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帰郷6

 列車の止まった駅は名ばかりで、線路に沿ってポツンと片側だけ長いホームが一本だけ在る無人駅だ。辛うじてホームの中央にあるプレハブの三畳ほどの小屋で駅らしく見えた。周りは田圃でホームの端の道路まで歩いた。踏切の遮断機が上がった向こうの道端の空き地に、角の取れた柔らかいラインでまとまったセダンの乗用車が止まっていた。

「珍しい車だなあ、あれがシーマって云う車か」

「千九百八十八年式の初代のシーマであの頃は七百万ぐらいした車だ」

「随分とお高い車だなあ」

「なんせバブルの頃は飛ぶように売れた高級車であの頃の金余りを象徴する車だ」

 ホームの端、道路と接する遮断機まで来ると、シーマの運転席のドアが開いて、白髪で六十前後の初老の男が直ぐに歩み寄ってきた。

「裕介坊ちゃん、お待ちしておりました」

「大場さん、祖父も亡くなったことだし、もう俺も大人なんだし、その坊っちゃんって云われるのはもう堪忍してくれ」

「じゃあどう呼べば良いんですか」

「普通にさん付けで良い、ああ、それからこっちが同じ大学生の坂部だ。暫くはあの屋敷に厄介になるからよろしく頼む」

 坂部と大場が自己紹介すると直ぐに車に乗った。三十七年前の車にしては手入れが良いのか快適に走り出した。車は曲がりくねった細い道を山手の方に向かって走って行く。

「どうしてこんな古い車に乗ってるんですか」

「昨年亡くなられたおお旦那様がこよなく好きでしてね。それを今の若旦那さまもそのまま使っていますから」

「大場さん、もうおやじは若旦那じゃないぜ、それに兄貴も代替わりしてるからなあ」

「そうですね、ツイ口癖でお父様がもうおお旦那様でお兄さんの克之かつゆきさんが若旦那になるんですね」

「長男は克之って云うのか、みんな古風な名前だなあ。じゃあお姉さんはなんて云うんだ」

「みさわ」 

「あの青森の三沢か」

「違う美紗和だ」

 と手に書いて示して「祖父が付けたが由来は分からん」と身も蓋もない言い方だ。









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