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19 ギルドマスターの活躍3

 

「よかろう、貴様みたいな男は我も好きだ」

「魔族に告白されても嬉しくないな」


 2人の距離はおよそ10メートル。だが互いに身長2メートルを超える大柄で数字よりもさらに近い距離にいるように錯覚する。


 魔王四天王守護のエントラスはギルドマスターの戦い方を理解したのか、大剣を使わないと言いたげに地面に突き刺す、それだけで砂埃が巻き上がり足元をモクモク覆う。


「なんだ? ハンデか」

「いや、我と素手でやり合える好敵手はもう2度とこの世界に現れる事はないだろ」

「死ぬ前に楽しみたいと……」

「あぁ……そう受け取ってくれて構わん、好きにしろ」


 その言葉を皮切りにギルドマスターが動いた。

 真っ向勝負だと言わんばかりにエントラスの胸元に飛び込み強烈なアッパーを喰らわすように見せらがそれはブラフ、胴体に一撃入れてすぐさま離脱した。


 ノーガードで殴ったんだ、多少効いてもらわないとこっちが困るな……。

 感覚としてはノーガードで殴り多少のダメージは負わせることができたような気がするが先程の一撃を無傷に立っていた。そう易々と倒れるような鍛え方はしていないだろう。


「……久しぶりだ、久しぶりに我が痛みを感じた」


 エントラスの腹の鎧ならピキピキと嫌な音が聞こえる。腹部に視線を落とすと鎧が砕けポロポロと落ちた。


「この鎧を破壊するとは……何千年ぶりだ……あはは! あははは、やはり戦いは楽しいな!!!!」


 鎧を破壊されて吹っ切れたエントラスは叫び声を上げ残った鎧を引き剥がした。

 全身の重しとなっていた鎧を脱ぎ去り、現れた肉体はギルドマスターとほぼ同等、いやそれ以上の筋肉量を誇っている。鎧だけでも砕くのに苦労したが、その筋肉は鎧よりもさらに高い硬度がある。


「いい筋肉だーーッ!」


 ギルドマスターは気を抜いた訳ではない。

 瞬きの隙をつかれ、エントラスの蹴りをモロに喰らい、吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされたギルドマスターは自ら回転して衝撃を柔らかくして着地しその勢いを全て足の筋肉に移しエントラスに殴りかかる。


 エントラスの頭を狙い一撃必殺の拳を捩じ込むが狙ってくる場所が分かれば止められると言わんばかりにギルドマスターの拳を左手で寸分違わないタイミングで掴みギルドマスターの動きを止めた。


「これを止めるか」

「いい攻め手だったぞ。だが単調だ」


 ガラ空きの胴体を殴ろうと右拳を握った直後ギルドマスターの蹴りが右腕を捉える。

 エントラスは思わず左腕を離してしまう。

 離した左腕をギルドマスターが捻るように掴む。


「ふんっ! これでどうだッ!」


 ギルドマスターは全筋肉を使い空中で身体をバク転のような形に持っていき、エントラスを空へ投げ飛ばす。


 エントラスを投げ飛ばし余裕ができたと思い一回転して着地したギルドマスターの脇腹に直後衝撃が走る。痛みを感じると同時にギルドマスターは吹き飛ばされた。


 先ほどまでギルドマスターが立っていた場所にはエントラスが平然と立っている。

 エントラスは投げられた後ギルドマスターと同じように着地の衝撃を受け流し、足にかかったテンションを全て使い駆け出し、背後をとった形でギルドマスターの脇腹を蹴り抜いたのだ。

 エントラスは落下速度も自由自在に操れる。


 蹴り飛ばされたギルドマスターは森の木々を5本ほど薙ぎ倒すとようやく止まった。

 相当なダメージが入ったかのように思われたが、強がっているのか痛む体を表に出さず倒した木を持ち上げエントラスに無造作に投げつけたがどれもエントラスに当たる事はなかった。


「効いたなぁ……久しぶりに肩の凝りが取れたよ!」


 ギルドマスターは肩を回して「これからが本番だ」と口にしエントラスに飛び掛かり連撃を入れようとするが全て読まれていた。

 先にエントラスが動く。


「そう来る事はわかっていた」

「フィスリア!!」


 それとほぼ同時にダニエルが叫ぶ。


 ギルドマスターの身体は宙に浮かんだまま。歴戦のギルドマスターであろうとこの体勢では避ける事は不可能だ。


 エントラスは半身避け、拳を握り目の前を通過したギルドマスターの頭部を殴りつけ吹き飛ばしたその瞬間、エントラスの目の前をギルドマスターと交差するような形でフィスリアが猛スピードで飛んできた。


「きゃぁぁぁぁああああ!!!」


 ダニエルに投げられたフィスリアは胴体と頭部が離れた直後のギルドマスターの体に触れると絶命したギルドマスターを生き返らせた。離れた頭部はまるで時間が巻き戻ったように胴体に戻り、2つは元通りにつながる。


「助かったフィスリアッ!」

「嘘だろ……ッ!」


 エントラスは飛んできたフィスリアに目が行き、ギルドマスターが生き返ったことへの反応がわずか一瞬遅れた。その僅かな時間が命取りとなる。


 着地したギルドマスターが反動も含めた全ての力を足に込め、反転し、フィスリアを放置し一瞬早く動いたギルドマスターを動き見たエントラスの額に拳が入る。

 鐘の音に近い鈍い音が当たり一帯に響く。


「見事……だ」


 僅かに残された時間ギルドマスターを讃えると命は終わりを迎えスイカが割れるようにエントラスの頭が砕け散り、脳みそをぶち撒けながら、後ろに倒れた。既に頭部は失われているのになぜか満面の笑みがギルドマスターの目に映った。


「貴様が魔族でなければ……」


 先程の着地の際に足を痛めたのか、足を引き摺るようにして、エントラスが脱ぎ去った鎧の一部を手に取る。

 手に取った鎧はたった一片だが数キロの重さがあった。


「貴様の魂、私が持って行けるところまで持って行こう」


 ギルドマスターがそう呟くと背後からタタタッと軽めの足音が聞こえ、砕けた鎧を握り立ち上がる。


「ギルドマスター……」


 フィスリアはギルドマスターの足元にしゃがみ込み、戦闘で痛めた足の治療を始める。


「フィスリアか助かった。お前がいなければ私はあそこまでの命、いや実際、私はあそこで一回死んだ。礼を言う。ありがとう」

「いえ、私の力だけではないので」


 ギルドマスターは自分の首筋を触り繋がっているとこを再認識し「貴様の力は異常だな」何に対しての言葉なのか明言しなかったがフィスリアにはその言葉の意味が重くのしかかる。


「まだ先は遠い……これ以上無駄に死ぬ事は許さん」


 遠くに聳え立つ純白と言っても過言ではないほど白い魔王城を見ながら呟き、フィスリアが回復した足の状態を確認する。


「大丈夫だ。みんなを呼び戻せ。今残ってる人数を確認したい」


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