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魔王と勇者は案外仲が良い  作者: 雄太
魔王城への帰還
38/61

38 魔王四天王エントラス

 

 ダニエルが過去に思い耽けている間もオグワは1人。心にグッとくるはずだった良い話を黙々と続けている。


「ちゃんと数を数えてみれば別の結果が生まれるかもしれないだが、全ての声を聞く事は我を持ってしても不可能だ、だから意見を集約しなければならない、そしてその時、賛成する者達はあまり反応を示さないのだ。その代わり反対する者達はここぞとばかりに一斉に声を上げる。で結果としては反対が多いように見えてしまうだ」


 オグワ自身の考えを拳を握りながら力説しているがダニエルの頭には話の内容は入ってこなかった。

 結論を言えば反対する人たちの声の方が数が少なくても大きく見えるという話か。


「おい、我の話を聞いているのか?」


 隣から全く相槌が聞こえなくなり、ふと横を見るとダニエルは顎に手を当て深く何かを考えていた。

 ダニエルの顔の前で手を振るとやっと反応を見せた。


「うん? あぁ、聞いてたけど長いから忘れた」

「ひどいでないか! 我が貴様のためを思って真剣に良い話をしてやっているというのに貴様は我のことを無視して……ちょっぴり寂しいぞ」

「悪いって」


 そう言いながらオグワの背中をドンドンと少し強めに叩いた。深く悩んでいた顔は鳴りを潜め、いつもの優しい笑みがやっと見えた。

 その表情を見て少し安心した様子の魔王は話を聞いてなかったことを棚に上げる。


「まぁよい、何か思うことがあったんだろ、何時間でも考え込んでくれて構わない」

「ありがとう」

「何に対して感謝されたのかわからんがどういたしまして」


 ♢ ♢ ♢


「ここが歴代の我が魔王四天王の鎧を安置している部屋だ」


 オグワに半ば無理やり連れてこられた魔王城内のとある部屋には人の背丈ほどある鎧が無駄に装飾に拘った豪華絢爛な台の上に8対ー16個、埃一つついてない綺麗な状態で展示されている。

 毎日誰かが清掃しているのか魔法が何かで保護されているのか定かではない。


 一番手前の鎧が多分、ここ最近死んだ魔王四天王の鎧なのだろう。

 一つだけ他のどの鎧よりも真っ黒いまるで暗黒の闇のような異質な鎧が置かれている。その鎧は原型を留めておらず触ればさらに壊れそうな儚い雰囲気を纏っている。

 オグワはそれを昔懐かしそうに手に取りダニエルに手渡した。


「これがエントラスの鎧だ」

「えっ?」


 エントラスの鎧は今この場でオグワが風の魔法をかけ僅かに宙に浮かせている、


「貴様らのところのギルドマスターに打ち破られた我が魔王四天王エントラスの鎧だ」

「……それは、なんと言って良いのか……」

「気にするな。戦士は戦いの中で死んだのなら怨みは持たない。それが戦い中毒の奴らの口癖だ。

 確か……弱い奴は死ぬだっけな。奴も事あるごとにそう言っていた。納得はできないが否定もできない」


 古くからの戦士達の言い伝えである。

 戦場に出た者は死んでも怨みを持つべからず、

 理由としては簡単だ。自分も誰かを殺す、だから自分が誰かに殺されても恨める立場ではないという意味なのだろう。


 そして魔族の中には弱い者は死ぬという認識が強く根付いている。つまり負けた者は弱き者、勝者、強き者を恨んではならない何故なら自分が弱いからだ。


 自分の弱さを人のせいにするなという意思が込められた言葉である。

 誰が言い出したのかどこから広まったのか誰も知らないが戦士なら皆知っている言葉だ。


 だが背後からの奇襲や一騎打ちの最中に邪魔などをされた、した場合は除く。そういう時は一生怨んでやれ、それが魔族の心得なのだ。


 正々堂々戦わない奴に情けなど不要。そういう奴は自ら殺してくれと言っていると思え、そういう奴を生かしておく方が後々面倒ごとに繋がる。


 情けをかけて殺さないなら情けをかけて殺してやれ、1人だけ生き残ってしまったならそいつも殺してやれ、1人だけ生き残ってもそいつは一生怨みを持ち続けるだろう、なら全員始末した方が結果最善に繋がる。



『まず始末するべきは目の前の敵よりも逃亡しようとしている味方である』



 魔王軍とはそういう組織なのだ。


「我が魔王城もガランとしたな四年前の傷がいまだに癒えていない」


 誰かに答えを求めるような発言ではなく、自分に何かを答えるような口調で呟いた。

 昔はもっと人で溢れていたが……。


「…………」

「エントラスが死に、他の四天王達はそれぞれの戦場を今も駆け巡っている。ここ最近姿形すら我は見ていないな、あいつらどこをほっつき歩っているのか、まぁ仕事はしているだろ」

「ショコラシア王国が盛り返してきたって聞いたがどうなんだ?」

「ああ、それか……一応それは事実だ。我という求心力が魔王城から離れ勇者と共にいる。それだけで魔王軍は揺らいでいる。主に新兵だがな、でも新兵だろうと足並みが揃わなくなると部隊にとっては致命的な傷となる」


 新兵だからこそ精神把握は必要なのだ。

 老兵中堅どころは酒さえ渡しておけば静かになる、だが酒も金も要らない。武功を挙げようと燃え上がる心を抱く新兵はそうもいかない。


「今、ショコラシアを攻めているのは四天王ではない。ショコラシアを任せていた四天王レイムズは我が貴様に倒される直前、帰還命令を出しておいたからな今はこの魔王城で我の仕事を代わりにやらせてる」

「じゃあ誰が今攻めてるんだ?」


 オグワがルンルンな今、少しでも情報を集めたいのかや無理やり気味に内情を書き出すダニエル。魔王もそれに気づいていると思うがたまにしか話せないからか隠す様子もない。


「誰だっけ?」

「俺に聞くな」

「思い出した! レイムズの腹心だ名前は忘れた」

「そうかよ」


 頭にびっくりマークが浮かび、拳をガシッと握る。

 ダニエルはおつむがバカな魔王に悲しげな目線を向け、大丈夫と言いたげに肩を2回トントンと優しく叩く。


「そんな目で見るな、我だって全てを覚えているわけではない」


 言い訳しているがあまり効果はない。それどころか見苦しい言い訳のせいで、オグワはバカだと言うことに確信を持った。


「そうだもう一つ思い出した。我が帰還命令をかけた時に、ショコラシア戦線はゆっくりと後退しろと命じたんだった。あそこからは四天王が離れるからな、レイムズの腹心と言えどちと荷が重い」

「じゃあ、グダマ王国は?」


 ここまでボロボロ話してくれれば恩の字だが、さらに絞り取りたいと言う欲を見せたダニエルはもう一歩踏み込んだ。


「あれはただの劣勢だ。あそこの軍は強力だからな我が四天王と言えど最強というわけではない。今は後退しながら二次防衛ラインを堅牢にしているところだろ、で我にカマかけて楽しいか?」

「バレた?」


 最初からバレることが前提だったカマかけは当初の目標を大幅に超え達成されたがやはり魔王もカマかけには気づきいていた様子だ。


「バレるに決まってあるであろう」

「俺はお前が素直に答えてくれたことに驚いたよ」


 てっきり最初から一切答えてくれないと思っていたがオグワが思ったより喋ってくれたおかげでかなり重要な情報も仕入れることができダニエルは笑みを漏らす。


「全て嘘かもしれんぞ」


 今更こんな発言をしても今までの話にさらに信憑性が加えられるだけだからオグワはどうにかして話をかけようと必死に手足をバタバタ動かす。


「でもこっちの情報を合わせれば問題ないだろ」

「貴様の情報も我がイジっているかもしれん……」

「そう思っておくよ」

「好きにしろ、あやつはなら劣勢すら覆せる」


 ヘソ曲げた魔王は、「さっさと行くぞ、我も暇ではないのだ」とよくわからない事をほざくと足早に歩き出す。


 オグワが目の前のドアの取っ手に手を伸ばすと先に

 ドアが開き驚きでオグワが大きく飛び跳ねた。



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