入学発表の日2
それでも受験生の二人は、郷里の田舎と違って、朝からの混み具合には眼を丸くしていた。目的の大学に近付いたが、乗り降りが激しくてバスの中は一向に空いてこない。この頃には始発から一緒に座っていた二人も、どうやら同じ目的地に向かっていると悟ったようだ。その決定的瞬間が、バスの車内から流れた停車名で二人は、ほぼ同時に降車ボタンに手が重なり、二人は顔を見合わせて苦笑いした。次の試練は最後部の座席から一番前の降り口まで、どうやって行くかでまた二人は見合わせた。
「合格発表の前にこんな試練が待ち受けているのか」
まだ大学の合否を知るだけなのにと、坂部は悲観した。
「ものは思いようですよ、都会生活の洗礼だと思えばいいでしょう」
まだ合否の判らぬうちからこんな洗礼は受けたくない、と坂部は更に身構えてしまった。
「とにかく此の狭い通路を突破しましょう」
「そうだなあー、汝狭き門より挑めと云うからなあ」
気の利いた坂部の言葉に、高村は彼を見直したように眼を丸くした。
「とにかく私が突破口を切り拓きますからしっかり付いてきて下さい」
とインテリにしては頼もしい事を云ってくれるとスッカリ気を良くした。
しゃあないタックルを組んで、中央部の僅かな隙間に、二人は掻き分けるようにただ我武者羅に突き進んだ。発車を急せかす運転手に、降りまーす! 降りまーす! と高村は大声で連呼した。それが功を奏してやっと二人は、人混みから吐き出されるようにして出口に辿り着いた。とにかく降りた二人は、走り去るバスを眺めて此の共闘に健闘を称えた。




