16 勇者パーティ
フィスリアとは幼馴染であった。年齢も一つ違い家も近所という事で昔からよく遊んでいた。この時は誰も知らなかった。フィスリアがこの世界で5本の指に入る回復魔法の使い手だと。
子供の昔話だが、結婚を誓い合った仲だった2人は面白半分で両親の真似をして木をくり抜き結婚指輪を交換していた。
フィスリアはその指輪をつけ、魔王軍との戦いに挑み死んだ。
オーガスタは昔からフィスリアをいじめるいじめっ子であった。フィスリアをいじめるたびにダニエルにやり返され、捨て台詞を吐いて逃げる奴だった。それがいつしかフィスリアをいじめるのをやめ、ダニエルと殴り合いの喧嘩をするようになった。
最初の頃は子供同士の喧嘩程度の怪我で済み、フィスリアにその怪我を回復してもらいまたダニエルに挑む。そんな日々を繰り返していた。
15歳を過ぎると真剣をどこからか持ち出し腕一本足一本切り落とし瀕死の重傷を負うようになった。
それも全てフィスリアの回復魔法で腕や足をつなげていた、ひどい時では死んでも生き返らすことができた。今思えばフィスリアの回復魔法が進化したのだろう。毎日毎日怪我や腕、脚を治している間に回復魔法の熟練度が格段に高まったのかもしれないがもう確認のしようが無い。
アネットはダニエルとオーガスタが喧嘩をしているのを目撃して止めに入った姉貴分である。
2人が真剣を持ち出し殺し合い同然のように殺しあっていた時2人の間に魔法をぶっ放し、2人を吹き飛ばした。もちろん威力を抑えめに撃ったので2人にほとんど怪我はなくピンピンしていた。勝負を邪魔された2人が息ぴったり一斉に切り掛かってきたのをアネットは自慢の拘束魔法魔法で2人の動きを封じてゲンコツを食らわせていた。
それが勇者パーティの始まりである。毎日のようにダニエルとオーガスタが真剣で打ち合い怪我をしたらフィスリアが即時回復させてまた打ち合う。
時々アネットか適当にどちらか片方の足元に設置式の拘束魔法を展開させ、チャンスを演出する。
ダニエルは毎回拘束魔法を受けていたせいか、動物的な感で拘束魔法に掛からなくなり、最近ではオーガスタにばかり拘束魔法を掛けていた。しかしそれも次第に破られるようになった、オーガスタはダニエルとは違い、力で拘束魔法を抜け出した。
それに半ば激怒したのかアネットはさらに強力な拘束魔法を生み出し、2人を拘束する。そんな日々が10年ほど続いた。
10年もだ。こんな他人が見たい絶対にやめさせられるような生活を10年毎日欠かさずだ。
大人になれば10年剣の鍛錬を積むなど比較的できない事では無い。
だが10歳ほどの4人が10年間毎日だ。この意味が理解できるだろうか。
魔力量というものは幼少期の生活で大体8割決まるとされている。無論そこにも誤差は存在する。大人になってからさらに魔力量が増える人もいれば幼少期で頭打ちとなる人もいる。
彼らは幼少期の頃から死と隣り合わせの喧嘩を繰り広げた。
ダニエルもオーガスタも自身では理解していないが無意識のうちに身体強化の魔法を全身に張り巡らせていた。全身に張り巡らせる魔力がなくなると必要な部分にのみ魔力を流すという高等テクニックも自然と習得していた。
フィスリアは毎日のように。2人の手足を繋げていた。普通こんな芸当ができる回復魔法の使い手など教会がすぐに囲んで聖女として祭り上げようとするがフィスリア達が住んでいた街は教会という存在が薄い街である。だから教会がフィスリアのことを認知することはなく、フィスリア本人が知らず知らずのうちに回復魔法のレベルが常人を遥かに超え、教会が囲む聖女の中でも頭2つ3つ抜けた異常性を持った回復魔法の使い手になっていた。
アネットは4人の中でも年上ということもあり。自分の力の把握に努めていた。たまに練習には参加しないで1週間山に籠るといると言い出しほど音信不通になっていた、その時アネット山に生息する魔獣相手に拘束魔法をぶっ放し。何分拘束できるかを実験していた。
低ランク帯の魔物であれば最長10分拘束魔法の効果があった。
高ランク帯生物であれば30秒程だが約10秒程度のインターバルで繰り返し拘束魔法をかけることができたが回数を重ねるにつれ拘束魔法の効果が薄れることも判明した。
1回で30秒 2回で目で20秒 3回目で10秒持たなかった。5回目以降になると効果は殆どなくなった。
アネットが気づくことはなかったが。普通なら拘束魔法は8秒程、それも動きを鈍らす程度で一回のみが限度である。
4人は知らないがこの当時すでにこの世界で一番強い力を持っていた。
田舎町に英雄を遥かに超えた子供が4人同時な現れた。これが都会であれば大騒ぎであろうが、人の目が少ないここでは4人の存在が認知されることはなかった。
ただ単に大人よりも強い子供としか認識されなかった。
魔力というのは不思議なものである。
使えば使うだけ容量が増えるという研究結果が報告されている。まるで筋肉と同じような性質を持っている。もしこの仮説を信じるのであれば魔力をなんらかの理由で使わない、使えない状態を維持すれば魔力量が減少するでは無いかと研究者達の間で流れているがこの世界は魔力がものを言う世界。そんな実験に付き合うほど酔狂な者は少ない。
幼少期にどれだけの魔力を使用できるかによって成人後の魔力量が大きく左右されるが幼少期に魔力を使い過ぎると魔力欠乏症を起こしやすくなるとも報告が上がっている。
幼少期に魔力を使った方が良いという話を鵜呑みにしたどこかの家族のご子息が魔力欠乏症を起こし2度と魔法が使えない身体となった例が実際に存在した。
結局の話全て個人差があるのだ魔力を使いすぎてもその後、後遺症が少ない者もいれば過度に出る者、後日現れる者様々である。まだ確定するための材料としては物足りないが仮説としては成立するほどの数の研究結果が発表されている。
そして運命の日がやってきた。
魔王討伐に向かう勇者を国が集めたのだ。
勇者と言えば1人だけ、又は勇者パーティと呼ばれるごく少数の者をイメージするがこの国での勇者の概念は違う。
国から正式に依頼された者全てが勇者、勇者パーティと呼ばれる。
正式に依頼されたのは1万人以上の志願者の中更に選別された腕利きの約100人事実上この国のトップ100と言える面々に依頼が出された。
冒険者ギルドからAランク超え双竜の牙、鉄石、エンカルトなど精鋭30人と冒険者ギルドのトップにして現役最強と呼び声高いギルドマスターを加えた31人。
そして魔王討伐の報奨金集まった実力者
ダニエル達のように我こそは!として厳しい試験を乗り越えてこの場に辿り着いた者達。
そして彼らは勇者ダニエルを除き全滅した。
彼らの多くは魔王城に辿り着く前に命を落としたのだ
冒険者ギルドの精鋭の半数も道半ばで魔王四天王守護のエントラスに討たれた。
また、金目当ての奴らや厳しい試験を乗り越えた者の多くはこんな無謀なことに命を賭けれるかと敵前逃亡の始末であった。
エントラス戦を終え生き残ったのは冒険者ギルド15名 ギルドマスター
そしてダニエル達、計19名であったが、強さとしての質はさほど減少しなかった、それどころか連携という面では格段に向上した。




