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魔王と勇者は案外仲が良い  作者: 雄太
王城への登城
49/61

49 我は海より心が広いからな

 

 ダニエル達はメイドの案内のもと玉座の間へと通された。


 装飾で飾られた重厚な扉を騎士達がわざと時間をかけゆっくりと開く。開かれた扉のその先、玉座に腰掛けた国王。前回会った時よりも少し痩せたような気がする。心なしか目もクマができ相当疲れている様子だ。


「早く行け」

「走るなよ」


 騎士に進むよう言われダニエルに止まれた真反対の事を言われた魔王は「うるさいのだ、我に指図するな」と言い放ち騎士が構えた槍を粉々に砕き、「邪魔だどけ」と押し退け不安になる笑みを浮かべて歩き出す。


 それに続きダニエルが入ると左手に各大臣達が騎士達に守られるような形でこちらの様子を伺う。魔王と言う存在に恐怖心を抱く者、空想の産物と心の中で笑う者、あんな奴殺せると高を括るもの、それぞれの思惑が交差している。


 右手には軍関係者が騎士の護衛なくいつでも抜刀出来るようにフル装備で魔王の動きを見ている。

 もし、魔王がこのカーペット越えたら彼らはすぐさま魔王の首を跳ね飛ばそうと動き出すのだろう。


 国王が座る玉座、その両脇には近衛騎士団団長ガイルと見たことがない若い男、鎧などの類を身に付けず、剣一本腰に差しているだけ、目は眠そうで、今にでも欠伸をかいて、寝そうな雰囲気がある。


「おぉ、無駄に豪華だな、国民から搾り取った税金がこれに消えては、無残だな」


 空気が割れる。ダニエルと大臣達を除く全員が思わず、剣を握る。


「お、オグワ止めろ、本当に殺されるぞ」

「あぁ、すまん」


 大臣達は徹底的に教育されたのだろう、誰1人としてお決まりの一発ギャグ『無礼だ!』を使わなかった。


「だがな、我も国王をやっている身だからな、国民の金をこう言う事には使いたくないのだ、日々せっせと働いた国民から巻き上げた金がこんな見栄のために使われているなど、我はどうしても許せん、まぁ他国のことに首を突っ込む気は無いがな」


 オグワはわかっているのかいないのか、わざと聞こえるように声を大にして喋る。

 何景気のいい事を言っているかもうすでにどっぷりと突っ込んでいる。

 それを真ん前で聞いていた国王の顔は歪みに歪み、もはや人間の顔とは思えないほどどぎつい顔でオグワを睨む。

 本当なら今すぐにでも騎士達に『殺せ!』と命令したい、だがそんな事を言ってしまったら玉座の間は瞬きをする前に味方の騎士達で血の海になるのは目見えているだから無理やり言葉を押し込めた。


 行き場のない怒りが拳に集まり、爪から血が滲む。

 怒りに身を任せるような国王ではない。色々叫びたいが目を瞑りゆっくりと息を吸う。


「よく、来たな魔王」

「何、なんてことない。我は暇だからな、我が友ダニエルがここにくれば美味しいお菓子が食べれると言っていてな、我もお菓子は好きだ、だから来た」


『お菓子』オグワのその発言を聞いて一部大臣達の顔色が一気に悪くなり、2人ほど膝を床について倒れた。


 やはり、貴様らか。我のクッキーに毒を入れたのは。ダニエルの前だ。見逃してやるとしよう。今のところはな。


 2人は胸を押さえ息苦しそうに呼吸をし、駆けつけた騎士達に両脇を抱えられゆっくり退出した。

 国王はそれを見ない。見たら何か声をかけなくてはいけなくなる、ここは魔王を直視したことが原因として終わりにしたい。


「ほぉ、そうか。貴様が満足するお菓子はあったか?」


 魔王のクッキーに毒を入れたことなど一切知らない国王は聞いた。


「残念なことになかったな、誰かが我のお菓子に毒を入れたのだ、誰が入れたか知らないが、我のクッキーに毒を入れるのがこの国の文化なのか?」


 国王の瞳が泳ぐ。

 魔王の気分を害さないように言い逃れをしようと頭をフル回転させる。

 ここで回答を間違えれば魔王はワシが意識するままなく確実にワシを殺す。

 慎重に丁寧に。


「……そんな事はない、我が国でも魔王を嫌う物達は少なからず存在する、貴様のところも同じだろ」


 お互い様だと言う認識を植え付け、論点を逸らそうと意図が込められた発言にオグワは乗ることにした。


「あぁ、我が国でも人間を敵視する者達はいる」


 これで決着をつけることもできるが、国王はもう一歩踏み込み、誠意を見せる。


「毒が混入した件に関しては私の責任としてしっかり調べよう」

「いや、大丈夫だ。我は怒っているわけではないからな」


 オグワのその声音は本当に怒っている雰囲気が全くない、いや、すでに解決したような雰囲気さえ身に纏っている。


「感謝する」

「なに、気にするな。我は海より心が広いからな」


 国王にはそれ以上の言葉が出てこなかった

 何が起きてる……ワシの知らぬ間に何が起きている、大臣達が何をした、何をしている!。

 国王は思わず大臣達を睨むと何人かの大臣達が露骨に視線を逸らした。

 だから勝手に動くなと言っているのだ!!。


「で、我は帰っていいのか?」

「帰れ、魔王の滞在延長を認める」


 国王はそれだけを言うと立ち上がり「終わりだ」と言い退出する。



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