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23 空中散歩2

 

 空の旅を満喫したオグワ達は無事地上に戻ってきた。着陸場所は祭り会場に程近くそして比較的人が少なそうな林の中に設定した。

 その林にはまるで着陸を想定して設計されたのか円形に木が生えてない場所が空から見えた。


「さて、祭りの続きだ!」


 オグワは地上に降りるなりすぐに駆け出した。少し遅れてダニエル逃げ出したオグワ()捕まえようとが追いかける。


「待てオグワ!」

「置いていかれるのが悪い!」


 ダニエルの赤子も泣き止む怒鳴り声が背後から轟いた瞬間一気にオグワとの距離を詰め肩を掴んだ。


「おぉ〜我を捕まえるとは」


 首根っこ掴まれ、動けなくなったと言うのに口が減らない魔王の頬を背後からむぎゅ〜と挟み込んだ。


「はにをするのだ?」

「に〜げ〜る〜な」


 ダニエルの物凄く威圧感が込められた低い声と同時にオグワの首を絞める手に力が込められる。


「よ、余興ではないか、どうせ貴様は我のことを捕まえる事ができるのであろう、それにこの腕輪で我は逃げられない。貴様と我は一心同体だからな」

「一心同体はお前だけだ」


 嘘! 心からの叫び声が響く。

 手足をバタバタさせ殺される前に逃げようとするがどう足掻いてもその手は外れない。

 しばらくバタバタ逃げようとしていたが逃げれないと理解できたのか目にはうるうると光るものが滲み出てきた。死刑執行が宣告された死刑囚のような表情でダニエルに助けを乞う。


「そんな〜、一緒に死ねば怖くないだろ」

「なんで俺がお前と心中しないといけないんだよ!」

「愛が重いな、我と一緒に心中なんて、まぁ我は死なないがーーグュブォ!」


 言葉を理解できない魔王にはこれが一番だと言わんばかりに腹に1発喰らわせた。


 強烈な一撃くらった目を全開に見開き膝から崩れ落ちた。だがどうにか体勢は保ったまま膝立ち状態で止まった。


「痛い」

「おぉ、しぶといな……」

「すいませんでした」


 ダニエルが再度拳を握ったのをると見せ魔王は地面に額がつきそうな勢いで謝る。

 その衝撃で地面が丸るく削れた。


「顔、上げてくれよ」

「許してくれる? ガブュゥ!」


 甘い言葉にノコノコと顔を顔を上げたオグワの頬にビンタが炸裂する。その勢いをそのまま吹っ飛んだオグワはあぁぁぁぁあぁぁ! と全く懲りてないような声を上げながら道化師のようにクルクル転がり、頬を抑え「痛いではないか!!」と叫びながらコロコロコロコロコロコロコロコロ左右に回転して全身を使いその痛みを表しているが、動きが大きさすぎで共感や同情、可哀想と言った感情よりも笑い声が湧き上がる。


「楽しそうだな」

「あぁ! 顔が取れると思ったぞ!」

「付いてるじゃないか、顔」


 魔王はタフである。

 勇者ダニエルの拳と平手打ちを受けてもピンピンしている。それどころか質の悪い冗談を言う余裕すら見せる。まるでまだ殴ってくださいと言っているように聞こえる。


 オグワの前に跪き「大丈夫か?」と声をかけた。


「な、なんだ?……」


 いつでも逃げれるようになのか腰が引けている。

 いや少しずつズルズルと後退している。

 何か嫌な予感でもするのだろうか。


「ぐぁら!」


 魔王が宙に打ち上げられた。

 オグワの腹に拳が捻り込まれ、花火のように天に上昇し、上昇速度と重力が釣り合った一瞬、オグワは空に静止しその直後重力に従い落下を始める。


「助けてくれ!!!」


 地上で見ているダニエルは助ける気すら無い。

 打ち上げたオグワ(花火)をただ見上げている。


「頼む悪かった! 済まない!」


 別に空を飛べるが演技派魔王は演技にのめり込みそのことを忘れている。まぁそもそもの話、魔王がこのぐらいの高さから自由落下程度で落ちたところで怪我の一つ負う事はない。

 多分だが痛みもないと思われる。


 こうやって助けてくれや済まなかったであったりもうしませんごめんさいと涙目で謝ればダニエルが許してくれると言う甘い認識でオグワはわざと演技をし許してもらおうと考える卑劣な奴だ。助ける理由はない。


「もうしません!」

「何を?」

「え……」


 それがオグワの最後の言葉になった。

 打ち上げられたオグワは地上に激突しなかった。激突寸前のところで風の魔法を操り落下速度を相殺し地上への衝突を免れたように思えたが


「え、なんで?」


 オグワの頭上には両拳を組み合わせるように握ったダニエルの姿が見えた。

 まるで釘を打つハンマーのような振り下ろされた拳はオグワの頭の中心を捉え、地中に突き刺さり、寺の鐘よりも遥かに鈍い音が辺り一帯に響く。


「助けてくれ……」


 頭だけ土の上に出たオグワは身動きが取れず顔だけで今の現状を説明するがダニエルの姿が見えない。


「お願いだ、我を助けてくれ」

「おーい、誰もいないのか?」

「ダニエル〜我が友よ聞こえているのであろう」

「済まなかった」

「もう逃げないから、許して」

「死ぬ! 息が……息ができない!」


 顔だけで息苦しさをアピールし助けを全力でたすけを乞うオグワだが誰もその声に反応しない。


「ゴボッゴボッ、は、肺が押されて、息が……息ができない、もう無理ダメ死にそう、我がここで死んだら一生枕元に化けて出てやる!」

「呪い殺してやる!」

「いいのか! 毎日我が枕元でモーニングコールしてやるぞ!」

「あの〜、ダニエル……本当にいないの? ねぇどこ行った? 助けて、漏れそう」

「いいのか!  漏らすぞ! 漏らすぞ! それは貴様も困るよな!」

「我は知らんぞ!」

「………………」


 この世の全てから解放された清々しい笑みを浮かべ、この世の全て悟った。


「助けてくれ〜もう我限界」

「あぁ〜綺麗な花畑が広がっているな」

「川の向こうで死んだ叔父が手を振っている」

「待ってた、だってさ」


 整備された花畑の向こう岸にオグワの前の魔王が険しい顔で手を振っている。その隣にもう1人見慣れた人物が汚い笑みを浮かべ魔王の到着を待っている。


「げぇ! あいつは……なんであの野郎が天国に」

「やめろ! やめてくれ、俺を連れて行かないでくれ!」

「ダニエ〜〜〜ル助けてくれ!!」

「ガムドラが我を連れて行こうとする!」

「我はまだ死にたく無い!!」

「あぁぁぁぉぁぁああ!!」

「ハァハァハァ! 助かった、腕が……あのクソ野郎我の腕を食いちぎりやがって」

「腕が我の腕がぁぁぁあ!!」

「目の前で我の腕を食われるところを見るのは不思議な気分だな」

「幻覚が見えてきたぞ、喋る馬がいるぞ」

「ダニエルの声そっくりだ」

「あぁ、どっかに行ったか」

「ダニエル? 何故逆立ちしているのだ?」


 反転した世界、オグワの前にはダニエルが立っている。いや、近くに寄るとそれはダニエルではない。

 オグワ自身である。

 自分が自分の目の前で逆立ちをしている。


「ダニエルじゃないか、あれ誰だ? 我だ?何故我が逆立ちしているのだ?」

「ここは天国か?」


 気分の良くなるお薬でも服用したのか魔王はほとんど現実のようなおかしな夢を見ていた。

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