11 こう言う時、必ず馬鹿な奴らは現れる。
せっかく2人仲睦まじく、収穫祭用に仕立てた浴衣を取りに行こうとしていたら、半グレ系の命知らず2人組が下衆汚い笑みを浮かべて、オグワ達の前に立ち塞がった。
「おいおい、勇者さんよ、なに女の子達と楽しくやってんだよ!!」
「そうだぜ! 俺たちも混ぜてくれよ、1人ぐらい分けてくれてもいいだろう」
半グレ二人組の左側の少し背の低い男がいきなり背中の剣を抜き、叫び出す、それに同調するように右側の背の高い男もサカリが始まったのかキーキー騒ぎ出した。正直言ってうるさい。ダニエルとしてはこんな奴ら剣を抜かなくても勝てるがだからかと言って白昼堂々こんな大通りで殺傷騒ぎを起こしたくない。別に起こしたところで勇者ダニエルの正当防衛としてみんな納得してくれるがそれでも多少の聴取は免れないだろう。そんな面倒ごとはごめんだ。
半グレ2人は勇者達だけが黄色い声援を浴びていることに嫉妬でもしたのだろうか、それとも自分だけ相手にされないと言う何とも悲しい劣等感抱いたのか知らないが勇者に喧嘩を売ってきた。
普通、脳みそがあるならば勇者に喧嘩売ろうとすら考えないと思うが。
そもそもこの2人組、自分たちがちょっかいかけているのが勇者だと気づいているはず……だよね。
わかっていると思うが何故手を出そうとなんて言う思考にたどり着いたのか。
そんなことをしているから女の子達は振り向いてくれないのである。勇者を見てみろ、可愛い女の子達に迫られても、骨抜きにされずに自我を保っているではないか、ホテルに連れ込むこともせず自宅に持ち帰ったりもしていない。もし半グレ2人に同じような方が起きたらすぐに鼻の下伸ばしてホテルなり路地裏なりに連れて行こうとして引っ叩かれるだけである。
「どうするオグワ?」
「勇者の綺麗な手を汚してどうする?」
隣で「何だ? 楽しそうだな」と言いながらあの2人のことを見ていたオグワに話しかけると、珍しく真っ当な返答が返ってきた。
「珍しいな。まぁわかった。全てお前に任せる」
「良いのか?」
オグワが初めていつもの悪い詐欺師のような笑顔ではなく心からの楽しそうと言う感情が込められた笑顔を見せた。
「あぁ、いいとも」
初めてそんなオグワの笑顔が見れたダニエルは調子に乗ってOKを出したことを直後後悔した。だが言ってしまったこと、今更後戻りは出来ない。全てをオグワに任せた。
「おい! なに2人でコソコソ話してるんだ? 怖気付いたか?」
「いや、君たち2人を相手するのに僕は必要ないかなって話してただけだよ」
「勇者だからって言って話聞いてやったら随分な物言いじゃねぇか!!」
兄貴分の背の低い男が叫び動き出す。
半グレ2人が一斉に駆け出してくるが、
「ダニエルの手を煩わせる程ではないな」
魔王オグワが勇者の前に出ると半グレ二人組の足下に直径3メートルほどの黒い円が現れ、彼らは重力に従い抗う余地すら与えず声も出せずに真っ暗な闇へ消えて行った。
「なぁ、あれどこに消えたんだ?」
「さぁ? 知らん」
2人が落ちた暗黒世界の行き先を問いかけるがオグワは本心からとぼけた、オグワ自身本当にあの2人がどうなったのかわからないようだ。ダニエルが引いていると取り繕うようにオグワが詐欺師のようにそれらしく説明した。
「我はあれの中に入ったことは無い。あの世か天国か地獄か、はたまたそのどれにも属さない何かかそもそもあの2人が生きているのか死んだのかも我にはわからない」
「…………」
「だが生きているだろう。その昔我に反旗を翻した魔王四天王を放り込んだ事がある、我は我の仲間であれば全ての生死がわかるのだ。そしてまだ死んではいない。だからあの2人も生きているだろう。今のところはな、だがあの2人は我の仲間では無いからな死んでも我にはわからない」
結局の話、我にはわからない、と纏める。この説明に一行も要らなかった。
「何故、俺たちとの戦いの時それを使わなかった?」
「使って欲しかったか? 我はあの魔法は好きでは無いのだ。あの魔法を使えば敵はなす術もなく一瞬で片付いてしまうだろ、それでは戦いは面白くない。勝つとわかっている戦い以上につまらない戦いはないのだ」
必ず勝つとわかっている魔法など魔王にとっては無用なのだろう。なんせ魔王も戦い馬鹿に近い存在である。強い相手を求めて戦っていたら知らぬ間に自分が最強になっていたのだ。それなのに戦わないで勝てる魔法を使っても何ら面白く無い。
「貴様もそうであろう。剣を知らない子供と戦い勝ったところでなにも面白く無い。
一つ、貴様が勘違いしないように明言しておく、決して貴様ら勇者パーティが弱かったわけでは無い。久しぶりに戦いを楽しみたいと思える相手に我は出会えたのだ。孫世代いや、
その先子孫が続く限りずっと誇っていいぞ」
負けたお前がどのヅラで言ってるんだとダニエルは思わず口にしたが、オグワはそんなことを一切気にせず、歩き出した。




