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13 『俺が勇者だ』

 

 勇者の心が荒んでいるからかそう見えたのか店長が何故か逃げるようにして奥に向かった。店長はすぐに木製の箱を持って来てテーブルの上にあったゴミを腕で払い落として、その箱を丁寧に置く。


「その箱が浴衣か?」

「違う。俺でもわかるぞ。なぁ、お前のボケにいちいち対応するの面倒なんだけど」

「細かいことは気にするな、細かいことを気にしてばかりでは疲れるぞ、たまには乗ってこいよ、気分が違うぞ」 


 オグワのボケの大安売りにダニエルは突っ込むのも面倒になったのかここ最近では突っ込みのクオリティが下がり始めて来た。だが魔王はそんなことは気にしない。


「勇者様も大変ですね……」

「わかってくれるか店長、本当こいつボケるだけボケて収集付けないからより厄介なんだよ」

「我は魔王だそう言う物である」

「ほら今もこうやって、あれをどう返せって言うんだよ」

「今のはボケたわけでは無いが」

「で、こうやって自分でハシゴ外すんだ」

「まぁ、魔王様ですし、諦めましょう」


 セクハラ、パワハラ系よりも魔王によるボケハラの方がより厄介だと身に染みた、ダニエルは視界から魔王を消した。


「で、店長、どんなものができた」

「我も気になるな、我に似合うものであろうな」

「えぇ、オグワ様。オグワ様のご期待に沿えるものかと」

「よかろう、我が許す、その箱を開けよ」


 これはボケなのかナチュラル装備なのか判断が付かなかったダニエルはそのボケを無視して、箱の中身をじっと見つめた。


「2点ご用意させていただきました。まずはそのうちの一点、正直言ってこれは好みが分かれると思います、では開けます」


 店長は何故か逃げ道を用意してから箱を開けた。

 一つ目の箱の中身は背中に特徴的な文字が印字されている。


「おい! お前までこんなことやり出すのか? ボケのバーゲンセールかよ、魔王1人対応するので手いっぱいなんだからやめろ、俺はこれ買わねぇぞ」


 最初の箱には一番最初に見える場所に


     

         俺

        勇が

        者

        だ

        ‼︎   

 

 とプリントされていた。勇者ダニエルはこう言うことは嫌いなのである。自分で自分を勇者だと言いふらすのは大っ嫌いなのだ。ただでさえ勇者ダニエルが街に出るとキャーキャー黄色い声援が降り注ぎストレスだと言うのに何故自分からこんな恥ずかしい浴衣を着なければならなければならないのか。


「オグワに着させろ」

「オグワ様には『俺が魔王だ』と書かれたものを用意しました。ペアルックです」


 店長はもう一つの箱を開けオグワに見せる。

 一つだけでは忌避感の塊だった浴衣も二つ揃うと何故が様になった。


「我は好きだな」

「ならお前だけ着てろ」


 オグワは『俺は勇者だ』と書かれた方の浴衣を手に取り羽織るが着方を知らないオグワはが着るとなんとも悲しい状態になった。


「ふふ、ひでぇな」

「笑うではない!」

「着付けは店の方でやりますので、でそちらでよろしいのですか?」

「好きにさせろ、いいんだろそれで」

「我は構わなぬ」

「では勇者様にはもう一つの方を」




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