ふつうにアバター作成
まだ冒険は始まったばかr
始まってすらいない!
ジイちゃんが持ってきた段ボールを1つ二階の自室へと持っていく。段ボールのガムテープを丁寧に剥がし開封する。
俺はバリバリ剥がすタイプの人ではない。
そうした開けたダンボールにはヘッドギアと説明書、その他諸々がしっかり入っていた。とりあえず全部丁寧に取り出し説明書をよく読む。説明書を見ながらもう一度欠品チェックをする。
欠品があったら大変だからチェックをするが欠品はないので一安心。そして説明書通りに機材をセットした。ヘルメットみたいな機材であるヘッドギアをかぶる……ちょっとワクワクしてきた。このワクワク感は新しいゲームを買った時に似ている。いや、実際に新しいゲームだもんな、これ。
よし、準備は整った。では、いざゆかん!電脳世界へ!
ちょっと興奮し過ぎたな……誰も見てないよな?周りをキョロキョロするが人はいないと思う。本当は気配で察知するのが一番なんだろうけどまだその域には至っていない。
ジイちゃんの背中が遠いぜ。
普段ならこんなに興奮しないと思うんだけどなぁ……ん?そうか、あれか、これが中二病か。俺は中二病を取り返せたのか。
いらねぇ。欲しかったのはそっちじゃない。青春を寄越せ。
……感傷に浸ってる場合じゃないな。落ち着け。もう一度説明書を読んで落ち着くんだ。ヘッドギアをサッと外す。どうやらセットアップとやらをしないといけなかったらしい。
そして諸々の操作をしてセットアップを終えると、もう一度説明書を読む。最終確認を済ませて俺はもう一度ヘッドギアを装着、ベッドギアは音声入力で起動するらしい。なんか近未来的でカッコよさを感じる。
起動用の言葉は……『ダイブ』というらしい。
「ダイブ」
その言葉と同時に体から感覚がなくなり視界は白く染まった。体が浮くような感覚があるとかネットでは言っていたがあれは嘘だな。どんな感じかというと寝落ちをする感覚だ。
気持ちがいい。
声が聞こえる。
「ようこそ。セカンドワールドオンラインの世界へ。アバターの設定とチュートリアルを担当させていただく シア と申します。」
目の前に20歳くらいの女性と『俺』が浮かんでいた。
俺のアバターは素っ裸でなくインナーを着ている、のはありがたいけど自分の姿を見ると……なんとも言えない気持ち悪さを感じる。えぇとなんて言ったかな、同族嫌悪だったかな?そんな感じのあれ。
「よろしくお願いします」
とりあえず無難に返しておく。挨拶は大事。最初の印象でその後の付き合い方が変わるらしいからな。AIに印象って……関係ない気がするが使い分けようとすると結構ミスするからさ。俺はそんなに器用じゃないし。
それに誰にでも礼儀は持つべきだと思う。 この前、酔っ払いが電柱にぶつかって挨拶してたのを見たときは流石に笑ったけどね。昼から何やってんだって。
「問題はないようですね、では右手を目線の高さに上げてから、『メニュー』と言いながら下げてください」
挨拶は無視された。ま、仕方ないか。しょうがないじゃない、AIだもの。でAIのシアさんの言う通りにするとパネルのようなものが出てきた。右手でメニュー。覚えておこう。
……ところで右手が吹き飛んだらどうするんだ?ま、そんなことはないか。ゲームだし。
「ではそのメニューであなたのアバターを設定してください、ただし体格はあまり変更することができません。」
ナ、ナンダッテー。性別は変えられるのか?!しかも、あまりってなんだ、アバウトすぎないか運営さんよ。その後よく探してみたもののパネルには性別などと言う項目はありませんでした。
何故それを気にしたのか理由は聞かないでくれ、まぁ大したことじゃないし、べつにいいか。
その理由は性別が変える機能があったらネカマが出るかもしれないじゃないか。それで親友をからかってみたかったんだよ。それにしてもあいつ……なんでネカマに何回も引っかかるんだろうか。
あと純粋に俺の女性アバターがどんな感じになるのか見てみたかったというのもある。
とりあえず髪と目は青色に、それ以外はリアルモジュールというものがあるのだがそれを使うことにした。
リアルモジュールと言っても多少はアニメチックになっていたりするので身バレの心配はいらないだろう。バレても何とかなる、多分。
リアルモジュールにした理由?ただ設定がめんどくさかっただけです……だって顔とかパーツだけでめちゃくちゃあるし、こだわり始めたら多分終わらない。
種属という項目もあったが俺はヒューマにした。
ここで種属の特性とまとめ。公式発表だから信用性は高い。
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ヒューマ 『平均的なステータスを持つ
よく言えば万能 実際は器用貧乏
なににでもなれる可能性があると信じたい』
獣人 『 物理が得意なものが多いが違うものもいる。
種属の中にも犬型、猫型などとあり一概には言えない』
エルフ 『みなさんおなじみのエルフ。
魔術が得意なステータスになりやすい』
ドワーフ 『手先が器用その他は普通。
ちょっと足が遅い』
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ちなみにこれ、公式のホームページからの引用。
運営よ説明が雑だ。わざとなのか知らないがこのゲームは適当なところがありそうだ。信用性うんぬんの前の話だ。
俺はヒューマを選択した、運営に可能性がある、と信じられている種族だからというのもあるが、体格が違うと動きづらいかもと思ったからだ。ドワーフと迷ったが足が遅いのは色々と不便そうだし。移動が遅いってのはちょっと耐えられない。まぁ人並みであればオッケーということだ。
アバター作成完了のボタンを押す。
「アバターが完成しましたね。おめでとうございます。ではステータスポイント100ポイントとスキルポイント5ポイントを割り振ってください」
シアさん、突然喋るのは心臓に悪いです。
少し疑問があるので聞いてみる。
「ところでシアさん」
「はい、なんでしょうか?」
「この、知力とか筋力とかの値は何に影響する値なんですか?」
筋力っていっても脚力も入っているなら素早さいらないし防御とかちょっと意味わからないし……。
「ではご説明いたします。筋力とはその名の通り筋力でございます。この値が高ければより重いものを持ち上げたり引っ張ったりできます。ただ瞬発力にはあまり影響致しませんのでその点はご注意ください。また攻撃力と勘違いなさらないようご注意ください」
ほうほう……わからん。
「防御とは打たれ強さと持久力でございます。 ですがプレイヤーの皆様には息切れなどが実装されていないので持久力は関係ございませんね。防御の値が高ければ攻撃を受けてもあまりHPが減らなくなり、またのけぞりにくくなります」
ふーん。これは要らないな。
「素早さとは瞬発力でございます。それ以上でもそれ以下でもございません。それと多少は持久力にも影響を与えます」
へー。いらない。
「器用さとは武器や防具系のアイテムの制作の成功率と品質に大きく関わってきます。またアイテムの加工全般にも関わってきます。他には弱点を攻撃した際のダメージ倍率が高くなります」
これ、良さげだな。
「知力とは……そのまま知力でございます。低いと文字が読めません。文字を読むなら最低でも10は必要です。高ければより古い字や難しい書物も読めるようになるでしょう。また薬学系のアイテムや魔法道具の制作の成功率と品質に大きく関わってきます」
……うーん微妙。でも文字が読めないのはアウトだろ。
「精神は魔法の威力に直結します。あとは……気休め程度ですが魔法系の攻撃が効きづらくなります」
うん。これはいらない。
とりあえず割り振った。
目指すは生産職だし器用さに振っておけばいいでしょ、ハンマー振れないのは話にならないから筋力にもちょっと振って、文字読めないのも困るよなぁ、知力にも振っておくか。戦うのは……まぁ、なんとかなるだろ。
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ユウ
HP10 MP10 スタミナ10
筋力 10 防御1 素早さ 1
器用さ80 知力10 精神4
スキル
鍛冶LV1 スタミナ回復LV1
槌LV1 採掘LV1 細工LV1
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さていよいよ冒険……と鍛冶、生産だ。その前に採掘かなぁ?木を切り倒して木刀でも作るか?あとは……
「チュートリアルを行いますか?」
「っ!?……やります」
体がビクゥ!っと震える。急に声を掛けられるとびっくりする。というかすっかりチュートリアル忘れてたよ。ごめんよ、シアさん。
最初からHP.MP スタミナを除く各ステータスには1ポイントあります