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大場の指摘1

 大場さんは話の途中でも坂部の竿の引き具合を見てくれている。前回は半日掛けて一匹だったお陰で何匹かは釣れた。それにおとりの鮎を流すポイントも具体的に指導して、そこにおとりを持って行くと、良く鮎が引っ掛かった。勿論指導は大場さんに当たりが止まった時だけだ。

「おじいさんの影響力が及ぶ中で、それで裕介はお父さんをどう見てたんです」

 先代は、社長にはかなり強引だが、それほど社長の利忠さんを翻弄させていない。おそらく先代の心の中には、こんなカビの生えた遺訓で人が動くわけがない、と社長や長男の克之さんを通り越して裕介さんには云ってる。

「それが典子さんが男の子を産むと直ぐに利貞ちゃんの命名に立ち会ってから人が変わりました、いや、私が見る限りあれば表向きの貌ですね」

 それは裕介さんも感づいて、度々お父さんには真面には受け取らないように再三に亘って勧告していた。お父さんは克之さんの話は真剣に訊いても、高校生である裕介さんの話には上の空だ。先代が厳しい顔で戒められれば、それを率直に受け取るでしょう。あの厳格な言葉の裏に先代の思いやりが潜んでいるなんて裕介さんは気付いても、お父さんは畏れ多い先祖の声として実直に受け止めて実行しています。その突風を毎回モロに受けている典子さんを裕介さんは悲観しておられた。

「どうして裕介はもっと強くお父さんに諫言かんげんしなかったのか」

「諫めるって言われても、高校生の分際でと、お父さんに一喝されても裕介さんはこたえませんが典子さんにとばっちりが掛かれば元も子もないと自嘲していたようです」

「じゃあ高村は、直接おじいさんに諫言しなかったのだろう」

「それは典子さんがどうやら止めさせたとわたしは思っているんです」

 これには坂部は驚いた。



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