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~素質~

 

「んー、これは間違いないねぇ……」


 エミリアの魔力検査を見てなにやら考え込んでいる学院長。


「若い頃の賢者と似通った魔力だね。」


 賢者と似た魔力?

 賢者の英雄譚を本などで読んだけど、どんな魔法でも使いこなすことができて1人で一国の軍隊並の兵力になるらしい。 そんな賢者と同じ才能、能力がエミリアにある?


「あんたの出身はどこだい?」


「えっと…ホルン村です。」


「んー、ホルンに賢者がいるとは聞いたこともないしねぇ。 突然変異でとてつもない魔力の素質を授かったと言うことかの…」


「あの…それは喜んでいいことなんですよね?」


「そうだねぇ、人類にとって喜ばしいことは確かだけど、あんたにとってはどうだろうねぇ。」


「それはどういうことですか?」


「大きな力にはそれなりの価値があるってことだねぇ。 その力をどうしても手に入れたいと思う連中がいるということだねぇ。」


 つまり、魔法の才能は生まれた時からある程度決まってしまっている。 その力が大きければ大きいほど手に入れたいと思う国、軍隊がいてもおかしくないという。


「まだ未熟なうちに手駒にし、洗脳して兵力にしたいと考える連中がいるんだよねぇ。 こんな魔物が溢れかえっている世の中で国1つの兵力にするにはもったいないと私は思うけどねぇ。」


 大きな力を持つなら大陸を回って魔物に苦しめられている人たちを救う方が正しい力の使い方ということか…


「まぁ、何にしてもあんた自身にはそれだけの価値があるってことを覚えておくんだよねぇ。」


「分かりました…」


 エミリアは少し不安そうな表情をしている。 それもそうだろう、突然自分は希少な力を持っていることを知らされ、誰かに狙われることがあるかもしれないと言われれば不安にもなる。 ましてやまだ12歳の少女なのだから。


「大丈夫だよ。 無理やりエミリアのことを連れていくような奴がいたら僕も一緒に戦うから…」


 盗賊に襲われた時もそうだが、もしエミリアを狙う連中がいれば今の僕では守れない。 こんなことを言っても気休めにすらならないかもしれない。 たとえそうだったとしても、そう言わずにはいられなかった。


「ありがとう、心強いよ。」


 これから先は特に問題なく魔力検査は進み、次はクラス移動となった。 クラスは4つに別れていて1つのクラスに約30人いる。 僕とエミリアは運良く同じクラスになることが出来た。


「よし、ここだ。 中に入ってくれ。」


 先生に連れて中にはいると、教室内は半円状になって長い机が段上に配置されていた。


「まぁ、とりあえずどこでもいいから席に着いてくれ。」


「とりあえず真ん中の方に座ってよっか。」


「うん。」


 よそよそしくも各々好きなところに座った。


「よし、えぇ、俺は君たちの担任になったクラウ・ソルダスだ。」


 金髪のオールバック、瞳は黄色で体格はスラッとしており細くも太くもない引き締まった感じだ。 年齢は30手前くらいだろうか。 顔は少し厳つくて怖い。


「これから君たちにはこの学院で様々なことを学んでもらう。 まだ俺も君たちのことを何も知らない。 だから、これからよく知り立派に育て上げるつもりだ。 俺の授業は厳しいからちゃんとついてこいよ。」


 先生は笑顔でそう言った。 厳つい顔だと思っていたが笑顔はとても柔らかくて意外だ。 後に知ることになるがこの笑顔に何人かの女子はもっていかれていたらしい。


「今日は紹介だけで授業はない。 別にこのまま寮に向かってもいいが、少しだけ周りの面子と話す時間を設ける。 今のうちにどんな奴がいるのか把握しておけ。」


 そう言われて周りを見渡す。 男女比率は少し男の方が多いだろうか。 第二学院ということは周りの子たちは低級貴族か平民がほとんどだろう。


「それでは自己紹介をさせて頂くわ!」


 青いフリルのドレスを着た青眼ドリル金髪少女が立ち上がった。


「私は由緒正しきナルカナフ家の一人娘! ナーヴァ・ナルカナフです! 火、水、風の3属性適正があります! 私とパーティを組みたいと言う方はおっしゃいなさい。」


 周りからはチラホラと拍手の音が聞こえたがみんな呆気に取られていた。

 それを他所に僕らに話しかけてくる子がいた。


「ねぇねぇ、あなた。」


 ショートカットの青髪に薄い青眼をした可愛い幼めな顔立ちをした美少女だ。


「…? 私?」


「そう! あなた賢者の卵よね?」


「えっ!? そんな賢者の卵なんて…私なんてただの平民の一般人だよ。」


「ふふ、あれだけの素質を持ってるのに謙遜するところ私は好きよ。 私はティル、平民生まれだからあなたと一緒ね。 これからよろしく。 そっちのあなたも。」


「僕はエルフォード・ラインハルト。 みんなからはエルって呼ばれてるよ。 よろしく、ティル。」


「あっ、貴族だったのね。 彼女とタメ口だったから平民だと思ってた。」


「あぁ、敬語は使わなくていいよ。 貴族って言っても位は高くないし、クラスメイトに敬語で話されるのはちょっと気が引けるから。」


「ふふ、わかったわ。 よろしくね、エル。」


「あっ、私はエミリア。 よろしく。」


「えぇ、よろしくね。」


「よし、そろそろ時間だ。 寮に向かうぞ。」


 先生に連れられ寮に向かう間もティルと話をした。 とてもフレンドリーで話しやすく、良い子だと思う。


「良かったね。 さっそく友達が出来そうで。」


「うん!」


 様々なことがあり不安がっていたエミリアの顔に笑顔が戻った。


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