51 反魔王派の存在
想定外の事態に完全にパンクしたダニエルはギーブスが出した紅茶を飲み落ち着きを取り戻したがまだ話すには時間がかかりそうだ。
その時間を利用しオグワは珍しく仕事モードでギーブスと話をしている。
「で、貴様もあの会議に参加していたのであろう、どんな内容だった?」
オグワは前置き無しのド直球に本題に土足でグイグイ食い込む。
「いえ、私は色々とあって会議に参加できませんでした」
「何があったんだ?」
そう聞くと、ギーブスはバツが悪そうに目線を逸らしたが魔王様に隠し事はできないと呟くと静かな口調で話し出す。
「……魔族に襲われました」
「魔族……か。どこの奴か見当は?」
「いえ、付いておりません、見た目からすれば人魔族に近い感じでした。角は帽子で隠してありましたが、あの魔力は同族のもので間違いありません」
いつも見せる飄々した笑顔が鳴りを潜め、真剣な表情で思考に耽けていると、リセットされたダニエルが口を開いた。
「ん? お前ら仲間じゃないの?」
「仲間と言えど反魔王派と言うものが存在している。別に魔王は力だからな下剋上をしたいなら拒む事はしないが裏でこそこそしている連中がいるのだ、まあ、我は放置だ」
反魔王派。
特にここ最近反魔王派の行動が活発になっているとアイリーンが報告していた、もちろんオグワはそこまで深刻に話を受け取っていないが。
どうも反魔王派の主体は魔王の座を力で奪うことをやめさせたい思っている奴らだと言うことまでは掴めている。このことから考えるに反魔王派は力の弱い種族達であると考えられる。
力の強い種族は頭が緩いが力こそ正義の脳筋ばかり、逆に力が弱い種族は力はないか知能はあり物騒なことをやめ頭を使うべきと主張している。
だからオグワは各種族の棲み分けを徹底させている、作戦や指揮系統や中枢部には知識がある種族、脳筋連中には前線で暴れるように手配して、種族間対立を軽減しようとしているが力のない奴には従いたくないと言う悲しい性のおかげで対立自体は続いているが四天王や魔王本人の押さえつけによってここ最近は小康状態が続いている。
それがここに来て崩れ始めてきたのかもしれない。
「そう言えば貴様。仕事は良いのか?」
「今日は非番にしたのですが……会議のために呼び出されまして」
「そうか、それはすまん」
オグワは「では、我らは帰るとしよう」と言い立ち上がる。
♢ ♢ ♢
隠し地下道を通り別の建物から出てきたダニエルはオグワを唆し情報を入手しようと画策している。
「なぁ、この国にお前らのスパイって何人いるんだ?」
ダニエルの問いかけにオグワが答えようか少し迷ったような素振りを見せたが何か悪企みでも思いついたのかすらすら答え始めた。
「さぁ? 考えたとこもない。我が知っているのはさっきのギーブスとアイリスという女、それと死んでいなければあと2人は居る、それ以外は知らん」
オグワの口調から読み解くと本当に知らないような口ぶりである。
まずは本丸から遠いところを切り崩そうダニエルは1人頷く。
「そのアイリスって女はいまどこに?」
「知らない、情報が入りやすいところだろ」
我が知らなくても問題ないのだ、四天王がやってにやってくれるからな! と高笑いしてオグワを殴り飛ばしたくなったがもう少し掘り下げてからとグッと怒りを押し込める。
「お前らのスパイってどのぐらい居るんだ?」
「だから我に聞くな、我も把握していないんだから、全ては諜報部隊がしているからな、我もどこで何をしているのか知らん」
はい、情報ゲット。諜報部隊ね、まあいないわけがないよね。問題はその数っていうところか、何千人規模だ?
「ザルだな」
そんな事ない! と少しオグワを調子に乗らせもう少し喋って欲しかったがダニエルの企みは気づかれている。
「それはすまんかったな。貴様のカマかけに答えてやっているのだから諦めろ」
「ぼくなんにもしらない」
「とぼけやがって、まぁ漏らしても我には問題ない」




