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魔王と勇者は案外仲が良い  作者: 雄太
魔王城への帰還
41/61

41 紅甲竜消失事件

 

「仕方ないだろ我は全知全能の神ではないのだ」


 何故かわからないが魔王はイラついている。

 元はと言えばこいつが粗悪品を法外な値段で詐欺的手法を使いダニエルに買わせようとしたのが原因だったと思うがオグワは全てダニエルが悪いと言った方向に持っていこうとしている。


「もう少し良いのないか? 重症の怪我を軽減するお守りとか?」

「あるにはあるが……」


 オグワはもやもやした口調で言うがそれを掻き消すほど「最初からそれ出せ」ダニエルは思わず口にした。

 だがその直後全身に嫌な予感が駆け巡る。

 だがさっさとこの話を終わらせたいダニエルは警告信号を無視した。


「じゃあそれくれよ、勿論タダで」

「別に良いが副作用があるぞ」

「副作用?」

「あぁ。どうもな御守りの効果が発揮されると金払わないといけないみたいだ」


 金? はぁ? 


「誰にいくら?」

「我にだ。値段は我の好きだ」

「役立たずの御守りだな、穴だらけじゃないか」


 死の淵に立たされた奴がそんな金払っている猶予なんてあるか? 

 少し考えれば分かりそうな気もするだ魔王はそんな事は一切気にしない。

 なぜなら自らが死の淵に立たされた事がないからだ。


「金さえ払えば再起不能のケガも治るのだぞ、安い物だと思うけどな」


 言っている事はよくわかる。金で死を回避出来るのならいくら払っても良いと言うやつはいるだろう。魔王の要求を素直に払えるのであれば安いものかも知らないだがこの魔王一番重要な事を考慮していない。


「戦闘中に金持っている奴がいるか?」


 まるで雷に撃たれたかの様に身体をブルブル振るわせ、開け放たれた口から唾液がポタポタ垂れる。

 側から見れば物凄い滑稽な表情をしている。

 例えるなら詐欺に騙された詐欺師みたいな? そんな詐欺師見た事はないが、見たことがあれば絶対にそう言うであろうと言う表情なのは間違いない。


「……そう言えばそうか人間は金を異次元に収納できないのか、だから我が出ていっても手持ちがないとか言っていたのか、悪いな見ず知らずの誰か」


 そう言うことだ。

 魔物との戦闘中手持ちの金をどこに置くか?

 答えは簡単である各自のリュックなどだ。それ以外置き場などない。ポッケに入れたのを忘れたまま戦闘することもあるが大抵は肌身から離しておく、そうしないと邪魔になるからだ。

 剣を振ろうとしたらポケットからお金がある落ちた、なんて嫌だろ、それに金に目を取られ、魔物に隙を与えることになる。冒険者、一瞬の油断が命取りとなるのだ。

 実際、一時的とは言え放置された金を狙う狙うコソ泥も存在しているから注意は必要だ。大抵の場合魔法職が結界などを張っているが特に新人魔法職は結界を張る事を忘れる事が多い。

 魔物を討伐している間にリュックサックを持って行かれるなんて事もチラホラ起きている。


「ちょっと待て、そいつらどうなったんだ?」


 つい、ダニエルが口を突っ込む。

 無理矢理呼び出された魔王。

 呼び出しておいて金を払わない誰か。

 不機嫌な魔王。


 三要素全て揃い組。絶対に何かやらかしているに違いがない。

 やらかしていないわけがないのだ。

 普段、要素がなくても事件事故を引き起こす歩く厄災、それが素直に何もしないわけがない。


「えへへ、魔物に喰われたのではないか?」


 安っぽい言い訳をして逃げようとするがそんな簡単にダニエルが逃亡を許すはずもない。


「嘘つくな」


 責められた魔王は渋々白状した。


「全部消し去った」

「はぁ………」


 これを知ってしまったダニエル。

 一応関係はないが、魔王のお目付役としてどうしたものか全力で頭を悩ます。


「だか見ず知らずの冒険者だぞ、失踪事故など普通にある事だ」


 失踪自体はありえないことではない。魔物との戦闘で命を落とす冒険者も少なくない。否、新人冒険者の3割が最初の戦闘で命を落とすと言われている。

 その多くは油断や焦りなどが原因とされる。

 中堅やベテランになると周囲の警戒を怠ることも少なくなり安全な立ち回りで魔物を狩るためだ。

 それが死亡率の低下につながっている。

 そして冒険者ランクが上がるごとに死亡率は減少していく。


 オグワは全く気づいていないがダニエルは気づいてしまった。

 オグワが消し去ったのは25年前の当時厄災を奮っていた紅甲竜(べにこうりゅう)の討伐依頼を受けたSランク冒険者 孤高の剣そして紅甲竜を打ち滅ぼすためならばと国が派遣した王国軍200人に加え対竜用兵器20門だ。




 紅甲竜消失事件




 25年前王都南部の都市。その都市近郊の街に飛来した紅甲竜の討伐依頼を受けた孤高の剣と王国軍そして紅甲竜が突如として消失した事件。


 戦闘は紅甲竜の前に劣勢を強いられ、孤高の剣のリーダーは撤退を考え始めた時に紅甲竜がブレスが思考に意識を割いていたリーダーの右半身を抉り取り吹き飛ばされた。


 その直後に何らかの理由でこの一帯が爆発したと当時は結論づけられた。


 王国としては200人の軍と対竜兵器、孤高の剣を失ったが最大の目標である紅甲竜を倒せひとまず計画は完了した。王国はこれ以上民衆に深追いさせない為に孤高の剣と200名の軍人全てに爵位を与え身内への補償も普段より手厚く行いこの事件を闇に葬った。


 それが今思いもよらぬ形で闇から引き上げられた。


 でだ、何があったか、オグワがポロリと漏らさない限り推測の域を出ないが、たまたま孤高の剣のリーダーがオグワが先ほど出した御守りを所持していたのではないかと思われる。

 どこでそれを手に入れたかわからないが。


 紅甲竜のブレスで右半身を吹き飛ばされ死という運命から逃れられない重傷を負ったリーダーにその御守りが反応し魔王オグワを呼び出した、だか戦闘中にオグワがいい返事をするほどの大金を持っているわけもなく、金を持ってないことにイラッと来て紅甲竜を含め全てを何らかの魔法で消し去ったのでなはないかと仮定する事はできるがあくまでも推測に推測を塗り固めたものに過ぎない。


 ついでに言うと竜の素材は高く売れた。それこそオグワも納得できる程に。

 だがオグワにとってはそんな事関係ない。別に倒そうと思えばいつでも倒せる存在だし、魔法で寝かせば鱗も剥げる。それこそ永久機関の様に…………

 それにオグワは過去を振り返ることなど一切しない、昔を思い出すことぐらいはするがそれで何か罪悪感や後悔を抱く事はない。


「貴様が何を考えているのか知らないが、我は関係ない!」

「もう良いよ、今更犯人はお前でしたなんて、言えないよ、言ったら皆んな魔王ならって納得するし」

「わ、我を犯人扱いするな!」

「大丈夫、みんなそう言うから」

「だから我ではない!」


 自らにかけられた嫌疑を身振り手振り全力で晴らそうと努力をしているが、直径200m程あるクレーターを作れるのは魔王や竜などを除けば、両指ほどで足りるほどしかいないとなれている英雄達しかいない。


 4年前のギルドマスターでさえ50mほど大地を抉るのがやっとであったが彼は生涯拳しか使わなかった。もし彼が武器を使ったならば、全盛期であればもしかしたらだ。そう言う意味で言えば彼が最強かもしれない。


 魔法とは人類拡張機能だと過去の文献に残されている。いまだに魔法については研究が進んでいないのが現状なのだ。

 人間達は風がどこから吹いてくるか考えたことがあるだろうか? 

 多くの者たちは全く考えた事はないだろう、でも、風車を使って小麦の脱穀をしたり帆船を動かしたりしている、何故風が吹くかはわからないが風を利用している。

 魔法も同じなのだ、どこから生まれるかわからないが皆魔法を使用している。


 で、話を戻すと、今現在この世界にはダニエルの様な死後に英雄と言われる様な強さを持った者は片指の数程存在しているが、その多くは国への帰属意識がなく世界中を強者を求めて彷徨っているとか、そして彼らにクレーターを作る趣味はない。その事から犯人はオグワしか居ない。

 逆にオグワでなければ不味いのだ。


「次はどこに行くんだ?」


 露骨に話を変え逃げようとするがそう易々と逃してはくれない。オグワもそれをわかっているはずだが何故か懲りずに逃げようとする。


「話を変えるな」

「話など変えておらん」

「はぁ、いいよそれで、もう諦めたよ」

「そうだ。無駄に悩んで禿げるだけだ」

「お前のせいだよ!」

「怒鳴るではない、ちゃんと聞こえてる」


「ダニエル、我はこのことを一切公言しないと約束しようだから手打ちにしないか?」


 まさに魔王の囁き。

 だがダニエルがコレに乗らない理由もない。

 公表したらしたらで厄介ごと確定。であればこの事は2人の秘密にして再度闇に葬り去れば良い。

 ただ一つだけ懸念点がある。


 この魔王だ。


 何かの拍子にうっかり口を滑らす可能性が十二分に考えられる。


「お前、絶対漏らすだろ」

「我は漏らしておらん」

「違うよッ!!!」

「わかった、わかった。我はコレでも口が堅い事で有名だ、我が何か漏らしたことがあったか? ないだろ。」


 全く信用できない発言だが、こいつにぺちゃくちゃ言われるよりまだマシとダニエルは判断した。


「わかったそれでいいよ、手打ちにしよう」

「わかってくれると思っておったぞ」

「もしバラしたら………いいな?」


 つまり殺す と言う事であると思われる。


「ふふふ、ふふふふ、貴様冗談も上手いな」

「冗談じゃない本気だ」

「はい。漏らしません」


 シリアスシーンにおとぼけは必要であるが、タイミングを見てするものだ。

 本気の目で睨まれたオグワは『はい』という返事意外の選択肢は与えられなかった。



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