上陸
28~30話です
さて、この世界の船は例外なくある種類の魔術を張ることによって比較的安全に航海することができている。
その魔術というのが簡単な幻術で効果は水の中から船が見えなくなるというものなんかである。
大きな船なんかにはこの船より大きな生き物には認識されなくなるというものもあるそうだ、因みに魔物は基本的には自分より大きなものを襲ってこない、なので小さな村でも薄くてもいいのでとにかく高い壁で覆っているところも多い、ちゃんと効果があるらしくめったに村等の近くには魔物はよってこない。
なぜこんな話をしているかというと、セーラーゴーレムにそんな初歩的な魔術張ってなかったからである、セーラーゴーレムが絶賛襲われてる最中だからである。
「船にそういう魔術処理がされているということは知っていましたけど実際その効果があるのをこうやって見ていると実感できますね・・・」
そういってまじまじと襲われているセーラーゴーレムを見てしゃべっているのが俺の弟になったニコル・ファルシオン。
「海賊どもの知識として知っていたけど知ってるのと実際目で見るのとはやっぱ違うなぁ・・・まぁ本体に目自体はないんだけど」
と 自虐ネタでテンションが下がっているのは何十人の死体を凝縮して創ったフレッシュゴーレムを自分の体として使い、本体の剣を腰に差しているのはこの俺ブレド・ファルシオンだ。
ちなみに俺たちが襲われているゴーレムを鑑賞しているのはマストのなくなった客船の上だ、セーラーゴーレムに引っ張らせて進んでいたんだけど現在ゴーレムが海特有の魔物に襲われているためストップ中だ。
さて、ゴーレムを襲っている魔物だがこの世界の海って広いんだろうなぁって感想が出てしまうほどにでかい。
ゴーレムも出会い頭に口にくわえられて今は海面に上がっては打ち付けるを繰り返されている・・・ちなみにセーラーゴーレムの全長は30メートルはある手足入れてね、もはや怪獣映画みたいである、波でこの船が転覆しそうになっている。
「ふむ・・・セイレム(セーラーゴーレム)がやられたら海を移動する手段がなくなるなこりゃ」
「それではなぜレッド兄さんはそんなに落ち着いておられるのでしょうか?」
「せっかくだから試してみたいことがあって、でかい魔物と会いたいなって思ってたんだ、実は」
「試したい事ですか?」
「そそっ!というわけでそろそろ行ってくる!」
そういうと俺は何回も続けられていたセイレムいじめのパターンを読み取り海面から飛び出した魔物の頭に跳びかかる!
「”ニードル”」
使い慣れた返し付きの棘を伸ばし魔物の背に突きさすとともに棘を縮めて魔物の背に貼り付く。
「んじゃ新術”マインドハック”」
試してみたかった術を使ってみる。
”マインドハック”この術というか俺の固有技になるんだけど名前の通り相手の精神に侵食してこちらの都合のいいことを刷り込みまくるまさに文面だけでも外道の技である、仕組み自体は”ソウルハック”と同じだけど大きな違いは奪った魂に俺の魔力で情報を書き刻んだあとその魂を戻すという正直な話荒業である。
「ふむ、うまくいったみたいだな・・・体がでかいから構成していた魂の魔力量もでかくてちょっと不安になったけど何とかなるもんだな」
と安堵の溜息を吐く、そう魂は体に比例して大きくなるようにその内にある魔力も増大する、その魔力に俺の魔力を混ぜて情報を書き込むため相手次第では生半可な魔力だと失敗するのだ。
「だいぶ魔力を使ったみたいだな・・・本体の形状が安定していない・・・」
その言葉通りに剣の形がショートソードほどの大きさになり何やら黒いオーラが漏れ始めている。
「取り敢えず補充のためだ、来い!セイレム!」
ぐったりしていたセイレムが声に反応してこちらに来る。
「”オールイーター”」
ここまで来たセイレムに無慈悲な一撃を与える、これで俺の魔力はしばらく持つかな?
普通の生き物の場合は大気中の魔素から魂が魔力を生成する仕様で俺の創った疑似魂もそれはできるみたいなんだけど何故か剣である本体はそれができないらしいんだよね、まあ容量がでかすぎて生成が間に合わないだけかもしれんけど、それなのに俺がバカバカ使うからかもしれんけど。
まぁいいか、とりあえず本体をいつもの片刃の片手剣に戻し精神をのっとった巨大な魔物に目を向ける。
落ち着いてみてないから全体像がわかんなかったんだよね。
で、俺が海に落ちないように気を使ってかあまり揺れないように浮かんでる、なかなか知能は高そうだ。
そして見た目は爬虫類っぽくてでっかい口がワニみたいで両手両足がひれになってるなんか恐竜がいた時代にこんなのがいた気がするけどそんな感じ、ただデカいんだよね。
俺らが乗っていた客船が50メートルくらいあるんだけどこいつそれよりちょっと大きい・・・全長がね。
「ご無事ですかぁぁ?」
ニコルから声がかかる。
「終わったぞぉぉ」
俺も声をかえす。
「セイレムが消えましたけどこの後はその怪獣?に曳いてもらうんでしょうか?」
「そうだぞぉぉこいつは今から俺の配下だぞぉぉ名前はセイレムの名をついでセイレムとなづける!」
「かしこまりましたぁぁ、セイレムですねぇぇ」
というわけで新セイレムに船を曳いてもらうことにした。
セイレムの大きさは相当でかいのだが実はこの世界の海にはより巨大な魔物もいるらしいのでセイレムに自分より体の大きい生き物に認識されない幻術を施しておく。
一日の食事量が半端じゃないので半日は食事に行ってもらい四時間ほど船を進めてもらうことにした、じゃないと船の揺れでニコルが死にそうになっていた。
たまに船より大きい魔物も接近することもあったがどうやらこの船に施されているのはセイレムにかけたものと同じもののようだ、まぁ陸地についたら捨てるつもりだけどね、たまにでかい魔物を吸収したりして魔力も補給しておく。
そんなこんなで実は5日ほどで陸地が見えた・・・遠かったなぁぁ俺ってばどんだけ長く飛んでいたんだろうかね。
「それではレッド兄さん、どこから上陸しますか?」
と質問してくるニコル。
「適当な浜でいい、浜辺を見つけたら船から降りてセイレムに乗るぞ」
「わかりました」
ふむ、少しづつ言葉に距離がなくなってきたかな?
「よし、あの浜でいいだろうセイレム!」
『ゴァーーー!』
「うおぅ!?そんな鳴き声だったか・・・初めて鳴き声聞いた気がする」
「そうでしたか?たしかセーラーゴ-レムを襲ってた時に結構鳴き声あげていましたよ?」
「あれ?そうだったか?まぁいいや、セイレム!俺たちが浜辺についたらあの港町の近くまでこの船を曳いて人が見える距離まで着いたらこの船を派手に沈めろ!曳いているところは見えないように注意していくんだぞ」
『ゴァーーー!』
上陸の目星をつけた浜の少し離れたところに港町らしきものが見えた、そこで派手に沈めてもらおう。
「わざわざ人目のあるところで沈めるんですか?」
とセイレムに飛び移りながらニコルは質問してくる。
「その方が乗客の安否とかを調べて俺たちのことにたどり着く面倒な奴らが減るだろう?人目のあるところでこんな巨大な魔物に襲われて沈むんだ、乗客は絶望的だと思って捜索まではしないだろうさ」
「なるほど、そういうことでしたら納得です。さすがはレッド兄さんですね!」
「そうだろう、それに派手にしてくれたら町も大混乱になってみてるほうも楽しいし、混乱に乗じたら町に入るのも楽になりそうだろ?」
「そこまで考えてたんですね!てっきり町が混乱を起こしてるさまを見て楽しむだけなのかと思ってました!」
「・・・陸地についたら少しはなそうか?」
などと会話しながら浜に上陸する二人。
「頼んだことが終わったら7日に一度この浜に顔見せに来い、滞在は1時間くらいでいいかな?港に来た時は自分の身を守る以外には町に手を出すなよ?んで港に来るとき以外はお前の好きに生活しろ、いいな?んじゃぁ後は頼んだ、行け!」
『ゴァーーー!』
「ご機嫌よう!」
手を振りながらセイレムと別れる頼りになるやつだったぜアッシー君。
「さってっとっ!んじゃあの町に行くぞニコル!」
「はい!レッド兄さん!」
元気よく返事をするニコル・・・陸地の感覚がまだ慣れないのか足元がフラフラしているので少し休んでから出発した。
「ここは港町ケイベル、旅の方と見受けるがどの様なようで参ったのでしょうか?」
「観光です!」
「ちょっ!兄さん!」
即答した俺にめずらしくニコルが意見しようとして、何かいう前に諦めて門番に説明しだす・・・俺は観光のつもりだったから嘘は言ってないんだけどな?
「すみません、旅の途中で荷物などを根こそぎひったくりに会いまして、日雇いの仕事か・・・いっそこの町にある冒険者ギルドで冒険者にとして登録してみるのもいいかなと思いましてこちらの街に来たところです」
「なるほど、では身分証明などのできるものもない状態ってことですかね?よく無事にこの町まで来れましたね、大変だったでしょうに・・・ですが規則ですので何か身分が証明できるものと門の通行税として千ナルいただきます」
ナル?・・・この世界の通貨の単位か、せっかくなので通貨の単位と価値を大まかにこの世界は小鉄貨・鉄貨・小銅貨・銅貨・小銀貨・銀貨・小金貨・金貨・小白金貨・白金貨となっていて順に1・10・100と桁が1つずつ上がってく方式らしい、で今回は千ナル、つまり銅貨1枚が必要らしい、実は持ってたりするけどここは空気を読んでニコルに丸投げしておこう。
「通行税でしたら何とか見つからず盗られなかった手持ちのお金で足りそうですけど他の荷物とともに身分証は持っていかれてないんです、どうにかならないでしょうか?」
出たぁぁぁ!ニコル必殺の潤んだ目で下から見あげつつモノを頼む、まさに外道の技だぁぁぁ!
「そうですね、では冒険者ギルドで身分証を作ってもらってください、特別に私も同行するということで冒険者ギルドまでなら通行も許可してもらえると思います。では先に通行税だけいただいておきますね?」
と門番が提案してくれた、顔が真っ赤だ・・・かわいいだろ?でもそいつ、男なんだぜ?
「ありがとうございます、僕の兄は腕は立つんですがその分浮世離れしているのかこんなうっかりがよくあるんです、親切な方にあえて助かりました」
と満面の笑みを浮かべて門番を魅了する・・・ニコル、恐ろしい子・・・
「ではこちらについて来てください、今から案内いたしますので」
他の門番にことを伝えた我が弟に魅了された危ない趣味の門番が顔を赤くさせながら案内を始める。
町の中ほどまで歩くと・・・まさかの西部劇の酒場のような建物にでかでかとこの世界の文字で『冒険者ギルド』と書かれている建物が見えてきた。
「こちらが冒険者ギルドです、私はあちらの受付に事情を話しておきますので
登録などの手続きをお願いします」
そういわれて俺とニコルは近くの受付まで歩いていく、時間かかるのも嫌だったのですいてる受付に行ったらそこにいたのは頭はピカピカで立派な鼻ひげと顎髭を伸ばし身長はニコルより低いと思われる(カウンター越しに座ってるため)爺さんが座っていた、これはパターンとしてギルドマスターとかいう落ちだなって俺は瞬時に気づいたが空気の読める男なので黙っておいた。
爺さんはよほど暇だったのかカウンター越しに来た俺とニコルを視界にとらえたら満面の笑みを浮かべてこう叫んだ、
「ようこそ冒険者ギルドへ!」
異世界召喚されてようやく王道コースに俺も乗れたかな?って一人感動していたことには、さすがのニコルも気づかなかったようだ。
やっとこの異世界について王道の一つである冒険者ギルドにたどり着いた、ほんとにやっとである。
さて、せっかくなのでこの世界における冒険者ギルドについて説明しとこうと思う。
もともとこの世界には冒険者ギルドというのはなかったのだが、ある時の異世界から呼び出された勇者が自分一人で国を渡り情報を集め整理して何とか魔王を倒したそうだ、大したもんだね・・・一人ってどんだけ丸投げされてるんだよ。
そんで、はっきり言って非常にきつかったらしく各地に傭兵斡旋所を創設し現地の人の手でも十分にこなせることくらいどうにかしてもらうようにした、っていうのが今の冒険者ギルドの雛形らしい、勇者は基本人のいい人間が呼ばれることが多いらしい、勇者ならちょっとした頼み事も聞いてくれるよね?ってノリの人間がよほど多かったのがこのエピソードでよくわかるもんだ。
蛇足だがその勇者の名前はミツヒデ・アケッチーという名前だったらしい。
ちなみに傭兵斡旋所を冒険者ギルドという名前に変えてクエストという依頼形式にして冒険者側に仕事を選ばせる形式に変えたのはその次の代の勇者でイチロウ・ヤマダという名前らしい・・・太郎じゃないのか、ん?ていうか名前から日本人ってのがわかるってのもあるけどその名前の時代感がおかしくないかな?
・・・まぁいいか、もしかしたら呼び出される人間はいつの時代から連れてこられるかはランダムとかそんなところなんだろう。
ついでに言うと形式を変えたのにも理由があって元々何でも屋としての意味合いで創った傭兵斡旋所であったが依頼主が基本的に同じ傭兵しか指名しなくなりそれにより新人が育ちにくくなってしまった。
また優秀な傭兵は人気が高く依頼の多さに手が回らないことが多く、仕方なしに斡旋所が依頼主に下地のきちんと育っていない新人を薦め危険な依頼にまわしたりしてむやみに命を散らしていく事例が多くあった。
そのことを当時の魔王討伐にあたっていた勇者のパーティにいた傭兵に相談された勇者山田氏がそれはいかんと魔王討伐後に勇者として斡旋所に関与する、まずは名前を変えて傭兵に対するイメージを取り払わせた。
次に依頼はまずギルドの方で精査してから依頼にランクを付け、冒険者にもその実力をランク認定などによってしっかりと把握させて受けられる仕事がどのランクが適正なのかを分かりやすくして依頼に逆指名する形で受けるようにしたのが今の冒険者ギルドである。
名前は割と平凡なのに山田さんは偉いってことがわかる。
ちなみに今の歴史は俺とニコルを現在担当しているドワーフの爺さんの長話の大まかな内容であったりする。
そしてようやく。
「では、こちらに必要事項を記入していただきます、代筆も初回特典としてタダでさせていただきますがどうされますか?」
と 話が進んだので。
「いや、代筆は必要ないな」
俺は自分の名前くらい書けるようになっている主に爺さんのおかげだが。
「はい、僕のほうも問題ありません」
ニコルも応える。
書き終わったので提出する・・・現住所とか書けない部分が多かったが。
「はい、受け取りました・・・え~とある程度しつもんしますね?」
爺さんが質問をする旨を告げる。
「かまわない、ニコルもいいか?」
「はいレッド兄さん」
「では始めます、基本的に記入されてない部分に質問しますので気持ちを楽にしてください。また、あまり答えたくないことはこたえなくてもいいですよ」
そこで俺は疑問を持ったので質問する。
「答えなくていいって言われると助かることもあるが身分証になるのなら後ろ暗いことなんかも隠さず話させるようにしたほうがいいんじゃないのか?」
「はい、その指摘はよく受けます実際後ろ暗いことを隠して身分証代わりにギルドカードを作ったりする方もいらっしゃいます。 がそのような方でも一応はギルドカードを発行し、何らかの問題や何かしらの犯罪などに関与していたと判明した場合は即座に指名手配をし身柄を取り押さえる事になっています。 身分証として顔の模写と魔力の波長のチェックも行いそれを記録いたします、つまりギルドカードを発行された方がわざわざ後ろ暗いことに手を染めり事のほうがリスクが高いためわざわざ答えにくい質問まで聞く必要がないというわけです」
と 説明された、抜け道は相当多いと思ったのは秘密だ。
「では質問しますね、まずは出身地ですがなぜ空欄だったのでしょうか?」
「親が特定の場所でなく放浪して暮らしていたために出身地といえるものがありません」
「わかりました、では次ですが詳しい年齢が記載されてませんがこれは?」
「先ほど言ったように放浪して暮らしていたために年齢を数えるという習慣がなく、見かけからの年齢で僕が12,3歳で兄が17,8歳くらいだと言われてきたためそのように記載しました」
「苦労されてらしたんですね、大体事情は分かりましたが最後に1つ聞いておきますね?お兄さんと貴方の顔などは似ていますが瞳や髪の色がだいぶ違っていますよね・・・本当にご兄弟なのですか?」
最後にぶっこんで来たなこの爺さん、さてニコルばかりに答えさせるのもあんまりだしこのことに関しては兄が答えたほうがいいな。
「それは弟からは言いにくいだろうから俺から言おう・・・俺たちはずっと片親と放浪していたんだ、物心ついたころには俺の父はいなかった、ここまでいえば十分だろう?」
俺が心内で『決まった!』と思いながら皮肉気に笑顔を作る。
「はいけっこうです、答えにくいことも一通り答えて頂きありがとうございました。それではこちらの器具に軽く魔力を流してください」
と 謎の四角い物体が置かれた色は銀色で真ん中は空洞になっておりクリスタルらしきものがはまっている、これが魔力を覚える器具なんだろうな。
先にニコルが手を置き魔力を流す。
「はい、結構です。では次にブレドさんお願いします」
俺も手を置き軽く魔力を流す。
「はい、結構です。ブレドさんは相当魔力が高いみたいですね?では、次は顔の映像を取りますのでこちらの部屋にどうぞ」
と奥の部屋に招き入れられる。
「では順番に撮りますので先にニコルさんからどうぞ」
・・・爺さんが昔のカメラみたいなってか完全にカメラだよなあれ?でニコルの写真を5,6枚とる・・・あれ?映像って言ってたよね?
写真らしきものが出来上がるとそれをなんかの器具に入れる、ここからじゃ見えないな。
「ではブレドさんどうぞ」
と爺さんが俺の写真を撮る・・・1枚だけ、爺さんもちょっと危ないタイプか全く。
さっきと同じように出来上がった写真を何かに入れている、やっぱり見えないな。
「はい、では手続きは終了です。明日にはできると思いますので今日は仮の身分証をお渡ししますね、こちらは紛失や破損した際には弁償となり1枚5千ナルとなりますのでご注意ください」
と俺とニコルに手のひらサイズの鉄製のプレートカードを渡される、ほんのり魔力も感じるのでただの鉄じゃないらしい。
「ではまた、明日の昼頃には出来上がっていると思います。本日は長々とお手続きいただき、誠にありがとうございました」
爺さんが深く頭を下げる、どうやらギルドマスターじゃなくただの丁寧な言葉遣いの古株ドワーフだったようだ、まぁ予想なんて外れる事くらいいくらでもあるさ。
その後で、門番に仮の身分証見せたらそれでOKされて改めてこの港町にようこそって言われたが外から聞こえてきた慌ただしい声にその雰囲気はぶち壊された。
「大変だ!みっ港にバカでかい魔物があらわれて船を襲ってやがる!」
と突然冒険者ギルドにいかついおっさんが息を切らせて走りこんできた。
「にいさん・・・」
ニコルが小声でしゃべりかけてくる。
「どうやらセイレムの奴律儀に俺たちがつくのを待ってたらしいな」
俺も小声で話す。
「どうりで・・・僕たちがついた時に、ずいぶん落ち着いているなって思ってました」
ニコルも納得したようである、というわけで。
「そのでっかいのってどんなの?襲われてる船は大丈夫?」
と 俺はあざとく駆け込んできたいかつい男に聞いてみる。
「いや・・・魔物の姿は俺がいた位置からじゃ遠すぎてよくわかんなかったが船は下から突然現れた巨大な顎に真っ二つにされてたその様子は港から離れていた俺にも見えるくらいだったからあの魔物の大きさが驚異的だっていやでも分かる・・・乗っていたであろう者たちも絶望的だろうってこともな・・・」
といかつい男はガクガク震えながら近くの椅子に座った、ビビりすぎてないかな?
ふむ、指示の通りに随分派手にやってくれたらしい、グッジョブセイレム。
とりあえずどんだけパニックになっているのか観に行きますかね。
港について俺はけっこうはしゃいでいたりする、なぜなら。
「なんじゃぁぁぁぁぁ!あの魔物はぁぁぁぁ!」
「みなさぁぁぁぁぁぁん!急いで降りてくださぁぁぁぁい!あわてずゆっくりぃぃぃぃ!」
「あの魔物はもしやぁぁぁぁぁ!」
といった感じでみんなはしゃいでいるからである、みんながはしゃいでいるから俺もはしゃいでいる。
「うおぉぉぉぉぉ!何がどおなったんだぁぁぁぁぁぁ!」
うまく乗り切れなかった感があり少し寂しいが楽しんだもん勝ちである、ていうかなんか気になる叫びが聞こえたからそっちに行って占い師風の胡散臭いばあさんに話を聞く。
「ばあさんちょい落ち着いて俺の質問聴いてくれる?」
「なぁぁぁぁぁんじゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
すぐに俺はいろいろ諦めて期待せずに質問する。
「さっき船が魔物に襲われたって聞いたけどばあさんは現場で見たの?」
「そのとぉぉぉぉりじゃぁぁぁぁぁぁ!」
「んじゃその魔物ってどんなの?」
「あの魔物はぁぁぁぁぁぁ!海の大顎と呼ばれておるぅぅぅぅぅレヴィアタンと呼ばれるぅぅぅぅぅ!海におけるぅぅぅぅぅぅぅ!災害のぉぉぉぉぉ!一つにぃぃぃぃ!数えられておるぅぅぅぅぅ!魔物じゃぁぁぁぁぁぁぁ!あの大きさではぁぁぁぁぁ!まだ生体じゃないようじゃがなぁぁぁぁぁぁ!」
えっそうなの?あれでまだ大人じゃないの?マジかよ半端ないなセイレム・・・。
これ以上ここにいても、テンションを合わせるので疲れるだけのようなので今日泊まれるいい宿をギルドに聞きに行くことにした。
「でしたらこのギルドの向かいにあるカモメ亭などはいかがでしょうか、今からでも部屋が取れると思いますよ?」
とギルドにいた職員にオススメされたので行ってみることにした。
ギルドを出ると既に日が傾きだしてきたところだった。
「いらっしゃいませ!」
とあふれるような笑顔で俺とニコルを迎えるこの宿の看板娘さん。
「すみません、今日泊まれる宿を探しているのですがこちらの宿ではまだ空いている部屋がありますでしょうか?」
とニコルが質問する。
「大丈夫ですよ~今日はまだ2,3部屋は余裕があったはずですから!」
と大きな声で答えてくれる看板娘さん。
「では二人で一部屋を借りたいのですが宜しいでしょうか?」
「はいっ!おかみさーん!お客さん2名一部屋でおとまりでーす!」
大きな声でおかみさんとやらを呼ぶ。
「ハイハイ呼んだかい?おやいらっしゃいお泊りですね?一晩二人で一泊食事込みで3000ナルになります、後、夕食はその日のお昼までに注文していただかないと用意できませんが明日の朝食でしたら今からの注文でも用意できます、いかがしましょうか?」
「でしたら明日の朝食を二人分お願いします、ではこちらが代金の三千ナルです、確認してください」
「・・・ハイ!確かに受け取りました、ではこちらがカギとなります304号室になりますので三階のこちらの階段から4番目の部屋となります」
とおかみさんがカギをニコルに渡す。
「ではごゆっくり」
おかみさんが挨拶をしているのを横目に階段を二人で登っていく。
3階に着くと割り振られている部屋に向かう、扉を開けると中は二人で使うのにちょうどいい大きさでベットが部屋の真ん中を開けるように二つ置いてあるだけの簡素な部屋だった。
少ない手荷物をベットの横に置き。
「今日はもう休もう、俺はともかくニコルには何かとハードな部分が多かっただろう、ゆっくり寝るといい」
「そうですね、ではお言葉に甘えて今日はもう休ませていただきます久々の揺れないベットですからゆっくり眠れそうです、ではおやすみなさい」
とベットに入るなりすぐに寝息を立てるニコル、やっぱり疲れるよね、まだ12歳くらいの子供だもんね。
もう夜の闇が町を覆うというのにいまだに港の方は騒がしいようだ・・・。
新技
マインドハック
誤字脱字等気づきましたら優しく教えて頂けたら幸いです