帰郷3
「そんな神妙になるな、それだけ別な意味でお前を歓迎してくれると云うこっちゃ」
二人は荷物を棚に上げ指定席に座り込んだ。プラットフォームを離れトンネルを抜けると琵琶湖が見えて、直ぐに腰まで伸びた稲穂が波打つ近江平野が車窓に広がった。
「さっきの話だがそのお手伝いさん」
「典子さんだ」
「その典子さんだが、どうして三年前にお手伝いとして呼んだんだ」
「典子さんはその前から居たが結婚してあの家を一度出たんだ」
「じゃあ出戻りか」
「まあ母親が我が家に居候していて、その娘だが、それよりも兄貴が結婚して子供の子育てが大変だからとおじいちゃんが家の内情を良く知ってる彼女を呼んだんだ」
「それは解るが、どうして子連れの家政婦を、いや典子さんを雇い入れたんだ。しかもその子供が三、四歳なら来てもらったときはまだ乳飲み子だろう」
坂部が言うのももっともだ。家事をしてもらうのにどうして乳飲み子の典子さんをおじいさんは連れて来たのだと思うのは当然だ。
「仕方がないんだ。典子さんはおじいちゃんが世話を受けた兄の子供の連れ子で向こうの家に居られなくなって出て来たんだからなあ」
「でも出戻りだろう。さっき離れには祖母が居ると云わなかったか」
「祖父が亡くなる前に離れの奥に増築して祖母はそっちに移ってもらった。今離れに居るのは祖父の兄の子供とその連れ子の典子さんだ。連れ子の典子さんだが五年前に結婚したが、子供が出来て離婚して祖父がお手伝いさんとして呼んで三部屋ある離れに叔母さんと住んでいる」
「じゃあその叔母さんって云うの幾つだ」
「もうとっくに五十は越えてるが、四十って事はないが、あの庭同様に手入れが行き届いているから若く見えて世間では四十で通している」
祖父の兄が亡くなり独り身だった姪を、祖父は親子一緒に我が家に引き取った。その連れ子が典子さんで実質は四人兄弟のようで、姉と典子さんと俺の母と叔母さん、それと同じ年頃の子供が二人居るから此の関係を間違えないように言われた。




