんだ。それでおやじは自分でやれることは自分でやれと俺たちに言っている」
家の中へ入るまでにこれだけの説明をして、高村は玄関のドアを開けた。
細かい石が埋め込まれた広い三和土が有り、靴を脱いだ上がり口には大きな屏風が視界を遮っていた。その隙間から顔を出すと細い身体に長めの髪が波打つように揺れながら廊下の向こうから若い女性が遣ってきて、あらっお帰りと迎えてくれた。




