3回目 意気揚々と祟られに行き、結果としてこうなっている
依頼人にとって地獄のような時間が続く。
体調も気分もふるわず、仕事は右肩下がり。
それが周囲にもひろがっている。
体調や気分の不調は、家族なども巻き込んでいる。
親や女房、子供も軒並み調子が悪くなっている。
仕事の方も会社全体の業績低迷におちいっている。
それもこれも、依頼人が肝試しに行った日からだ。
それまで依頼人はこういった心霊現象を信じてなかった。
そんなの、度胸のない奴がなんでもないものに怯んでるだけだと。
仮に本当に心霊現象があるとしても、そんなの気迫ではじき返せる。
そう考えていた。
しかし、実際に体験してみると、そんな生やさしいものではなかった。
どうしても消えない嘔吐感。
頭もどこか鈍っており、考えがなかなかまとまらない。
手足も思うように動かず、仕事が手につかない。
病気かと思って医者に言っても、原因不明。
おまけに、だんだんとおかしなものを見るようになる。
黒い人影や、じっと自分を見つめる巨大な顔。
耳に聞こえる笑い声に、誰もいない所で鳴る足音。
心霊現象でよく取り上げられる現象のほとんどが身近で起こった。
それが日に日に強くなっていく。
さすがに早くどうにかしたい。
そう思って解決屋に出向いた。
しかし、その解決屋もちゃんと動いてるのかどうか。
お守りやらお札などを貰いはしたが、心霊現象が無くなる事はない。
幸い、幾らか緩和はされたのだが。
なくなるという事はなかった。
「準備中だ」
状況を確かめにいけば、常にそう言われる。
「いつまで待たせるんだよ!」
その度に怒鳴りつけた。
そうすれば、たいていの奴は言う事を聞く。
だから威圧的に話をして事を有利に進める。
それが依頼人の処世術であり交渉術だった。
しかし。
「だったら祟りも呪いもそのままにするぞ」
解決屋にはきかない。
脅そうが怒鳴ろうが何の効果もない。
それどころか、逆に脅しをかけられてしまう。
(ふざけんな!)
依頼人は何度もそう思った。
自分はこんなに苦しんでるのに、こんなにつらいのに。
それを助けようとは思わないのかと。
そう考える事がそもそも間違いなのだが。
だいたいにして、人に頼むのに脅しや怒鳴り声をあげるのがどうかしてる。
そうやって事を有利に運ぼうという考えも。
そもそもとして相手を尊重するという意思や気持ちがない。
だから依頼人は解決屋への憤りを募らせ続ける。
早く問題を解決しない事に。
いつまでも準備に時間がかかる事に。
(なのに、金ばかり要求しやがって!)
それも腹の立つところだった。
問題解決の為に何十万という金を要求されている。
それを工面するのに、かなりの無理をしている。
あちこちから金を借りた。
まともな所から借りられなくて、まずいところにも手を出した。
それでも足りずに、金をとにかく借りまくる。
売れるものも全部売る。
そんな事をしながら解決屋に金を払い続けた。
そうして数ヶ月。
依頼人はボロボロになっていた。
体や心だけではない。
生活も仕事も。
幸い、職場の方はある程度持ち直した。
低迷は続けてるが、倒産は免れている。
だが、依頼人の業務成績は悪く、待遇もどんどん悪くなる。
給与も徐々に減っていっている。
しかし、日常生活は酷いものだ。
依頼人は常に頭痛にさいなまれ、体もだるさが抜けない。
食欲もなく、体はどんどん痩せていく。
もともと肥満気味だった体は、大分細くなっていた。
124キロだった体重が、62キロまで落ち込んだのだ。
当然だが、健康的な痩せ方ではない。
そんな状態で借金まみれ。
しかも返す宛もない。
取り立てもだんだんときつくなっていく。
二進も三進もいかなくなってきた。
(どうすりゃいいんだ……)
そう考えていた時に連絡が入る。
待ちに待った、解決屋からだ。
「仕上げをする。
家族全員集めておけ。
一緒に心霊スポットにいった連中も」
それだけの声に、依頼人はすがっていった。
そして親に嫁に子供。
肝試しに付き合った者達。
それらを解決屋は訪れた。
必要な準備を持って。