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27 アイリーン

 

 かなりの距離を歩いてきた。

 初めは人通りも多く、人混みをかき分けながらも軽快に歩くアイリーンについていくのがやっとだったがこの付近には人っこ1人歩いていない。


 祭りの賑やかな声も耳を澄ましてやっと聞こえるぐらい遠くから聞こえる

 路地に浮浪者含め誰も人がいないことを確認したアイリーンは壁によりかかり腕を組みやっと口を開いた。


「魔王は危険よ、早く殺した方が身のためになる」

「なんだよアイリーン、開口一番オグワを殺せ? アイリーン、君らしくないぞ、いつもの君なら説明もなしに殺せなんて言わないはずだ」


 ダニエルの口調は珍しく怒りの感情が混じっている。友人を貶されたのが嫌だったのか、殺せと言う発言が許容できなかったのか、わからないが普段のダニエルからは想像できない感情がその言葉に乗せられていた。


「君らしくない? それは貴方じゃないのダニエル、魔王討伐に行ってなんで貴方魔王を殺してないの? それどころかなんで友達のように接しているわけ」

「オグワとは行き違いがあったんだ。魔王は世界の統一を目論んではない」


「そんなの嘘よ!」


 アイリーンが美しい見た目とは裏腹に犬歯が見えるほどの怒鳴り声をあげると同時に足元の地面が削れた。


「仲間が殺されてたのにそれで納得するの?」

「あれは悲しい事故だ。みんながちゃんと相手の話を聞いていればあぁはならなかった」

「では今私の話を聞いて、早く魔王を殺しなさい。今はあんな気味の悪い笑顔を振り撒いて愛想よく振る舞っているけど必ず本性を見せるわ、ちゃんと相手の話を聞け? なら私の話も聞いてもらえるわよね」

「証拠もなしに殺せるわけないだろ、現に今オグワが何か事件を起こしたか?」


 今にでも飛び掛かろうと言わんばかりに拳が握りられるが理性がアイリーンを押さえつけた。


「こないだ冒険者が2人消えたわ、まぁ態度も成績も実績もない汚い奴らだったから表立って噂される事はなかったけれど、どうも貴方達2人が関与しているみたいね」


 冒険者2人ダニエルには思い当たりがある。


「あの2人か、あの2人は勝手にいちゃもん付けて来ただけだ。正当防衛だ」

「ええ、正当防衛ね、でも冒険者が2人消えた。貴方はそれを報告した?」


 正論で詰めてくるアイリーンに圧倒され思わず後退りしてしまう。

 距離ができ、落ち着きが生まれたのかダニエルはそれらしく反論する。


「……あの2人が冒険者には見えなかった。そこら辺にいるヤクザ関連だと思ったよ」


 ダニエルはどうにか言い逃れようと言葉を捻り出したがアイリーンの中で何が壊れる音がした。


「たとえヤクザ関連だと思っても魔王討伐に行く前の貴方なら必ず報告してくれたわよね、なんで報告してくれなかったの?」

「冒険者には見えなかった。そう言っているだろ」

「そう、答えてくれないなね、みんなの前で魔王と友達になりました。なんて言えるの?」


 みんな、その一言を理解した瞬間ダニエルの表情が強張り、いつもは穏やかな目が怒りに満ち溢れる目に変わる。


「…………」

「彼らは命賭けて魔王討伐に向かった。世界のためなら自分の命すら捨てられる英雄だった。ギルドマスターだってそう。なのになぜ貴方は魔王と友達なんてやってるの? もう一回聞くよ、みんなの前でそれを答えられるの? 行き違いがありました? 笑わせないで、ダニエルやっぱり貴方、魔王に何かされてる」

「勝手な推測で喋るな! 僕は僕だ。オグワに思考をいじられた? ありえない」


 拳を壁に殴りつけヒビが蜘蛛の巣状に入る。

 拳から血が滲み出している痛みを感じていないわけがないが頭に血が登ったダニエルの神経網は痛みを脳は報告しなかった。


「貴方の怒鳴り声なんて初めて聞いたわ、それがもう証拠みたいなものじゃない」

「僕だって怒る時はある、僕はみんなが描いてるような聖人君子じゃないんだ!」 


 振られた拳がアイリーンの顔面の寸前のところで止めたれた。

 拳から垂れた血液が白いバックを赤く滲ませる、

 アイリーンはまるで殴られることがないと予期していたのか、動揺する様子もなくさらにダニエルに正論で詰まる。


「早く魔王を殺したほうがいい、魔王を殺せる存在は勇者しかいない。思い出して、貴方はなんで勇者になったの?」


 ダニエルは黙り込む。

 答えを探しているのか、地面に目線を向けたまま動かなくなった。


「フィスリアは確かダニエルの幼馴染だったはずよね、昔フィスリアが言っていたわ、指輪を交換したって結婚を誓い合った仲だったんでしょ」

「……子供の頃の話だろ」

「でもそのぐらい仲良かったんでしょ、魔王に殺されて、その仇がその前にいるのに殺意の一つ湧かないの?」

「……………」


「これも答えてくれない、最後に聞いていい? この指輪覚えてる?」


 左手の薬指に付けられた赤黒く変色した木製の指輪。

 ダニエルが忘れるはずもない。その指輪はダニエルがフィスリアに贈った指輪である。

 大人になっても付けられるように少し大きめに作った一点もの。


「ど、どこでそれを……」

「魔王城」

「貴方と魔王が友達だと宣言したあと、魔王領との往来が楽になったの、私でも行けるぐらいにね。だから貴方が報告しなかったみんなの死体を私が確認しに行ったの、もう私が行った時には肉はどうぶつに食い荒らされ、原型もなかったわ、でも骨が多少散乱していた。誰のものかわからないけどその手の骨に大事そうにはめられていたのこの指輪が」




「時間もらって悪かったわね、でもよく考えて」


 アイリーンは逃げるようにその場を後にした。 

 1人取り残されたダニエルは髪の毛をむしりとるように掻きまくり何かと葛藤している。


「ぁぁあああぁァァァァ!!!!はぁはぁはぁ」


 言葉にならない叫び声を響かせた。


「ぼ、僕が…………オグワに支配されてる………だと、ありえない!」


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