日常回2(裕太と凛のすれ違い)
裕太っ!もっと積極的に行け!
『キーンコーンカーンコーン♪』
みんなが疲れに伏せようとする6時限目。
というか大体の人は伏せてる。
毎週のことではあるが一番個人的に退屈な英語の時間がやってきて、終わりました。
「と、言うことで今日の授業は終わり!寝てるやつは起きろー。時代は変わって英語が活躍する職場なんてほとんどなくなっちまったから『英語は将来使う機会なんてないから無駄』とか思ってるかも知れないが、お前らは期末ですぐ使うからな?期末を乗り切らないと将来が来ないぞ?あ、日直挨拶。」
う、なかなかに痛いところをついてくるじゃないかか……期末心配だなぁ
まぁ、寝てはいないから授業についてはいける。成績は上位に入らないけど。むしろ下から数えた方が早い。
視界の隅に寝ているタローが見える。
あいつ、意外なことに英語がペラペラなんだよな。
いつも寝てるけど。
「きりーつ、気をつけー」
今日の日直はチャラいやつだ。
名前は……覚えてない。
ただ授業も放課の間もずっとうるさくて周りに迷惑をかけているくせに成績が良い。
ふざけんな、授業内容が聞こえづらかっただろう。
心の中でめっちゃ愚痴ったのでスッキリした。
とりあえず挨拶しよう。
【ありがとーございましたー】
「はい、ありがとうございました。宿題は教科書の36ページの予習だから忘れないように」
この英語の先生は優しい。予習だけでオッケーなのだ。ガトリングが如く宿題プリントを配りまくる数学の担当とは大違いだ。
「あぁ、それと太郎君。数学の担当の先生方が君をお呼びだよ。」
「マジですか…」
「マジです……」
太郎や、強く生きるんだよ。
そんな眼差しを太郎に向けていると恨めがましい眼で見られた。
いや、自業自得でしょう。
さて、今日も凛の家に行きますか。
……結局この前ゲームの中で言われた言葉が気になって仕方がない。
バイトでも珍しく納得いかない内容になってしまった。
失敗はしていないがやりきった感がしない様な仕事をしてしまった。
『毎日家に来て…あーんしてくれない?ダメ…かな?』
なんというか…凛がすごく可愛く見えた。
もともと美人だとは思ってたけどああいう顔は反則だよな。
正直、いつもの様に接することができるか心配だ。
俺は靴を下駄箱から取り出しながらそんなことを思う。
別に毎日行くのは大した苦労じゃない。
バイトのシフトはもともと少し遅めだから1時間くらいなら大丈夫だ。
別に料理を作るのだって構わない。
むしろ凛が喜ぶ様な料理を作ってやりたい。
野菜抜きの肉増し増し……あぁ、ダメだな、甘やかしてしまいそうだ。
野菜抜きの料理を出すと凛の体調にあまり良くない。
自転車に乗り校門から出る。
今残金はどれくらい残っていただろうか。
スーパーに寄って買い物したいのだが……おそらく足りるだろう。
凛の顔を思い出す。
やっぱりたまには肉増し増しの料理を作ってもいいかもしれない……
今日はバイトも入ってないよな。
今日くらい凛の家にちょっとくらい長居してもいいだろう。
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『キーンコーンカーンコーン♪』
学校の鐘がなる。
この前ゲームの中で裕太に言ってしまった言葉のせいで裕太にちょっと引かれているかもしれない…
朝の挨拶もいつも顔を見て言ってくれるのに今日は私の顔を見ることもなくそっけないものだった…
授業にも身が全く入らなかった。
先生に当てられても珍しくぼーっとしていて『体調が悪いのか?保健室に行くか?』と心配されてしまった。
裕太がカバンのなかに荷物をささっとしまい教室から私より先に出て行くのはいつものことだ。
いつものことなんだけどなぜか少し悲しい気持ちになった。
いつもより早くカバンのなかに荷物をしまい教室から出る。
いつもは裕太が待ってくれている下駄箱のある場所へ私は向かう。
そこで裕太が待っているはずだと思い歩くスピードを少しあげる。
下駄箱に着いた時、裕太は自分の靴を履き一人で歩いて行くのをみた。
振り返りもせず真っ直ぐ駐輪場に歩いて行ってしまった。
私が置いていかれるようで……胸が締め付けられる様な痛みがした。
私は急いで靴を履く。靴紐を手早く結び追いかける。こんな時に限って上手く指が動かない。
靴紐を結び終えると早歩きで駐輪場へ急ぐ。
もしかしたら今日は駐輪場で待っているのかもしれない、そう思って。
だけど駐輪場には裕太の自転車はもうなかった。
裕太は私のことを待ってくれてはいなかった。
裕太にとって私はただの女友達だったのかな……私は恋人じゃなかったのかな……もしかして、いつも私に向けてくれた優しさを別の人に向けてしまうのかな……。そう思うと少しだけ涙が出て来た。
学校で泣きたくはない。涙を見せたくない…
私は自転車に乗り家に向かった。
気づいたら家の前に着いていた。
……家に着くまでのことをほとんど覚えていない。
ゆう……会いたいよ……
今までゆうと過ごした思い出を思い出してしまう。
思い出すと辛いのに…思い出したくないのに…
「私の初恋は終わったんだ……」
そう思うともっと悲しくなって来た。
涙が止まらない。
きっと今私はひどい顔をしているだろう。
そんな自分が情けない、でも今はとにかく泣きたい気分だった。
テレビも電気もつけてない部屋でとりあえず泣きたい気分だった。
泣けば泣くほど悲しくなった。裕太に会いたくなった。そんな自分が嫌になって一回寝ることにした。
エアコンをつけて、制服をそこら辺に脱ぎ捨てる。
下着姿のままベッドの上に転がった。
それでもなかなか気持ちは落ち着かなくて眠れなかった。カーテンも締め切って真っ暗な部屋の中でしばらく泣くとだいぶ落ち着いて来た。
それでもやっぱり胸が締め付けられる様な気がして私はそれを押さえ込む様に眠ることにした。
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いやー大勝利だった。
まさか鶏肉があんな値段で売っているなんてなぁ。
タイムセールなんて久しぶりだったけどなんとか鶏肉を手に収めることができた。
凛の家の冷蔵庫の中にはまだレモンが残っているはずだし野菜は…おそらく凛のことだから残っているだろう。
唐揚げにレモンは邪道かどうかわからないが凛の好きな様に食べてもらえれば嬉しい。
いや、俺が凛に食べさせるのか。
思わずにやけてしまうくらいには今の俺は上機嫌だ。
気持ち悪いと言われても今なら少し睨む程度で許せる気がする。
……普段ツンとしている感じの凛があんなに甘えてくるとは思わなかった。
ゲームのおかげであんな凛が見れたとするなら、おっさんナイスだ。
今度バイト先に来た時、一品だけ手の込んだ料理にしてやろう。……そんなことしたら店長に怒られるか。
気づいたら凛の家の前にいた。
凛の家に着くまでのことは覚えていない。
凛のことで頭がいっぱいだった。
玄関のインターホンを押さずに玄関のドアを開ける。
開いた。本来なら鍵がかかってないといけないと思うんだが。
相変わらず不用心で心配してしまう。
……それにしても暗い。真っ暗だ。
ブレーカーでも落ちたのだろうか?
でもブレーカーが落ちたのなら凛がすぐに対応しているだろう。
どうしたんだろうか。
リビングに出るがカーテンは締め切ってあるし電気はついてないしで暗い。
どうやらエアコンだけはついているらしい。
とりあえず電気をつける。汚れてないいつも通りの部屋だな…?汚れていない……部屋なんて久しぶりだな。凛、体調が悪いのか?
これだと多分物置になってる2階も綺麗なままだろう。
リビングを見渡すと床に凛の制服が脱ぎ捨てられていた。これだけは相変わらずか。
とりあえず洗濯機のなかに入れておく。
どういうわけか凛は制服を7着持っているので毎日洗濯しても問題なかったりする。
俺は…ズボンは1着しか持ってないから週末しか洗えないし、上は2着しか持ってないから毎日洗濯して2着を着まわしてる感じだ。
凛の制服は冷たかったので脱ぎたてほやほやなんてことはないだろう。
おそらくパジャマを着てネトゲでもやってるに違いない。
どうせなら驚かせてやろう……とその前に食材を冷蔵庫に入れないと。凛の喜ぶ顔が楽しみだ。
食材を全部入れ終わった。よし驚かせてやろうじゃないか。ただ、ネトゲの邪魔だけはしないように。
邪魔するとちょっと不機嫌になっちゃうからな。
凛の部屋の扉を音がしない様にそっと開ける。
……暗い?どういうことだ?ネトゲの明かりはどこにいった?
俺は凛の部屋に入り電気をつける。
裸……じゃなくて、なんで下着?
うつ伏せで寝ている凛はブラとパンツしか履いていなかった。一瞬裸と見間違えた。
今日は黒か。というかレースとか付いてて可愛いやつじゃん。……うん、見ない様にしていることが一つある。それは裸と見間違えた理由でもあるんだけど。
ブラのホックが外れてるんだ。
これは何をどうするのが正解なんだ?
ブラのホックを止める?
凛が起きたら幻滅されるだろ。
凛を起こす?
下着姿を見るなんて…と幻滅されるかもしれない
じゃあ無視するか?
でもお腹を冷やすのはよろしくない。
じゃあブランケットでもかけるか。
これならセーフだろ。
もし起きてもブランケットで隠れるし。
俺はブランケットを取りにリビングまで戻り、収納スペースの中にしまってあった比較的薄めのブランケットを取り出す。
凛の部屋に入って、凛に薄めのブランケットをかける。厚いものだと凛が汗をかいて脱水症になるかもしれないからな。
「んん…ゆ、う?」
げ…凛が起きた。
えっと…あれ?これもしかして……
ブランケット?→もしかして下着姿見た?→幻滅
やっちまった!……いやブランケットをかけた瞬間は見られてないし寝起きの凛は比較的ボケてるから大丈夫。
とりあえずそれっぽい言い訳を考えよう。
「ゆ、う?…本当にゆう、なの?」
凛が体を起こす。ブランケットは上手い感じで凛の体を隠している。いいぞブランケット先生!
そのまま凛に張り付いていてくれ。
剥がれた瞬間俺が凛に幻滅されるから!
それにしても凛の目元が赤い。目元を擦ったみたいな感じだ。
「凛…泣いたのか?」
「べつ、に泣いてないよ、ゆう、ぎゅぅってしてくれない?」
凛が両手を前に突き出すがブランケット先生は凛の体を…主に胸のあたりをしっかりと隠している。
ブランケットがなければ俺が死んでいた…
というか『ぎゅぅ』?え?何ですかそれは?
それは…ハグということですか?
あの…パジャマなり制服なりを着ていれば俺もべつにハグしてもいいかなって思いましたよ。むしろハグしたい。
でも今はダメでしょ!凛は実質ブランケットとパンツしか装備してないからね?!
「もしかして寝ぼけてるのか?」
まぁ寝ぼけてるんでしょうが思わずそう聞いてしまった。今の凛の顔がヤバイくらいに可愛い。いつもよりも可愛い……俺は今、夢を見てるのかもしれない。
「べつに、寝ぼけてなんか……っ?!なんで裕太がここにいるの?」
ほらね?どうやら寝ぼけていたらしい。
でもどうして泣きそうな顔をしてるんだよ。
さっきみたいな顔をしてくれよ。
「なんで泣きそうな顔をしてるの?」
「だって……この前ゲームの中で言った言葉ですごく引いたでしょ?朝、挨拶の時目も合わせてくれないし……なんか、ゆうがそっけないし……私のことを置いて帰っちゃったし……私、ゆうに嫌われちゃったのかなって思ったら悲しくて」
ゲームの中で言った言葉?めちゃくちゃ恥ずかしいけど嬉しいと思ったよ。
朝の挨拶のとき?照れくさいし凛のことが気になってうまく顔を見れなかっただけだよ。
凛のことを置いて帰ったのは本当にうっかりしてた。
凛に何食べさせようかずっと考えてたから…
つまり凛は誤解をしているのか。
俺のせいだな。
「凛、俺の話を聞いて「やだっ聞きたくない!」
凛が可愛い……でもこの誤解だけは解いておきたい。
そんな誤解されたくない。
「凛、話を……」
「ゆうと別れたくない。私はゆうが好きなの。大好きなの。ゆうの全部が好きで私の全部を好きになってほしいの!」
初めて聞いた。これまで本当に凛は俺のことが好きなのか気になってたから嬉しかった。
「凛っ!話を聞いてくれっ!」
「別れ話はやめて……ちょっと気持ちを整理したいの……だから今は」
「俺も凛のことが好きなんだよっ!」
「……本当なの?」
どうせなら俺も本音をぶちまけてやろう。
せっかくの機会だし。凛が言ってくれたのに俺が言わないのは違う気がする。
「俺は凛のことが全部好きだよ!笑ってる凛も好きだし、怒ってる凛も恥ずかしがってる凛も全部好きだよ!今まで自信がなかったからはっきり言葉にはできなかったけど……永田 凛さん。僕の恋人になってください!」
プロポーズまがいのことをした。
めちゃくちゃ恥ずかしい……けどこれが俺の本音だ。
耳まで真っ赤になってるかもしれないし、めちゃくちゃ早口で不恰好だったかもしれないけど、この気持ちに嘘偽りはない。
「…………」
返事がないのはきついな……と思ったら凛の顔が真っ赤になっていた。耳まで真っ赤だ。
でも目に涙を浮かべている。
「ごめん…なさい…」
え?……俺、振られた?
ちょっと待って……状況が理解できない。
俺は告白されて?告白を返したら……振られた?
どういうこと?
「嬉しくて……涙が出て……返事がちゃんとできない……から……。うん…落ち着いた。
私も 佐藤 裕太さん。私はあなたのことが大好きです。私の恋人になってください。」
振られてなかった……なんだ、嬉し涙か。
それならよかった。できれば笑って欲しかったけど。
凛の顔が真っ赤だ。俺の顔も真っ赤かな?
「凛の顔、真っ赤だよ」
「ゆうも真っ赤だよ……ねぇぎゅぅってして?」
「うん、わかった」
僕は凛にハグをした。
視界の隅にブランケットが落ちるのを見……
ブランケット先生?!
最後の砦、ブラ師匠は?
落ちていないことから察すると…もしかして俺と凛との間に挟まってる?
俺は悟られないようゆっくりと視線を落とす。
ブラのホックが揺れていた。
つまり凛の胸に一応付いている状態なんだな。
これハグやめたら外れる奴だな。
というか下着姿の凛とハグしてるってやばくないか?
俺はいいとして凛が後から悶えそうだ。
俺としては……至福です。ありがとうございます。
それにしても凛っていい匂いするな……
俺は考えることをやめとりあえず凛を抱きしめておくことにした。
あとは凛がこの状態からの脱出方法を見つけてくれるさ。
とりあえずブラのホックが外れていることに気づいて欲しい。
それまで抱きついていよう。あぁ……至福っ!
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ゆうに告白された。ゆうに告白された。
ゆうに告白された。ゆうに告白された。
その事実が私の頭の中をぐるぐると駆け回り気づけば私はゆうにハグをしていた。
私より少し高い身長のゆうの首あたりが目の前に来る。ゆうの顔を見ることはできないけど多分真っ赤だ。
私も多分真っ赤。
ゆうの鼓動が私に伝わる。
すごいドキドキしてる。心拍数が高い。
私も多分そうだ。私がドキドキしてるのをゆうに伝えたくて私は強めに胸を押し当てた。
やけに服の感触を感じる……そういえば服脱ぎっぱなしだったから、ゆうに怒られちゃうかな。
服?胸?ブラは付いてるけど後ろからの締め付けがない?ん?ブラ?
ということは私は今ほぼ全裸で裕太にハグしていると……
そう思うと顔がもっと赤くなるのが自分でもわかった。とりあえずまだゆうとそういう大人なことをするつもりはない。ないから…とりあえずブラのホックを止めよう。
よし止めた!じゃあハグもやめよう!
これ以上は私の心臓がもたないよ……。
私がハグを止めるとゆうもハグをやめてくれた。
ふーっ、落ち着け私。
けど裕太は少しかがんで私の顔の前に顔を近づけた。
「裕太、ちょっと顔が近いよ…」
「……………もういいや」
裕太が少し悩んだあと、吹っ切れたような顔をしたと思ったら裕太の顔がもっと私に近づいて私の唇に柔らかい感触を感じた。
ゆうの顔が離れていく……
そっと触れるようなキスだった……。
ゆうとキスしちゃった……。
私の始めてのキス……。
「じゃあ料理を作るからその間に服を着てね?」
もしいうことを聞かなかったらもっと何かしてくれるんだろうか……。
ゲームのことを思い出すとそんなことを期待してしまった。
でもゆうの言う通りにパジャマを着てリビングで待つことにした。
本当にゆうとキスしちゃったんだ……。
そう思うと自然ににやけて、笑顔になってしまう。
でも誰にも見られないし、ゆうになら見られても別にいい。
「ご飯できたぞ……」
「どうしたの?」
「凛、絶対外でその顔はするなよ」
「え?…うん」
今日のご飯は唐揚げらしい。珍しくお肉増し増しだ。
でも私の箸がない。しかもいつもは私の対面に座る裕太が今日は私の隣に座ってる。
さっきから心臓がうるさい。ずっとドキドキしてる。
「ふーふー…はい、あーん」
裕太が笑顔で唐揚げを箸で掴んで私の方へと向ける。
私は恥ずかしいと思いながらも唐揚げを噛みちぎった。
食べづらいし、恥ずかしいし、なんでそんな要求をしちゃったんだろう。
ゆうの唐揚げは少し大きい。だから噛みちぎらないと食べられない。でも裕太はお肉を柔らかく調理しているので嚙みちぎりやすい。
「うん、会心の出来かな」
裕太は私が口をつけた唐揚げを食べていた。
今更、間接キス程度でとは思ったものの……意外と恥ずかしいかも。
「ふーふー……はい、あーん」
すごく、本当に恥ずかしい。これは嬉しいとかじゃなくて本当に恥ずかしい。
「凛、可愛い……」
裕太が笑顔で唐揚げを……。美味しいけど……。食べづらいし何より…。
「食べないなら口移ししようか?」
裕太がすごい積極的になってしまった……。
「もういいよ!自分で食べるから!」
私は台所に向かい箸を探す。
……ない。
……ない。
見つからない!
あれ?最後に自分で箸を取り出したのっていつだっけ?思い出せない。思い出せる一番最後に箸を取り出した記憶が小学校6年の時だなんて……。
「裕太……箸どこ?」
「俺の箸使う?」
「もうそれでいいよ」
よく考えずにそれでいいよと返事をしたけど、これってよく考えたらこれも間接キス……
結局、裕太が帰るまで私の胸はドキドキしっぱなしだった。
だから早く帰ってほしいと思ったけど、裕太が帰ったら、それはそれで何か物寂しい気がした。
もうちょっと一緒に居たかったなぁ……。
裕太の「口移しする?」は冗談で言っています。
がもししてほしいと凛が言えばしていたでしょう。
めちゃくちゃ好きな女の子がほぼ下着姿で『あなたが好きだ』と告白した後ハグを迫ってきても襲わない裕太君。
ヘタレなのか紳士なのか。
ちなみに凛の家のエアコンは全ての部屋のものがが連動するようになっています。