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29 自業自得 上編

 

「で、オグワからどう責任取るつもり?」


 オグワの出していた出店には『店員急病につき一時閉店します』と手書きの張り紙が貼られている。 目隠し用の幕が張られたその奥で見たこともないようなダニエルの表情にオグワがヒィ! と気持ち悪い悲鳴をあげこの場から急いで逃げようとするが、一歩目を踏み出す前に足を払われ地面に押さえつけられた。


「ちょっと立ちあがろうか」


 オグワの首を掴み無理やり立ち上がらせると、無表情で頬を2回ぶった。


「痛いではないか!!」


 まだまだ元気なオグワの腹を予備動作を見せずノータイムで殴り付けた直後オグワの身体が一瞬浮き上がる。


「グュブ!」


 唾液が空気と共に漏れ出し、全身の力が抜け、手足がだらんと垂れ下がるがこれも意識を失った演技であるとダニエルは判断した。

 オグワの首を無理やり持ち上げ、目線を合わせた。


「なぁ、まだ足りないよな」

「わ、我は悪いことはーーあぁぁぁあ!! やめてくれ!」



 やめてくれと言われやめるようなダニエルではない。全身をバタバタさせ逃げだろうと必死に足掻いているがダニエルの拘束がどうしても外れない。


 ダニエルは握った拳を何も言わずに振り上る。

 顔の前で手をバタバタと回しどうにかダニエルの拳を受け止めようとする。


「や、やめてくれ」


 オグワのその願いが届いたのかオグワの顔面に当たる瞬間に止められた。チラッと閉じられた瞼を開け周囲の様子を確認する。


「痛い! 痛いではないか!!」


 ダニエルの拳は直撃していないがなぜか痛みを感じたのかオグワは叫び出す、鼻水垂らし涙目でごめんなさい!! と喚き散らしているがダニエルは聞き入れない。


「オグワ、演技はやめないか? 当たってないよな、なのになんでそんな痛いってアピールするの?」

「か……身体は痛くなくても……心は痛いのだ! だから痛いと叫んでいるのだ!」


 よくわからない理論だがダニエルがそれを受け入れるはずもない。


「わかった。なら体も少し傷みつけようか、おまえを躾けるためなら俺は喜んでお前をサンドバックにしてやる」

「ごめんなさいもうしません!!!!」


 遅さに失した。もっと早く、もっと早くオグワからその言葉が出ていたらダニエルであれば少しは考慮して殴られるだけで済んだと思う。

 だが今のダニエルの怒りはそんな安っぽい謝罪でするような物ではなかった。


 掴まれていた首をさらに持ち上げるとオグワの足が地面から離れ宙ぶらりんになる。


「や、やめてくれ」


 その直後、太鼓の音色に近いドンドンという音が聞こえた。


 オグワの身体が揺れ動く、その揺れがダニエルに近づくと握られた拳がオグワの腹を抉りブランコのように跳ね返りブランコのように戻ってきた。

 そしてまた腹を殴られ、

 ブランコのように戻り

 腹を殴られ


 ダニエルの気が済むまで続けられた。


 終わった時にはオグワの腹が紫色に腫れ上がっていたとかいないとか。

 だが服で見えないところなので誰もその真実を知らない。


「い………痛い」


 解放されたオグワは相当なダメージを負っているのかいつものような飄々とし感じではなく干からびた魚のような見た目をしている。


「元気そうだな」

「ごめんなさい」


 まだ元気があるとダニエルは判断したのかオグワ背中に踵落としが炸裂した。

 何かが割れたような鈍い音とオグワの悲鳴がそこかしこに響く。


「うぅー うぅ、あー」


 流石のオグワもこれだけ食らうと痛みという物を感じ始めたのか全く動かなくなるがやはりこれも演技であるダニエルはそう感じ、オグワを無理やり立ち上がらせると頬を殴り目を覚させた。


「何寝てるんだ?」

「ご、ごめんなしゃい」

「だ〜め」

「ひぇぇぇぇ!!!ーーアブユバ!」


 悲鳴をあげ肺の空気を出し切ったオグワの腹にダニエルの拳が捩じ込まれたと同時に首を掴んでいた手が離され、地面に叩きつけられた。


 もうすでに声も出ない。オグワは丸まって小さく呻き声を上げている。

 流石にここまでやればダニエルも怒りが収まったのか、ふぅーと息を吐き、一仕事終えた大工のような雰囲気を出している。

 がこれで許してはいけない。ここで甘い判断をするからこの魔王は付け上がるのだ。


「なぁ、何寝てるんだ?」

「我、もう、動けない」


 地面にベターと張り付き、まるでお菓子を買ってくれなくて駄々を捏ねる子供のように動けないアピールをし体全体を使い動けないことを表現しているオグワの両脇をダニエルが抱え起き上がらせる。


「ダニエル?」


「すまないな」ダニエルの良心にオグワが撃ち抜かれかけた直後、次は脇腹に強い衝撃が稲妻のように走った。


「ゔっばっ!!………ご、ごめんなさぃ」


 もう言葉すら満足に発せなくなり、本当に力尽きたのかいつものような殴りたくなるような態度を見せない。流石のこれにはダニエルも悪いと思ったのか、オグワの脇腹をつま先でツンツン突いた。


「我は死んでないぞ」

「あぁ、ごめんゴミかと思った。」

「より酷いではないか!」

「元気だな」

「我痛い死ぬ、内臓が破裂した」


 これでも食らってもまだ余裕の表情でコロコロ転がり腹が痛い! と叫んでいる。

 この魔王、殴っても効かず、言葉で諭しても効果なし、無視しても邪魔してくる。ダニエルはこれをどう処分しようか頭を悩ませていた。

 だが勝手に処理することは許されない。

 やっぱりあの時、息の根を止めて置けば良かったと少し後悔しそうになったがこんなやつに後悔しても意味はないと思い後悔するのをやめ、無意識のうちにオグワの腹に踵を落としていた。


「あああぁぁあ!!」



 下編へ続く

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