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第六話

「え、なんで……?」

「その女をとらえろ! そこの女は聖女にあらず! 聖女を騙るおぞましき魔女だ!」


 フィリップの言葉を合図に、それまで物陰に隠れていた聖騎士たちが、一斉にクローディアにとびかかった。


「え、なんなの? やめて、痛い痛い、フィリップさま! 助けて下さいフィリップさま!」


 泣き叫ぶクローディアを聖騎士たちがよってたかって引き立てていく。

 彼らには聖女のローブと装身具をはぎ取ってから、魔獣の森に追放するよう申し付けてあった。殺さないのはかつて婚約者であった女に対するせめてもの情けと言えるだろう。

 

 引きずられていくクローディアを無言で見送っていると、ふいに後ろから肩を叩かれた。振り返れば長兄アベルと次兄ジョージが笑顔を浮かべて立っていた。

 

「よくやったフィリップ。お前から聞いたときはまさかと思ったが……本当に魔女だったんだな、クローディアさまは」

「あんな人畜無害な顔して魔女とはねー、いや俺も驚いたわ。お手柄だなフィリップ」


 アベルとジョージは口々にフィリップを褒め称えた。


「大神官の方はすでに近衛騎士を向かわせた。神殿の内部がどこまで汚染されているのか、処刑する前に洗いざらい白状させねばならん」

「まーどう考えても黒幕はあいつの方だからなー。一体なにを企んでやがったのか、この俺が直接尋問してやりたいくらいだぜ」


 兄たちの声を聞きながら、フィリップはいいようのない不安と後ろめたさに苛まれていた。泣き叫ぶクローディアの声が耳にこびりついて離れない。


 クローディアは本当に邪悪な魔女なのか。

 もしや自分はとんでもない間違いを犯しつつあるのではないか。

 今すぐにでも聖騎士団を追いかけて、クローディアを解放するべきではないのか。

 今ならまだ間に合う。

 今ならまだ。


 ――フィリップさま、魔性の存在にどうか惑わされないで。お心を強く持ってくださいませ。


 ふいに聖女イザベラの声がフィリップの脳裏によみがえった。

 美しく聡明で、奇跡の力を持った聖女イザベラ。

 彼女とは別れ際に、クローディアを追放したら、正式に婚約しようとひそかに約束を交わしていた。

 フィリップがイザベラと幸せな未来を築くためにも、クローディアは魔女でなければならないのだ。


(そうだ。クローディアは正真正銘の紛れもない魔女だ。イザベラがくれた指輪が証明してるじゃないか。なにを迷うことがある)

 




 結局クローディアは当初の予定通り、魔獣の森に追放された。

 三人の王子が病床の国王から呼び出されたのは、それから数時間後のことだった。



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