表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/190

レッドプレイヤーの敵

嘘をつくのは心苦しい





裕太達に海外旅行に行くと告げた。

これでお別れ、なんてことには絶対にしないが裕太達としばらく会えないのは寂しい。


俺は自転車の荷台にカバンを乗せ落ちないように紐で固定する。ガッチリ固定したのを確認して自転車を押して校門へ向かう。



裕太達とはそもそも住む世界が違うだから話なんて合わないと思っていた。


どうやら自意識過剰のようだったが。


裕太達と馬鹿騒ぎする時間は楽しくて、俺が“普通の高校生”という役割(ロール)を演じる必要性なんてなかった。

舞と過ごす時間は嬉しいような幸せなような何とも言えないものだった。

実は舞には一目惚れで、どうにかして近づこうとしていた。凛には感謝したい。



最近の親父の手伝いの方は大したことのないものばかりだ。

たまには海外へ行くのもいいだろう。



舞達と別れる。

いつも通り、一人で帰る。

いつも通り、ペダルを踏みしめて進む。



今回も“いつも通り”にこなせばいい。



今回の仕事は大きい。

親父が意気込んで持ってきた仕事だ。

小さいものである訳がない。

仕事の内容にもよるが今回は大変だろうな。


赤信号で止まり後ろを振り返る。

犬を散歩している人や追いかけ合い騒いでいる小さい子供達がそこにはいる。

前を向くと信号は青になっていた。


地面から足を離し、ペダルを踏みしめる。


無心でペダルをしばらく漕いだ。

サイクルショップを過ぎて3つ目交差点を右へ。

その5つ先の信号を左へ。


そして大きめの橋を渡る。

その後右へ。


ようやく見えてきた。

川沿いに建っているなんの変哲も無いありふれた一軒家。


ここが俺の家だ。


玄関の軒先に自転車を止める……ことはせず物置の中に入れる。

荷台に縛り付けた荷物を降ろし、玄関へ向かう。


玄関を開けると靴が二足置いてある。

まぁいつものことだ。

俺は靴を脱いで揃えてから二階に上がる。


階段を上り廊下の突き当たりにあるドアを開ける。

そこはベッドと本棚と勉強机と椅子といういかにもショールームの『高校生の部屋』といった見た目だ。

そしてベッドの隣にVRの機材がそのまま置いてある。



今日、インしておきたいな。



カバンから教科書とノートを科目別に分け本棚にしまう。

実を言うと高校生の範囲はもう終わらせてある。

数学の補習を受ける理由は舞も受けると聞いたからだったのだが……ガセネタだったらしい。


いつも授業のとき寝ているのに、いきなり成績が良くなったら怪しまれるかもしれない。

だから補習を受けざるを得ない。いっそのこと『本気出した』とでも言えば何とかなるのだろうか。


一階に降りてリビングのドアを開けるとこれまたショールームみたいな部屋がいつも通り俺を迎える。


そこにダンディなイケメンがいる。

親父だ。服がタキシードなのは突っ込まない。


「久しぶりだな、今は“太郎”で良かったか?」


今は、というのは名前を変えたというわけではない。偽名でもない。ただ名前を何個か持っているだけという話だ。

全部の名前で違う戸籍を持ってる。

今では、戸籍に顔写真なんて使わないから助かる。


「久しぶり、親父。“太郎”でいいけど向こうに行ったら別の呼び方にしてくれ。親父のことはなんて呼べば?」

「そうだな……“ジョン”とでも呼んでくれ。お前のことは向こうに行ったら“ジャック”でいいか?」

「了解だ、親父」


俺が答えると親父はため息をついた。

やっちまった……ちゃんと名前で呼ぶべきだった。


「違うだろ?」

「ああ、ジョン。すまない」

「それでいい」


俺の家系は代々諜報員をやっている。

破壊工作や情報の収集、機密情報を盗んだりもするし……暗殺も請け負う。


もはや諜報員でもない気がするが俺の家系は代々そのような仕事をしている。


「ところで母さんは?」

「……今頃向こうのレストランで舌鼓を打ってるだろうよ」

「あ、もう先に行ってるんだ」

「先に準備をしておいてくれるそうだ。今回は全て現地調達じゃないだけマシだな」

「まぁ、それはそうだけどさ」


この前の大きな仕事はそんなのだったからな……

少し気が抜けたのかグゥと腹が鳴る。

親父と俺の腹から。


「ジョン、夜飯は?」

「これでも食っとけ、うまいぞ」


うぇ……軍用保存食(レーション)かよ。

マジかー、これクソマズいじゃん。


ん?……MAID in TODOだと?!


「ジョン!これは!?」

「革命だ。食ってみろ」


親父はすでに食い始めていた。

うまい……従来のものとは比較にならない。

だが……これに慣れてしまうと今までのヤツが食えなくなりそうだ。


「これに慣れたら今までのは食えなくなりそうだ……」

「そういうと思って今までのヤツも用意してあるぞ」


親父。これがやりたかっただけだろ。

我が家では食べ物を残すことは禁止されている。

親父ももちろん食うよなぁ?!


「「いただきます」」


ああ、いつもの味だ。


「マズすぎるっ!」

「食えるかぁっ!」



食べ物は美味い方がいいに決まっている。

懐かしいとかそういう感情は一切出てこなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



まずいものとうまいものの食べ比べを終えた。

腹はそれなりに膨れたのでもういい。


「今のうちに準備とやりたいことをやっとけ。明日の朝4時に出発する」


親父はもう寝るようだ。

寝袋を持っている。

タキシードで寝袋に入るの?

そんな疑問は顔に出さないが。


「わかった……移動方法は?旅客機に乗って普通に入国する?」

「もちろん、不法入国する。今回はクライアントが移動手段を用意してくれた。

乗り物はXRCV-21A……最新ステルス搬送機、のようなものだ」


へぇ……ステルス搬送機、のようなものねぇ……

親父が遠い目をしている。

俺もきっと遠い目をしていることだろう。


「それまだ試作機じゃねぇか!」

「いやほんと、プロトタイプのフライトテストのついでってどうかしてるよねぇ」

「テスト済みでもなかった?!」


すごく不安。まず飛ぶかどうかわからないし。

飛んでも空中分解とかあり得るし。


「開発途中でぶっつけ本番。理論上はマッハ3で俺たちをお届けできるらしい」

「あー了解した。パラシュートは?」

「もう用意してある」


流石親父。準備が早い。

というか何故それで承諾した。


「それじゃ朝の4時に」

「寝坊すんなよ」


親父は寝袋に入った。

俺は二階に上がる。

そしてベッドギアを装着。

そしてダイブする。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ちなみに今日ログインしておきたい理由はレッドプレイヤーの方々を狩らないといけないからだ。



そしてレッドプレイヤーの方々を狩る理由は……


目を開けるといつもの部屋だ。

そして視界の隅にクエスト発生の文字。


渋々それをタップするとクエスト内容が表示される。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


Special Mission:

第50回目『私の代わりに鉄槌を』

依頼人:

シア

クエスト内容:

ターゲット達の抹殺

備考:

いつも通りターゲット達にはマーキングしておきました。

いつも通り、ターゲット達は皆プレイヤーキラー、その中でもやりすぎちゃった方々でございます。

いつも通りこのクエストの最中は大まかなマップが表示されます。


報酬:

・50回目なので期待してよろしいかと。

・いつもお金だけで申し訳ございません。


成功条件:ターゲットの抹殺

失敗条件:返り討ちにあうこと


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


クエストを開始すると同時にマーカーと大まかなマップが視界に出てくる。

あれ?これマーカー重なってね?


今回は仕事が楽そうだ。


俺はユウ達に気づかれないように家を出た。


※XRCV-21A は実在しない航空機です



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ