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28 女の子を泣かせた罪で死罪。

 

 無理やり心を落ち着かせダニエルは帰って来た。

 足元はフラフラで今にでも倒れそうな気配があるが気力がそれを許さない。

 そこへダニエルの気配を察した魔王が汗をダラダラ流しながら慌てた様子で走って来た。


「おぉ! ダニエルいいところに来たな、我だけでは収拾が付かなくなってしまった。助けてくれ」

「お前、何やらかしたんだ?」


 疲れた顔を見せないように押し込め、顔を上げると勇者ファンクラブの女の子達がの一部が赤い厚紙のような物を胸の前で抱き抱えている。

 ダニエルの位置からでは何が書いてあるのか見えなかったが、その紙の正体にすぐに気づいた。射的の景品が乗っている棚を見ると先ほどまでの沢山おいてあったお菓子などの景品が消え、棚が一つだけになりそこに『勇者に頭をなでなでしてもらう権利』と汚い字で書かれた厚紙、女の子達が持っている厚紙と同じ厚紙が景品のように置かれている。


「お、お……お前、何をしたんだ?」


 この事態を飲み込めないダニエルは目をぱちぱちさせ景品の棚と女の子達を交互に何度も見て時々オグワを睨みつけた。


「面白そうだと思ったのだ……ま、まさかあんな事になるとは我も思わなかった」


 聞き取らせる気がないほどボソボソ早口で言い訳して、逃げようとするがすでにオグワの首根っこが掴まれ身動きが取れない状態にされていた。


「言い訳を聞こうか」

「わ、我は知らなかった!」


 ダニエルは疲れた体を鞭打ってオグワを掴む。

 体をくねくねヘビのように捩らせ逃げようとするが逃げれば逃げるほど指の食い込みが強くなり逃げれない。


「で、何をしたんだ?」

「だ、ダニエルがどっか行ったあと、我は前々から計画を練っていたのだ。景品は勇者にしようと」


 オグワの言い訳は聞けば聞くほど、殴るだけでは足りないようなクソみたいな話であった。


 どうもオグワは射的の店をやり出したいと言い出した時から景品を勇者にするつもりだったそうだ。

 間違えてもらうと困る。今のような厚紙ではなく、

 ダニエル本人を景品にして儲けようとしていた。

 だが、途中でどうやってもダニエルを捕まえ景品にすることができないと気づいたらしい、最初からわかるだろう! と怒鳴りつけたくなったが勇者には外面も必要である、この衆人環視のなかそんなことはできなかった。


 だからダニエルが隙を見せるを待っていた。ダニエルがアイリーンに呼ばれた時、チャンスだ! と思ったらしい、アイリーンと消えた直後裏に隠してあった特別景品を棚に乗せそれを撃たせた。


 景品にはダニエルと一日中過ごす権やダニエルとのお食事、ダニエルと1時間2人っきりで散歩であったりハグなど、勇者ファンクラブの女の子からすればよだれが出るほどの景品を入れようとしていたが、ダニエルにバレたら殺されると直前で思いとどまり、まだ殺されなさそうな勇者に頭を撫で撫でしてもらう権利に変えたそうだ。


「オグワどうしてくれるんだ?」

「あはは……どうしよう」


 その回答にそんなことだろうと半ば予想できていたダニエルは深いため息をついた。


「みんなごめん、この人のいたずらだってさ、この人が勝手に客を集めるために嘘の景品を店に出したみたい、本当にごめんだけどその景品は無しにしてもらえる? 勿論お金は全額返すから」


 ダニエルの謝罪に先程まで歓喜の小踊りをしていた女の子達が死の淵に立たされた時のような表情を浮かべ、無意識のうちに厚紙をパラパラと落とし、人目を憚らず涙を流した。


「あ、あ、みんな………」


 この状況に一番困惑したのはダニエルだった。

 いつもならダニエルが本音を見せれば女の子達が理解してくれるが今日は悲しみが大きすぎた。


 普段ではありえない反応にダニエルはあたふたしながら、首根っこ掴んでいたオグワを投げ出し女の子達に駆け寄る。


「み、みんなごめん」


 ダニエルは1人ずつこの場にいる女の子達全員の頭を邪な考えを一切持たずに丁寧に撫でどうにかこの場を納める事に成功した。


誰が1番の得をしたのか………それは誰にもわからない。

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