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高村の噂3

 和久井はあれからサークルに顔を出さない坂部を、探してやっと捉まえた。

「あの高村と同郷だという人が此の人なのか」

 坂部の言葉に軽く頷く小石川は「田舎ではみんな話す切っ掛けがないのにもうお友達なんて羨ましい」と言われた。

 高村家は地元ではちょっと知られた良家で、そんな人とどうしてお友達になれたのか、小石川は席に着くなり真っ先に訊かれた。

「別にあいつはそんなにお高く留まってなくて普通だよ」

「都会ではそうだけれど、狭い田舎では直ぐに町中の噂になっちゃうから迂闊に声も掛けにくいらしいわよ」

 和久井が言った。

「そう、特にあの高村家の人間にわね、後でみんなに何を言われるか分かったもんじゃないもん」

「実家の方ではどうだか知らないが、裕介はそんな人間じゃない」

「希実ちゃん、それって如何どうなの」

「確かにこの人の言うとおりね、田舎で見た裕介君も学内で見た裕介君も見た目は全然変わってない、でもまだ喋った事もないからどうだろう、それでもインテリには変わりなさそうね」

 確かにそうだ、俺にはもっとも勉強しろと強要されている処が玉の瑕だが、言葉に重みがないのは、矢張りあの男の寛容な精神が行き届いている。

「裕介は傍目にはインテリっぽいけれど、僕が見る限り何処か抜けてるとこもありそうな雰囲気を一度見たが、あれは単なる息抜きにすぎなかったんやろうか」

 彼の独り言に和久井は嗤った。

「まだ三ヶ月そこらで、そんな奥深い人間の心境が判るほど世の中は甘くない。人は全て腹黒い、それを一生隠し通せる人が聖人なんや」

 と云われると、あの嗤いの後に言った言葉の重みに疑念が生じた。

 

 


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