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つかえねーチート

作者: ごくつぶし

いつだって世界はこんなはずじゃないことばっかりだ

 転生した。経緯とかもはやどうでもいい。いやよくはないけど、どうせ手遅れだし。寝て起きて気付いたら野原に投げ出されてて手元には「転生させました。チートも付けました。好きにして」って書いてあるメモがあるし。

 導入雑!! もっと捻れよ。

 でも最近流行の召喚とかではなく、古きよき転生トラックでもなく、ましてや寿命とかでもなかったはず。まだぴちぴちの20代だったから。

 は? 29歳までは20代なんだよ。どっかのネ〇フの作戦部長も初期の頃は同じような年齢だったろ。

 まぁともかく、転生したからには何かやれってことなんだろう。俺だって転生する前は現代を生きてきたんだ、転生物なんてそれなりに読み漁ってきてる。知ってる? 理想郷とかいう場所。あっこも転生者いっぱいだったよね。今稼働してんのかな。

 いかん、何しても横道逸れる。横道逸れずにまっしぐらって男の生き様の筈なのに。でっかく生きなきゃいけないのに。今通じないかこのネタ。

 現実逃避はこれぐらいにしておこう。いい加減周りの状況、というか自分が今置かれてる現状知らなきゃ。

 さて、転生して、なおかつそれを自覚してる輩がやらなきゃいけないことなんて決まってるよね。

 ステータスオープン。

 ………あれ? あ、ステータス開くのはキャンセルボタンじゃないのか。大体のゲームってキーボードだと×とかじゃん。まぁstatusって文字に託けてSボタンに設定するとこもあるけど。

 えーと、readme.txtっと……はいはい、このボタンね。

 んじゃ改めてステータスオープンっと。

 んー……あぁ、チートだわ。いや所持金・レベルMAXとかスキル全使用可能とか技能全取得辺りはまぁメモで予測してたけど、敵弱体化とかエンカウント無効とかそういうシステム面の方のチートもあるのね。あ、回想全開放もある。いや待て。なんであんだよ。

 って言うかこれ転生っていうよりさぁ、同人ゲーの二週目って感じじゃん。CGとかイベント回収用じゃん。え? 一週目の記憶とか無いぞ。二週目のキャラに入っちゃった奴か。

 まぁ入っちゃったもんは仕方ない。そして強くてニューゲム出来るなら、まぁやることは一つだよね。

 ヤルしかないよね。あ、因みに全解放はしないぞ。だって楽しみが無いし。

 さて、ゲームの進行上出会うキャラにはCGとか回想はあるだろうけど、ゲームの中で自由意思で動けるんなら、そりゃもう手当たり次第よね。最近はMOBキャラ狙ってる作品も多いし。

 の、前に。

 体力無限とか絶対防御とか状態異常無効とか、とりあえず不意打ちされても死なないチートは発動させておきましょ。だってキャラは二週目でも中の人というか俺は素人だし。何の変哲もない一般人だぞ。それがお前剣でファンタジーでエルフで魔法な世界に放り込まれたんだぞ。

 自由にできるってことは、それだけ危険に晒される可能性も高いってこったろ。制限なしオープンフィールドゲーム、ただしリアルで死ぬみたいな状況。

 そう言えば転生物だと中世とか謳ってるわりには衛生とか食事とかちゃんとしてたり、逆に今までどうやって生活してきたみたいな世界も多いよね。転生世界にいるキャラは基本的に転生者に対する驚き要員な。ここテストに出るぞ。何しても驚かれるから、今後転生する皆は遠慮せず行動しろ。

 因みに相手が女キャラだと好感度上昇に繋がるし、男キャラだと取り巻きやイエスマンがどんどん増えるし、王とか領主とかだとその世界に後ろ盾が増えるからな。積極的に狙っていけ。

 閑話休題。

 それじゃ初期設定と言う名のチート選択も終わったので、さっそく行動しましょ。

 あ、そうだ。今後の意気込みも兼て敬愛するゲームキャラの台詞でも叫んでおきましょうか。


「がはは、グッドだー!!」


 

 さて、そこからまぁチート使って戦争しかけてきた敵の群れ倒したり、チート使って行政復活させたり、チート使って不死の病に侵されてたお姫様救ったり、チート使ってキャラの両親の形見の代物回収したり、チート使ってダンジョン攻略したり……まぁともかくチートの大安売りしてきた。だって隠す必要ないし。


「お前凄いな!!」

「修業したからな」

「貴方凄いですね!!」

「神様の加護貰ったからな」

「貴様、出来るな」

「生まれつきなんだよ」


 それで大体話通じるんだもん。いや、疑う奴もいたけどそこはまぁチートの催眠なりなんなりで。残念なことに全員男キャラだったから催眠でアハーンでうふーんな展開にはならなかったけど。アッー!! になりかけたけど。あっぶな。

 なんかさー最近じゃ実力隠してたら追放されたとかあるけどさー、あれ周りからすりゃ至極当然だよね。いや本気とまでは言わんにしてももっと技能曝け出せと。

 裏切る前提とかならいいけどさぁ、何もしてないのに追放されたってのは、あれだぞ。おじいちゃんおばあちゃんが何もしてないのパソコンが壊れたっていうのと同じだぞ。

 ま、それはさておいて、なんで俺がこんな真面目にストーリー的な何かを進めているのかというとだね。

 ほら、あるじゃん。任意のマップに飛べるアイテムとか、通行許可書とか、そういう「移動に必要なアイテム」って。やっぱそう言うのはちゃんとイベント熟さなきゃ手に入らないのよ。しかも設定上は根無し草の一般人(武装済み)だからそれなりに実績とか借りとか実力とか見せないと手に入らないし。

 さて、ある程度の基盤、と言うか自由に動ける裁量を手に入れたし。そろそろ自分に素直になろうと思う。

 つまり、R-18展開。

 これよ、このためだけに俺はめんどくさいお使いを熟しまくってきたのよ。

 んでその過程でいろいろ見てきたけど、いやぁ、美男美女しか居ませんな、この世界。男はショタからロマンスグレーなおじさま、筋肉もりもりマッチョマンの変態まで。女はロリから妖艶な熟女までよりどりみどり。

 種族も王道のエルフからアウルネラ、マーメイド、サキュバスなどなどモンスター娘まで。

 え、やばくね? これやばくね? 俺の股間が活火山なんだけど。

 なおペドは無い模様。いや俺が嫌いだから。イベントでそう言うのあったけど、ペド野郎は「終了」しておいた。あとロリも今回は禁止。性癖としては理解するが、俺はイエスロリコン、ノータッチよ。

 と言う訳で、チート使って女の子キャラをアヒンアヒン言わせようと思う。

 ……いや待て、言いたいことは分かる。もっとハーレム築けとか、一線引退してのほほんと暮らせとか、或いは戦争に身を費やして英雄になれとか、或いは世界の反逆者的な存在になれとか色々出来ると思うんよ。現にそういうチートもあるし。

 それはそれでいいよ。マルチエンディングはいいよ。やり込み要素として秀逸だよ。

 だからこそ思う。

 もっと股間に従って行動しろ、と。どうせ転生者なんて何したところでチートで黙らせられるし。変に賢者気取ってんじゃねぇよと。とにかく、もっとエロに走れってんだよ。

 あ、でもあからさまなエロというかお色気シーンはあれだぞ、ギャグにしかならんからな。

 無駄に語彙力の高い五月蠅い竿役とか動くたびにムチムチとかビーチサンダルの足音させてる女とか。


「さて、と」


 声に出して心機一転。これから俺は好きにします。その過程で何が起きても気にしません。或いは国が亡ぶかも知れない。或いは戦争が起きるかもしれない。人心世俗乱れるかもしれない。


「だからどうした」


 チート持ったんだ。だからチートを使った。チート―――「欺き」を使ってきたんだ。騙される方が悪い。

 結局の所さ、チート使って世界を良くしようなんて考えるやつなんて居ないんだよ。チート使って周りを従えて、或いは自分を誉めそやさせていい気分になりたいだけなんだよ。

 悪いわけないじゃん。むしろ素直の姿勢で安心する。どこぞのゲームの善意のみで動く英雄従えたマスターなんかより、よっぽど信頼できる。

 さて、御託はここまで。これよりさき、お色気シーンが始まります。全裸待機の準備はオーケー? ティッシュは準備したか? 唐突な母親自室エントリーの可能性は無いか?

 宜しい、では先へどうぞ。


 

 と、言う訳でテキトーにその辺で姫騎士捕まえてきた。いやチート使えば王国に乗り込んで王女とか手籠めにしたり、或いは国自体滅ぼして女全部奴隷化とかも出来るんだけど、そこまでやっちゃうと手が足りない。物理的に、人手不足。ほら、俺って孤高の存在だし。ぼっちとか言うな。

 さて、目の前にはこの世界でも1、2を争う実力兼見た目をもつ姫騎士様が。いやぁ、才色兼備って存在するんだね。

 なお身に付けていた武具はよくあるミスリルとかオリハルコンとかヒイイロカネとかなんかこーファンタジー的にやべー素材がふんだんに使われててぶったまげた。いやこれ城買えるわ。天下の三肩衝もびっくりレベルだわ。

 でも一番びっくりしたのはそれを装備する姫騎士様がそれに負けず劣らずどえらい別嬪だったこと。

 金糸を流したような流麗な金髪。細面乍ら柔らかさを感じさせる輪郭。少し釣りあがり気味ながらも、慈愛を兼ね備えた碧眼。小さめの鼻と桜の様な唇。

 そして鎧越しでなお分かる肉体。剥ぎ取られた胸部装甲の下、所謂インナー的な下着を押し上げる豊満な双丘。四肢は引き締まりながらも決して筋肉質ではなく、指先で押せばしっかりと弾力を返してくる。

 覗く肌は土と少しの切り傷で汚れていながらも、なお美しく光の当たる場所であれば白磁とまで言えるほど。

 抱けば折れてしまいそうなほど細い腰回りと きゅ、と引き締まった臀部。そこから繋がる脚は、すらりという擬音をそのまま形にしたような程。

 まさしく稀代の彫刻家が一世一代どころか身命賭した上に悪魔に魂を売ってまで完成させたような、もはや美術品とまで言える美貌。

 正直直視できません。でもこれからこんな存在を好きに出来るんだよね。やっべ、体力無限チートつかっとこ。あと腰回りの筋肉と腰椎も強化しとこ。


「気分はどうだ、姫様」


 ほっぺたをぺチペチ。わーやわらけー、すげー。って感動してる場合じゃない。

 姫騎士様の瞳がゆっくりと俺を見据える。ぼんやりとしていた焦点がやがて像を結び、俺を捕らえる。


「貴様は……」


 ……あれ? なんか違和感感じるけどまぁ続けよう。


「状況は分かるな?」

「なっ……く、こ、これは!?」

「あー無駄無駄。仮にも騎士様を捕まえようってんだ。楽に解ける代物じゃねぇよ。それより……女の身で捕まったんだ。どうなるかはわかるよなぁ?」

 

 違和感を打ち消すようにゲスっぽく、いやこれからゲスになるんだけどさ。


「くっ、この俗物め……!! 目的はなんだ!? 我を人質に王家と交渉でもするのか!? 或いは防衛情報でも聞きだすつもりか!?」


 ……あ、違和感分かった。


「だが無駄なことだ!! 我は何をされても何もしゃべらぬ!! 殺すなら殺せ!! 貴様なぞに手籠めにされるくらなら死んだ方がマシというもの!!」


 …………。


「どうした!? 何を黙っている!? よもや気圧されたわけではあるまい!!」

「…………はぁ~~~~~……」

「な、なんだその溜息は!?」


 なんだか一人で盛り上がりだした姫騎士様を放置して俺はクソデカ溜息。いやため息も付きたくなるよ。これが冷や水を浴びせられた気分ってやつか。

 だってさぁ。


「我も王家に身を連ねる者!! いつでも王家に命差し出す覚悟は出来ている!!」


 絶世の美女と呼ばれる姫騎士(CV:榊原〇子さん)

 いや無理。出来る人もいるだろうけど、俺は無理。精神的にも肉体的にも委縮する。

 そうだよなー、今までなんで気付かなかったかなー。世界の中に居るんだもんなー、そりゃ登場キャラ全員フルボイスだよなぁ。

 しかし。

 しかしだよ。

 なんでよりにもよってク〇ャナ殿下やねん。おうチート授けた奴ちょっと出て来いや……あ!! そうだ、チートで姫騎士様の肉体なりなんなり改造すれば!! ボイス変更とかすれば!! 好みのボイスにすれば!!


【操作を受け付けません】


 これだよ。神は死んだ。いや俺が殺す。


「さぁ好きにしろ!!」

「あ、もう帰っていいです」

「……は?」

「お仕事邪魔してすいませんでした。拘束とかもうちょっとしたら解けるようにしとくんで。あ、出口はあの扉出てまっすぐ行けば着くんで。お疲れ様でした」

「なっ!? ま、待て!! このままなのか!? せっかくの姫騎士だぞ!? しかも我だぞ!? あ、コラっ!!」


 なんか背後で聞こえてきたけど放置。もう知らん。すげー疲れた。もう寝る。

 とりあえずあれだねー、チートとか持ってても、出来ないことはあるんだよねー。はぁ、クソ。もう今日は寝よ。お休みお休み。

 なお後日姫騎士率いる騎士団に強襲された模様。そらご自由にお帰りくださいなんてやったら居場所捕まれるよね。

 チート使って逃げ回りながらそんなことを思う俺でした。

くぅ疲

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