2回目 通じない会話は会話と呼んでよいものかどうか
それから二時間後。
脱線しまくる話を「聞いてねえ」「うるせえ」と軌道修正を入れて。
ようやく事情を聞き終えた。
そこで一旦依頼人を帰し、解決屋はため息を吐き出す。
「うぜえ…………」
心底そう思った。
やたらと偉そうな態度。
怒鳴り声しかしらない話し方。
毎度の事とはいえ、面倒な事この上ない。
仕事でなければ、相手にしたくない人種だった。
もっとも、そういう輩だから問題を起こす。
しなくていい事を何故かやる。
まともな人間なら、祟られたり呪われたりする事がない。
そういう事をまずしないからだ。
一般人ならまずこういった問題は起こさない。
何かの間違いで禁忌に触れてしまう事はあるが。
自発的に問題のある場所に向かおうなどとは思わない。
万が一向かうにしても、丁重な態度をとる。
その為、余程の事がないかぎりは祟られたり呪われたりしない。
そういう事をやらかすのは、たいていいい気になってる人間だ。
根拠のない優越感。
自然に抱いてる自己肯定感。
そういったものを持ってる人間が問題を起こす。
何をしても大丈夫という思い込みで、踏み越えてはいけない線を踏み越える。
そして、祟られて呪われていく。
今回の依頼人もそういう輩だった。
きっかけは、いわゆる心霊スポット。
そこに出向いたからだ。
肝試しで行ったという。
わざわざ曰く付きの場所に出向くのだからたいがいだ。
そして、案の定不審な出来事が続くようになり。
精神状態や体調がおかしくなり。
日常生活でも不幸な出来事が増えた。
自己や病気が増え、仕事では失敗が続く。
祟りや呪いで良くある現象だ。
それらが今回の依頼人にも起こった。
解決屋が何度も見てきたものだ。
なので、解消方法も熟知している。
あとは準備をととのえるだけだ。
ただ、準備にはそれなりの時間がかかる。
最低でも数ヶ月。
それくらいの時間は必要だ。
その間は、祟りや呪いの現象を出来るだけおさえる。
解決屋の仕事で最も大変なのはここだ。
この期間の間、なんとか依頼人を保護しなくてはならない。
(まあ、やるしかねえけど)
全ては食っていく為だ。
骨を折るくらいの努力はしなくてはならない。
面倒極まりないが、これも食い扶持の為である。
依頼人が気にくわない奴であってもだ。
やるべき事はやらねばならない。