~入学~
「さ、到着したよ。」
盗賊に襲われたもののお姉さんに護衛してもらい無事にサンダリアに到着した。 今まで通ってきた街や村の何倍、何十倍という大きさがある。 建物もレンガで出来ているものが見受けられる。
とりあえずこれから宿を探さなければならないが、これだけ大きければどこへ行けばいいかも分からない。
「御者さんお金はいくらですか?」
「いや、今回はいいよ。 あんたには盗賊から守ってもらった恩もあるから。」
僕たちは何もしていなかったが子供から貰うのも気が引けるということで無料になった。 見た目は少し怖かったが気前がいいお兄さんで助かった。
「君たちはこれから宿探し?」
「そうですね。」
「んー、それなら街の東の方に行くのがいいかな。 西側は商業が盛んで東側は宿舎や学院があるところになるわ。」
「わかりました! 色々とありがとうございました。」
「いいのよ。 人々を助けるのが騎士団の役目だからね。」
また頭を撫でられる。 お姉さんに撫でられるのは悪くない。 むしろ嬉しい。
「副団長! こんな所にいらっしゃったのですか!?」
なにやらバタバタと鎧を来た男の人が走ってきた。
副団長って言っているし騎士団の人かな。
「どうしたの? そんなに慌てて。」
「どうしたの?ではありません! 勝手に囮捜査をするなど! もしもの事があったらどうするのですか!」
「無断でやったのは悪いと思ってるけど大丈夫よ。 この通り盗賊を何人か捕まえたわ。」
「それは凄いですが、もう少しご自身の身分を弁えてください!」
「もううるさいわねぇ。 わかったわかった今度から気をつけるからこの子たちの前で説教はやめてちょうだい。 かっこいいお姉さんイメージが崩れるじゃない。」
お姉さんはどうやらいけないことをしたようだが僕たちを助けてくれたのは確かでとてもかっこよかった。
「ここでお別れになっちゃうけど学院でしっかり勉強してね。 そして卒業した後は私の騎士団に来て欲しいな!」
エミリアは首をコクコクと振っていた。 僕は父さんとの約束もあるから難しいかもしれない。
お姉さんと別れてから教えてもらった方へ歩くと宿を探すのはそれほど苦労しなかった。 今までの宿と比べると値段もそれほど高くないのにお風呂が付いていて立派なものだ。 さすが王都。
もう夕食も食べて特にすることがなくなった。
「明日は入学式だし早く寝とこうか。 寝坊したら大変だしね。」
「そうだね。 私緊張して寝付けないかも。」
少しだけ会話を交えてから互いの部屋に戻り眠りに入る。
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「エミリアー。」
扉をノックして名前を呼ぶ。
「ん、準備出来たよ!」
「よし、じゃあ行こうか。」
宿屋の主人に聞いたところ宿から学院までは歩いて20分ほどにあるらしい。 外観は白く、明らかに他の建物とは雰囲気が違うとのことだ。 また第二学院は東北側で第一学院は東南側にあるため間違うことも無い。
学院に近づくにつれて大きな荷物を持った同い歳くらいの子をよく見かける。
「みんな学院に入る子たちかな。」
「たぶんそうだと思うよ。」
前を歩いていく子たちの後ろについて行きやっと学院が目に入る。
「うわぁ、あれがそうだろうね。 あの白いの。」
「えぇ、思ってたよりもすごい…」
でかい白い校舎、タイル張りになっている道、噴水がある中庭、設備の整った訓練場、離れにある宿舎。 確かにここだけ別世界の様に感じる。
正門を抜けると上級生たちが入学式の会場である訓練場内の決闘場まで案内してくれた。 ここは平らな円形の広場で周りは壁で囲まれている。 その上から観戦できるように席が用意されており、上級生と思われる人たちが座っている。
既にかなりの人数が集まっていて、100人近い新入生がいそうだ。
「ちょっと緊張してきたかも…」
「大丈夫だよ。 きっと友達も沢山できる。」
「うん…」
しばらく待っていると少し背が曲がったおばあちゃんが現れた。
「えぇ、皆さんこんにちは。 私はここの学院長をしているウリエル・ヴィン・フォーマルハウトです。 これから皆さんにはこの学院でしっかりと勉学に励んでもらい、立派に卒業してもらうことが私の望みです。 とりあえず私からはそれだけです。 学院生活を存分に楽しんでください。」
学院長の話が終わるとまた別の会場に案内される。
そこには水晶を持った先生方が待機していた。
「それでは今から皆さんの魔力検査を行います。 この水晶に手をかざすことで光の強さと色により魔力量と質が分かります。 それでは1人ずつこちらに来てください。」
赤色に光る人、緑に光る人、様々な人が見受けられる。
自分の番がやってきた。
「こちらにかざして下さい。」
言われたとおり手のひらを水晶に向ける。
光は差ほど強くないが黄色と緑色が入り交じっている。
「おぉ、おめでとう。 魔力量はあまりないが君は2属性持ちだ。」
「2属性?」
「あぁ、君の場合だと雷と風の魔法が使いやすいはずだよ。 両方とも攻撃に特化した属性だね。」
「へぇー。」
今まで剣術の練習ばかりしていたため魔法の話をされてもイマイチピンと来ない。 これは凄いことなのか?
「因みに、2属性は珍しいですか?」
「そうだねぇ、10人に1人くらいかな。」
「なるほど…」
まぁ、1属性よりは2属性の方がいいという程度だろう。
「次は君の番だね。」
「はい。」
今度は後ろにいたエミリアが手をかざす。 自分の光も弱いわけではなかったがエミリアの光は日にならないほど大きい。 さらに何色もの光が入り交じっている。
「これは……学院長を呼んでくれ!」
エミリアは周りの喧騒にキョロキョロと不安そうにしている。