帰郷4
福井駅に特急雷鳥が到着した。ここから越美北線で普通列車の九頭竜行きに乗り換えて牛ヶ原駅まで乗る。到着した福井駅では九頭竜行きの一両編成のジーゼル車が既に二番線で待機していた。
「ここからはえらいちんけな電車になるんだなあ」
「贅沢言うな、これでもいっときは廃線の憂き目に遭ったんだぞ。それが地元の人達の努力で何とか存続してるんだ」
なるほど、たった一両で運行しているのを見ればなんとなく切なく胸に響く。ホームで待機しているのはキハ百二十型の気動車でセミクロスシートに向かい合って座った。座ると高村は、如何にも廃線を免れたジーゼル車の雰囲気だろうと窓越しに手を掛けてシートをなぞっている。亡くなった祖父もこの存続にはかなり援助したそうだ。時々町役場の人がやって来ては礼を言ったが、その祖父も七十四で去年なくなった。脳梗塞で倒れてそのまま逝ってしまった。その次に古いのが車の運転手兼庭師の大場さんで、還暦間近で白髪も目立つが、まだまだ七十には遠すぎると張り切っていた。五十に近いおやじも健康には気をつかっているが、兄貴は余り気にしていない。まあ会えば判ると苦虫をかみつぶしたような顔をした。それなら余り聞かない方が良いかと坂部は話題を変えた。
「ところで、その大場さんも同じ屋敷内に住んでるのか」
「ああ、古い日産のシーマが入ってる車庫の二階に住んでる」
「日産のシーマ?」
「何でもバブルの全盛期の八十年代には飛ぶように売れた高級車らしい。これを祖父が気に入って大場さんにあの広い庭同様に手入れさしてるんだが、去年祖父が亡くなった折に処分するはずが、おやじと祖母が気に入って大場さんがそのまま今も手入れしている」




