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魔王と勇者は案外仲が良い  作者: 雄太
王城への登城
44/61

44 誰にでも笑みを振り撒く男には気をつけろ

 

 騙し討ちとは酷いではないかッ!!!!!!!!


 王城の堅牢な城門を潜る前から喚き騒ぎ駄々を捏ね、あの手この手で逃げ出そうと暴れ出し必死の抵抗を続けていたオグワだが、すぐに首根っこを掴まれ、まるで母猫に首を噛まれた子猫のように大人しくなった。


「行こうか」

「我はまだ死にたく無い!!!」

「大丈夫、死なないから」

「解剖されたく無い!!!」

「大丈夫、死んだ後に解剖するから」

「やめてくれ!! 鬼畜! 貴様人間か? 人間の心があるのか!! 我を助けてくれ!!」


 やっと城門を潜れた。潜る前も騒ぎ喚きうるさく手に負えなかった。

 街ゆく人たちが魔王のことを可哀想と言った視線で見つめダニエルが悪いことをしているような印象を街の人たちが抱く。

 魔王が悪事を働いたではなく、勇者が魔王を痛めつけている、そんなふうに見えた。


 城の門番たちも無理やり引きずられる魔王の姿を見て、可哀想と思わず漏らしていた。

『お前ら敵だろと』強く強く思ったが勇者にあるまじき姿を見せるわけにはいかない。どうにか押し留めた。


「酷いでは無いか騙し討ちなど! ダニエル、見損なったぞ! 貴様はそんな奴ではないとついさっきまで信じておったのに!」


 前を歩くメイドの背中がビクッと跳ね上がる。

 王城内の廊下にオグワの悲痛な叫び声がランダムに反響し四方八方からエコーかかり、それが耳に入ったダニエルは少しばかり心が痛いが心を鬼にして無視した。


 魔王に同情など要らないのだ。

 そもそもの話、ダニエルからしたらオグワの評価などどうでもいい、こいつからの評価なんて気にするだけ損だ。

 それにこいつに真っ当な評価などできるはずもない。


「我と貴様は心の友だろ。友人は嘘をつかないのではないのか?」


 痛いところを……

 思わず歯をキリキリと鳴らし、勇者とは思えない顔面で外壁を睨む。

 そして目を閉じ息を吸い、心を落ち着かせる。


 こんな魔王相手にするなこんな魔王相手にするな。

 こうやって人を陥れようとしてるんだ。

 こんな魔王相手にするな。


 昔、酒場の席で飲んだくれのおっさんから『知ってるか? ヒャク! うふふ人の怒りってもんはない、5秒も我慢すれば忘れるんだとさ、あはは!! ドズッ がァァあズーーがぁぁあずーーー』って言う話を聞いた。


 こんな与太話真面目に聞いてなかったが今、効果を発揮した。

 想像の中のオグワの腹をサンドバックにすると怒りが消え去った。


 怒りが落ち着き目を開くと床にゴキブリ、否。蹲った魔王が居た。想像の中と現実世界がリンクしたのだろう。想像の世界での攻撃が現実の世界の魔王にダメージを与えた。


 否。それも違う。想像の中で魔王をぶちのめしていたつまりが、現実世界の魔王もぶちのめしていた。

 体が勝手に動いたのだろう。


「痛い……」


 そのまま倒れ込んだ魔王は血のついてない指先で決死の力を振り絞り『いたい』と書き記し動かなくなった。


 ♢ ♢ ♢


「何故我ばっかり!!!」


 ダニエルに殴られた、ダウンしてから数分。

 怪我が全て回復した魔王は怒りをばら撒いていた。

 手を振るだけで、廊下に置かれた花瓶が砂状に割れ

 なぜか目からレーザーが飛び出して何キロも先にある時計塔が爆発し真っ二つとなる。

 人的被害は……ないと信じたい。


「悪かったよ、まさか想像と現実がリンクするなどと思わなかった」


 そんなわけない。きっとわかってやっていた! 我にはわかる。嘘だ嘘に決まってる。ならなんであんな綺麗に我が殴られないといけないんだ!。


 まだ先ほどのことを根に持っている魔王はご機嫌ナナメどころではなく急降下みたいだ。


「貴様! 想像で我のことをが殴っておったのか? 想像じゃ我が抵抗できないことをいいことに、我をサンドバックにしておったのか! 毎日のストレスを我で解消しようとしていたのか!!」

「別に想像なら害はないだろ」


 この一言で魔王は完全にカチンと来た。


「わかった。我も今後、想像の貴様を八つ裂きにしてやる」

「あぁ、好きにしろ、想像の世界なら俺を倒せるもんな、どうぞご自由に」 

「そうですか、なら我は帰る!」


 駄々をこねる子供のような発言。

 そのまま帰ろうとするが「まぁ待て」と言われると同時に腕が掴まれた。


「まだお前には仕事が残っている」

「我には仕事などない」

「無職か?」

「魔王をしている」

「無職じゃん」

「無職ではない! 魔王と言う歴とした職だ」

「魔王のオグワさん、国外との会談も魔王、つまり国王の仕事じゃないの?」


 そう言われてしまえば少しばかりバツが悪くなる。

 別に魔王領はどこの国とも国交は結んでいない、それどころかこの大陸全ての国と敵対関係にある。つまりだ外交をしようとしまいと関係ない。


「見返りは?」

「………魔王領からの国軍撤退を陛下に進言する」

「二言はないな」

「あぁ。二言はない」

「なら交渉成立」


 2人は固い握手を交わし、ほくそ笑んだ。

 ダニエルとしては苦渋の決断だろう。それこそ断腸の思いというほどに。

 だがここで魔王に帰られては自らの首が飛ぶ可能性すらある。それだけは避けたい。勇者は魔王と違い不死ではないのだ。

 それに魔王領からの国軍撤退を確約したわけではない。撤退を『進言』すると言ったに過ぎない。別に魔王領から撤退しなくても約束を破ったことには一切ならない。こういう事になると無駄に頭の回転が良くなるからオグワも気がついているはず、そう信じたい。


「オグワ様、ダニエル様。こちらでお待ちください」


 賛同していたメイドが立ち止まり、重厚な扉を身体で開けようとするとすかさずダニエルが「無理しないで」と言いながらドアを押さえた。

 勇者の笑みに心奪われたメイドは顔を赤めて「失礼します!」と上擦った声で逃げるように早歩きで角を曲がる。


「さすが女たらし」

「そんな言葉どこで覚えてきたんだ?」

「我は経験豊富だ。意味は知らないが言葉は知ってる」

「一番ダメな奴じゃねぇかよ」


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