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31 「銃の持ち込みってできる?」

 

 出店に戻ることが許されたオグワは子供達のおもちゃと成り果てていた。先ほどダニエルにやられた怪我は何故か完全回復してる。

 それをダニエルが突っ込むとーー


「我は魔王だ時など我の好きなように弄れる。貴様も赤子に戻してやろうか?」


 ーーと言うわけのわからない返答が返ってきた。

 これ以上問い詰めても答える気がないとダニエルは決めつけ「それでいいよ」と半ば投げやりに答え、オグワがやる予定だった店番を始めた。

 ダニエルが店番を始めた途端、勇者ファンクラブの女の子達が一斉に集まりまるでNo. 1ホストのような雰囲気が肌で感じられた。


「みんなごめん、僕この店の店番やっているんだ、今日は子供達の日だ。少し退いてくれると嬉しいな」


 ファンクラブ達の女の子は訓練された軍隊のように手慣れた動きで半球状に離れた。

 そう言う意味で言ったんじゃないんだけどな……

 本音を言えば客ならまだしも冷やかしなら帰ってくれと言う意味を込めて優しく説得してあげたがあまりうまく意味が伝わらなかったのか、勝手に解釈したのか何故か均等な間隔を開け並んだ。


 皆、ダニエルを見る事はなくお互いを監視している。1人でも1センチでも一ミリでもダニエルに近付く者がいないかをピリピリ警戒心を露わにして警戒強めていると人の海を割るようにして1人の女性が凛々しい表情でズカズカと歩いてきた。

 ファンクラブの女の子達が一斉に罵声を浴びせるがその女性はそんなの羽虫同等と言うように無視しているがうるさくなったのかだらたん下げていた銃をちらつけ黙らせた。


「銃の持ち込みってできる?」


 ダニエルの手元に硬貨を叩きつけた。ダニエルは彼女じゃないことを精一杯いつもは信じない神に祈りながら顔を上げるが日々の信仰が足りないせいか神はダニエルに味方する事はなかった。


「あ、アイリーン……」


 今、一番見たくなかった女性がダニエルの目の前に立っている。先ほどと変わらず赤い浴衣を身につけているが、その脇に可愛い浴衣とは似ても似つかない真っ黒い銃を持っている。


「できる?」

「銃の持ち込みは……できない、いんだ」


 特段この国では銃の所持は禁止されていない、いないが街中で銃火器を人に向けたり、許可されてない場所で試射した場合()()でも死刑が言い渡させる。※街中で所持する事自体は違法ではない。まぁ簡単に言えばそんな奴ら死んでも損はないと言うのである。国が守る義務を負うのは善良な市民のみである。法律を自ら破ろうとする奴等など死んで綺麗にした方がいいのだ。


 このおかげで銃を買える程の金を持っているお貴族様のクソガキがこの5年で10名ほど死刑を受け執行されている、そのどれもが三男以下。 

 これは王族にも適用さて5年ほど前には甘やかされ育った第四王子が城下町でおもちゃを売ってくれなかった商人に仕返しするために銃を王城から持ち出し、その商人を殺傷したと言う事件が起き、最初は国王は厳しすぎると難色を示していたが結局家臣から『そんなことばかりでは信用されません。ただでさえこの事件で城門に民衆が毎日のように詰めかけているのですから、門番も止めるのが大変そうですよ』とチクリと言われ、見せしめ兼ケジメをつけると称してしなくてもいい公開死刑をする羽目になった。


「そう、残念、ねぇあれも景品?」


 アイリーンはおもむろに手に持つ銃をダニエルの後ろで子供達と楽しそうに遊んで………滑り台のように遊ばれているオグワに向けた。

 ついでに『アレ』が人に当たるかと言われれば当てはまらないと言う答えになるだろう。だが結局はその時の民意が物を言う。


「あ、あれって?」

「後ろの」

「後ろの?」

「そう」

「そ、その前にそれ下ろした方がいいと思うよ、捕まるよ」

「大丈夫。大丈夫私は許可取ってあるから。安心して」


 全く安心できない答えにアイリーンは「見る?」と聞きダニエルが答える前にネックレスのように首から下げられた許可証を見せつけた。


 そこには銃所持者 アイリーン 

 と顔写真付きで書かれていた。

 ギルド職員は自身の身の安全のために銃の保持が認められている。また危険分子を排除するために街中での発砲も認められているが制約付きだ。


「きょ、許可……で、でもそれに魔王は入ってるの?」

「さぁ? 入っているんじゃないの?」

「………」

「まぁいいわ、誰も見ていないところに引き摺り出すだけだから」


 アイリーンは銃を下ろすとダニエル達が用意したおもちゃの銃の標準をオグワに向ける。


「子供達も巻き込むから」


 ダニエルは銃口を自らの手で押さえて銃を下ろさせた。


「そうね、私が殺したのは子供じゃない魔王だからね」

「そうそう」

「一番上の宝石、本物?」

「え?」


 一番上の棚に大きめのぬいぐるみの間に箱に入れられバレないように置かれた景品。箱の表面にはダイヤモンドと書かれている。

 二つのぬいぐるみの間はコルク弾が一つ通る程度の隙間しか空いておらず取らせる気がないのは明白だ。


「一応本物だ! 我が保証する」


 子供達のおもちゃになっていたオグワは背中に子供を乗せたまま重そうな足取りでダニエルの隣で黒い笑みを浮かべていた。


「お、オグワ!」


 ダニエルは急いでオグワを避難させようと動き出すがアイリーンに動く気配がないことがわかるとオグワを離した。


「何警戒してるの?」

「え、え?」

「どこでもぶっ放すような女に見える?」


 先ほどまでぶっ放そうとしていた張本人とは思えない言葉にダニエルは恐る恐る座っていた椅子に腰掛ける。


「そう。そう言うこと」

「アレは本物だ、まぁダイヤの原石だけどな、研けば宝にはなるだろう」


 気色悪い高笑いをしているオグワの頬がペタッとかわいいぷよぷよの手で叩かれた。


「痛いではないか! 人を叩くなと教わらなかったか?」

「知らない〜!」


 背中におぶられていた女の子がオグワに怒られると同時に急いで飛び降り距離をとった。

 オグワが怒ろうと追いかけようとしたが足元を別の子供達が息ぴったり抑え動けないようにした。


「貴様ら、子供ながらになかなかずる賢いではないか、そう言う奴らには罰が必要だな」

「オグワやめろ!」


 指先が白く光だしダニエルが慌てて立ち上がるが既に魔法が発動され子供達が宙にまるで無重力状態になったかのように浮き出した。

 ついでにダニエルも浮いた。


「どうだ? 動けないだろ」


 してやったり躾だと言わんばかりにオグワはドヤ顔で腕を組んでいるが子供達は全く別の感情を抱いていた。


 初めて体感する無重力に興味津々の子供達はお互いの手を取り合い宙を泳ぎ出す。


「ありゃま、子どもの好奇心を計算するのを忘れてた……敵ならこれで始末できるのだが、無垢な子ども達には関係ないか」


「降ろせ!」


 なお、このいざこざの間にダイヤの原石はアイリーンによって獲得された。


「降ろせよ!」


 これ以上はやばいダニエルも頑張って空を腕で漕いでゆっくりと移動を始めるをみたオグワはダニエルだけ魔法を解除した。


「……痛い」


 受け身を取ることなく地面に激突したダニエルは見えないが苦痛に満ちた表情で呟いた。




 それからしばらくすると祭りの終わりを知らせる花火が空いっぱいに立ち上がり収穫祭が終わった。


 出店の店主達が一斉に店仕舞いをし終わった者から中央広場に集まり、慰労会と称した大酒飲み大会が始まった。別に賞金もトロフィーもない。あるのは酒を飲めると言う事実のみ。

 オグワも参加したいと駄々を捏ねあーだこーだ騒いでいたが、ダニエルに黙らされ意識のない状態で2人が共同生活をするアパートに連れ返された。



諸事情で更新遅れました。

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