一振りの刃のなっちゃって
5~11話分です。
少しだけ編集してますが内容は変わりません
『さて、銘も付けたことじゃ試し切りでも行うとしようかの。』
と 一言呟くと当の爺さんは剣を杖にして歩き出した。
文字通り杖になった剣を使って・・・
『ふむ、例え完成品とて試し切りでいきなり無理をして"もしも"があってはつまらんの・・・仕方ない、いつも通りの手順で行くかの』
と 部屋から出て廊下を歩きだす。
どうやら思っていた以上に広い建物だったようだ。
さて、先ほどから感想を述べている私だが、そう俺である。
え?誰だって?俺だよ俺!小春潮だよ!
死んだんじゃないのって?・・・うん死んだと思ってた・・・てか死んでんのかも、もしかしたらだけど。
なんか意識はあって視界はあるけどなんか体は見えない、いや今の体が剣だとしたら見えてるよ?何故か全体像が・・・
これってもしかして幽霊になったとかそんな感じなのかも、やったね!アンデットデビューだ!・・・ん?死んでるのにアンデットってどうなのかな?
まいいやそんなこと!とりあえずさっきの復讐だ!くらえジジイ!制裁のこぶしを!
小春潮の攻撃!
ミス!コブシがない!
・・・うん・・・そうだろうな・・・そんな気がしてた。
ああああっ!意識はある視界もあるジジイのつぶやきも聞こえるから聴覚もなぜかある、普段ならこんな暗い長い廊下なら怖くてびくびくしてるけど今はどっちかというと脅かす側だから怖くない!っとか考えてられるから心が壊れたってわけでもないっと。
ただ、ジジイの歩きについてくように視界は進んでいく・・・もしかしてこのジジイにとりついちゃったのかしら?死ぬまで一緒だよ!っとか超嫌なんだけどどうしよう。
ふむっ割と冷静な自分に一安心とそういやあのジジイあの剣になんか大層な名前つけてたっけな?なんだったっけ?・・・コルセルカ?は槍だっけ?なんだったかな?どっかで聞いたことのある名前だったんだけど・・・エクスカリバ-とかだっけ?大層な名前って認識だしそれだなきっと。
と爺さんが突然止まり扉の前で何やら呟き始めた、合言葉的なものが必要なところのようだ。
『開け!実験場につながる扉よ!』
と ゆっくりと扉が開きだす・・・この扉についているドアノブはなぜついてるのかは今のところ不明だ。
『さて、まずは材料を出さねばな、まずは切りやすいサンドゴーレムの材料からじゃ』
と おもむろに取り出した袋から次々に材料という名のゴミみたいなものを取り出していく・・・あっ!ひっくり返した!さてはめんどくさくなったな?いいのかな?錬金術師が容量とか考えずに適当に出して・・・
『念じた分だけ出るならやはりこうしたほうが早いのう・・・前回気づいて今回の試し切りにはこうしようと思っていたのを忘れていたわい』
ふむ、答えが聞こえた・・・独り言がなかなかいいタイミングで起きるけど聞こえてるのかな俺の声(?)、いや逆に聞こえてないのならなんで言い訳するような独り言をするんだろうね?ってなるなてことは俺のことに気づいてる!おい!ちょっとこっち向けや!
・・・その後しばらく袋から取り出す作業のみ続く。
こえ?届いてないよ?ずっと無視だよ?心が痛いよ?痛覚はないと思うけど心は別枠だよ?
・・・それにしてもあの袋ずいぶんな量入るんだなー、既にこの広いといえる実験場(小学校のグラウンド程度)の5分の1くらいは埋め尽くしてるよ?ゴミ・・・違ったゴーレムの素?が。
さて爺さんが袋を閉じてようやく次の作業に移るらしい。
『先に各種ゴーレムをそろえておくかの、”クリエイトゴーレム”』
と ゴ・・・めんどい、ゴミの山からみるみる人型獣型鳥型ほかよくわかんないけどアメーバみたいだから不定形型かな?がでかいのからちいさいのが型造られ並んでいく。
そしてゴミ片付いた時にジジイが、
『さて試し切りじゃまずはサンドゴーレムからじゃな』
と アメーバの前に立つ・・・え?サンドじゃなくない?
よく見たらあれ砂だ若干青みがかった砂が常に流れてるように動いてたから見間違えたんだなうん。
『ではゆくかの、”起きろ!ファルシオン”』
ん?誰か寝てんの?起きろーファルシオンとやら~・・・あれ?もしかして爺さんの持ってる剣(今は杖状態)のこと?エクスカリバーじゃないの?やだ恥ずいじゃない。
ジジイが杖を両手に掴み掲げる。
俺の視界が突然切り替わるさっきまでジジイの後方のちょっと上あたりで見下ろす形で視界を取っていたのに今は・・・どこ?ここ?ん?ジジイはどこに消えた?
目の前にはアメーバみたいなサンドゴーレム・・・あれ?なんか手の感覚がある気がする?足の地面を踏みしめている感覚もある?でもなんだか違和感が半端じゃないな、なにこれ気持ち悪い・・・自分の体なのに自分の体じゃない感じ。
この感じは知っているな。
たしか昔、寝る前に寝転がりながら漫画を読んでいてそのままうっかり寝てしまい右腕がいい感じで寝転がってたベット(折り畳み式)の枕元によくある何のためについているのかよくわからない頭の上にある鉄パイプに動脈を止める形で夜を明かしてしまい朝起きて自分の腕が自分の意志で動かなかったときに近いかもしれない。
あの時は以外にも数分(体感時間)で腕に血が通うことで元の暖かい腕に戻って一安心したのだが、今回は違うようだ。
というか状況も原因もいまいちわかんないため絶賛パニック中である。
そんな時、口が勝手に言葉を放つ
『まずは切れ味からじゃな、といってもこ奴では大した検証にもなるまいて』
と
・・・最悪だ、最悪な気分だ。
俺の予想が当たっていたら・・・いや、これが正解だろう・・・
ふいに視線が左手に向かう。
予想道理に先ほどまで杖だった物が、漆黒の剣が握られていた・・・
さっきジジイにとりついちゃった?とか冗談で言ったせいではないとは思うがさっきの自分が憎い!・・・そこまででもないか。
でも自分の体が違和感半端ない状態で勝手に動くとか心臓に悪いな・・・今はないみたいだけど・・・いや?ジジイの心臓も共有中かな?
うわっ気色悪いこと考えちゃったな、最悪だ。
とかなんとか考えてるうちにジジイがサンドゴーレム(アメーバ)をたたっ切る、ローブの隙間からちらりと見えた二の腕がビキビキの・・・なんて~のガテン系かな?ってくらいのムキムキだった。
えっ?なんで見えたって?俺だって見たくないよそりゃ、でもジジイが振った剣を片手に持ち替えて何故か掲げてるんだもん、んで刀身をガン見してるんだもん、広辺視野に勝手に入っちゃったんだもん、しょうがないじゃん。
この事実によって一つ言えることがある。
さっき爺さんとケンカにならなくてよかったー!
いや、あんなん無理だろ?だって剣振った時だって全然剣先ぶれなかったよ?
今だから言うけど外見で俺が見れたのは口元と立派な白鬚だけだよ?
あと、杖ついてたから爺さんだと思ってたんだよ!
いや、まぁ爺さんなのは当たってるみたいだけどさ・・・
『ふむ、やはりこ奴では切れ味は分からんのう・・・』
いや、断面図めっちゃきれいよ?
『まぁよいか、本命はこちらじゃしな』
と そのままサンドゴーレム(きれいな断面のできたアメーバ)の体積が大きい方に剣先を軽く沈ませる。
『さて、うまくいけば完璧なんじゃがな・・・では”喰らえファルシオンよ”』
その言葉とともに刀身が縦にひび割れのような模様が走り”何か”を吸収し始めた・・・見た感じそんな気がした。
後、なんか俺自身に冷たい何かが流れ込んできた。
そしてサンドゴーレムはただの土塊に・・・ならなかった。
というか消えた。
なんか全部消えちゃった感じ?喰らえって言ってたよね?砂食べちゃったの?最悪だ、俺が食ったわけじゃないけど、食べたの剣だけど。
『ほう、マナだけを喰らう予定であったが跡形も残さず喰らうとはとんだ悪食のようじゃな、よほど飢えてたのじゃな。』
まぁよく考えたら俺もこの剣に全部吸収されたしなとんだ悪食だなこの剣。
『ではどんどん行くかの』
この言葉を合図にジジイは嬉々として剣を振るい突きそしてゴーレムたちを喰らっていった。
いや喰ったのは剣だけどね・・・
さてジジイが歳に似合わぬパワフルなキンニクンとして自分で創ったゴーレム相手に剣をふりふりハッスルしている中、俺も体が勝手に動かされているようなもうほんとに気持ち悪い経験の経験値がどんどんたまっています。
もうすでに経験値バーが振り切れて胃の中の経験値が飛び出しちゃうくらいかな?俺の胃はもうはないみたいだけどさ・・・
ジジイが”喰らえ!ファルシオン!”とか言うたんび剣がゴーレム吸収してそのたんびに俺になんか入ってくるみたいだ、冷たい感じの何かだからいいかげん風邪でもひきそうだ、ひけるもんならさ・・・
いかん!自虐ネタが楽しくなってきた!
そういや剣の形状が最初見た時より輪郭がはっきりしてきたかな?
というか最初見た時は・・・まぁ杖だったんだけど、サンドゴーレム(?)を切った時には漠然と黒い剣だなーくらいのまぁ簡単に言うと西洋の一般兵的ないわゆるモブ用の剣って感じだったんだけど今では光沢を放ってるよ?研いでないのに、むしろ切ってるのに。
つまりそういうことかな?
この剣ってばアレだね、切れば切れほどっていう感じのずるい剣、いわゆるチー剣だねこれは。
と思ってたら弾かれた・・・
と同時に全身にすんごい振動を感じて体中めっちゃしびれが走ってる!なんで?
『まだミスリルは切れんか・・・』
と 爺さんが溜息を吐く。
爺さんはしびれてないの?ってかミスリルって俺の中でも硬い金属って認識で知ってるな、スゲーなそんな金属のボディーのゴーレムとかかっけぇーなデザインは四角い頭にドラム缶ボディ、パイプの手足ないぶし銀だけどね!
『まぁ剣先は何とか刺さるようじゃし、まぁよかろう”喰らえ!ファルシオンよ!”』
そしてミスリルゴーレムは喰われる、
あっ!刀身の輝きが増したかも!
切るたびじゃなくて喰うたびだったか・・・うん、どっちでもいいかな。
残りも少しとなってきた、数は4体しかもパッと見さっきとおんなじ金属っぽい奴だけど・・・切りかかるのね・・・
また弾かれる、僕しびれる、でもさっきと違いゴーレムに大き目な傷が出来ていた。
まぁ結局刺して吸収するみたい、んで次のゴーレムにGO!ジジイがだけど。
次のゴーレムには深々と切り込まれた半ばで止まったけど、んで吸収次へ。
次は真っ二つ!ただ断面がたたっ切ったって感じだね、んで吸収次~。
最後になりました。
なんということでしょう!まるで何の抵抗もなく、そう!水面に刃物を通したようにすっと切れたのです!すげー。
『大体4体ぐらいで限界突破じゃな、5体目になれば敵にならんのうクックックッ』
と 爺さんが笑う
『さてここらで試し切りは終えるかの”静まれ、ファルシオンよ”』
と いう言葉とともに俺の視界がまた急に移動する・・・こともなかったがジジイが動き出しても俺の視界は動かなかった。
どうやら今のキーワードでジジイから解放されるみたいだ。
まぁ、一定距離から離れることはできないみたいだけど・・・ありゃ?剣が杖になってる、剣が杖になると解放?うーんわかんないけどそれが近い感じかな?きっと。
『さて、今日は実戦での検証じゃの』
窓もない部屋にしか爺さんが移動してないので日を跨いだのかいまいちわからないが現地人の爺さんが今日って言いだしたんだから日を跨いだんだろうなっと。
ちなみに実験とか言うゴーレムの大量解体処分ショーのあとの爺さんのとある行動で俺の今ある状況の理解に進展が一つある。
俺、剣なんだ!
何言ってるのかわかんないだろうけどどうやらそういう事らしい。
おおっと!ネタの乗り方が下手とか言いっこなしだ!
いや、昨日?爺さんが実験場から退出してさ次にむかったのがお風呂でしたと。
爺さんの脱衣シーンという地獄に耐えた後、爺さんの入浴も見なきゃいけんのかと辟易していたら爺さんったら風呂場に一人で行っちゃったのよ。
俺はいつもなら爺さんに引っ張られていくように勝手に移動するのに少し広めの・・・いや普通の銭湯くらいの脱衣所の広さの脱衣所から出れなかったんだよね。
ついでにも1つ見つけた事実爺さんが上がってきたときに気づいちゃったんだけどこの爺さん何故かマッチョじゃなくなってたんだよね、体を布で拭いてる爺さんが視界に入った時に気づいたんよ?俺の目には甚大な被害があったのは言うまでもない、いや目はもうないけど・・・
んでその後、爺さんが別の部屋の前にある傘立てみたいのに杖になった剣を入れてその部屋に入っちゃった、俺はというと廊下でぷかぷかですよ・・・
暇だったから移動できる範囲を確かめてみたんだけどさ、けっこう移動出来たよ?半径5メートルくらい・・・剣(杖状態)を中心にね。
で、実際移動してるのは視界とかだけみたいでなんていうのかな?ドーム状の空間にカメラを自由に移動させて画像を見てる的な感じ?見たい方向とかにレンズ向ける感じ?
それと壁をすり抜けることはできなかった、でも笠立はすり抜けることはできたし壁がすり抜けることができないのはなんか理由があるんだろうな。
で、長いこと放置プレーされてたら、さっき爺さんが出てきてあの一言ですよ、プレイとかジジイ相手に気持ち悪い、考えるべきじゃないな・・・
まぁいいや、それにしても遂に待望の外ですよ!遂に異世界の景色が見れるんですよ!
とかなんとか考えてるうちに階段にさしかかった、これから昇りなのかな?いや意外と降りかもしれないかな?
けっこう上ったかなーって思った頃にまっすぐだった階段の折り返し(?)地点に到着!あれ?こういうのコーナーっていうんだっけ?
まだ上に続く階段が左後方に続いているけどどうやらここについてるドアが目的の外への扉らしい、玄関からすぐに上り下りの階段の物件とかスゲーな異世界!
まぁついたことだしそんな事どうでもいいか、と爺さんが扉を開く。
爺さんのローブが揺れるどうやら外気が入ってきてるようだ。
そして開ききる、外の光景が目に入る・・・それは荒野となった死の大地!というわけでもなくさわやかな草原♪というわけでもなくなんというか薄暗い洞穴だった。
とりあえず爺さんは洞穴を歩く、しばらくしたら植物らしき緑色が目に入ってきた、いや目はないけどさ、いいじゃん比喩くらい。
んで、出た先は緩やかな斜面、後ろの光景を見ると徐々に傾斜がきつくなっていっているのがわかる、つまり山田!違う!山だ!
けっこう木々も茂っているため緑の多い山だなーって感想しか出ない、俺に景色の感想とか無謀だぜ。
この木々もまさに木っ!て感じで植物に詳しいわけじゃない俺に言わせれば近所の森を探せばあるんじゃない?ってことしか言えないさ。
あっでも、杉みたいな木が多いかな?
そんなこと考えてたら爺さんがいきなり叫んだ
『起きろ!ファルシオンよ!』
うるさいよ爺さん!心臓止まるかと思ったよ、無いけど・・・
あっ!視界が変わるわ~
爺さんの叫びで杖が剣に変わる、瞬間爺さんが横に跳ぶ!
何か来たのか!
元いた場所に視線がとぶ!
何もない!
『気のせいか』
・・・
・・・
恥ず
まぁそんなときもありますよね、こんな”森っ!”て感じのところで一人でいたらこんなテンションにもなりますよね。
まぁ誰も見てないから気にしなさんな、俺も忘れとくよ、見なかったことにしとくよ・・・
すると、ピコーンと何やらクイズ番組でよく聞くような音が頭に響く、なんだろね突然?と考えてたら
『敵性反応を察知したようじゃのう、数は一つか、はぐれかの?』
と 後ろを振り返る。
そこにいたのは、四本足を曲げ腹ばいになり低姿勢でこちらを見上げる形で睨みつけており開いた口は耳まで裂けその歯は鋸のよう、そして巨体は細かな鱗に覆われ背中にはところところ刃物のような突起もありそのまましっぽ先まで点々と突起が続いている。
まとめるとワニだ!ワニの歯が鋸みたいだったか覚えてないけどワニだ!ここは山の中腹くらいで傾斜も少しはあるけどワニだ!パッと見だが川とか近くにないのにワニだ。
確かにはぐれ感はものすごく醸し出しているな、山ワニとか言う品種なら違うだろうけどさ。
『ほう、ワニかそれも山ワニか』
と 爺さんが品種をしゃべる。
やっぱ山ワニか・・・でも歯がノコみたいだしノコワニでもいいな~よしノコワニって呼ぶかな他の呼び方はなしだ。
『さて、このノコワニがこのファルシオンで奪う最初の命のようじゃの』
と 喋った爺さんの言葉に違和感を感じた。
あれ?山ワニじゃないのか?山ワニだろ?爺さんぼけた?マッチョのボケた爺さん・・・怖すぎる。
ふむ、もしかして・・・まだ確証もないし保留でいいかな?
と考え込んでいたらワニが突進してきた!割と早い!
でも爺さんは冷静に剣を下段に構える、ワニは跳び上がり大きく口を開けて迫ってきた、瞬間下から伸びる綺麗な三日月。
ワニのジャンプが意外に高くて驚いていたけど爺さんの斬撃にもビックリだね、ワニの口は正面から斜めに侵入した刃に7割がた切り飛ばされている。
痛みにのたうつワニの背にトドメとばかりに爺さんは剣を串刺した、そして例のいただきます宣言、そう!”悪食ソード!”を放つ。
『さて、今日の初のエサじゃファルシオン”悪食ソード!”』
と 爺さんの言葉とともにワニを吸収し始める。
うん、思った通りに言葉が変換されたね~。
これってこっちの認識で変わる言葉が多々あるようだね、主に名前的なものやキーワード的なものだね、多分聞き手に意味が通るようなら何でもいい感じかな?きっと。
んじゃこの世界ってパスワードとか意味ないのかな?・・・いや?そういや今の爺さんって自動翻訳魔法的なの使ってたっけな、それが原因で起きてることみたいねこれ。
とっワニが体に流れ込んできてるけどなんか変だぞ?昨日のゴーレムと違って生あたたかい感じがするし取り込まれてる量も多い気がする?
『ふむ、やはりゴーレムなどよりも魂があるもののほうが多量なマナを保有しておるな魔物でもないのにこのマナ量、まぁワシの魔力で造り上げた人造物より生物のような天然物のマナの方が多いのは当然じゃがな』
とは爺さん談、いや今独り言でブツブツしゃべってたんだけどね。
で、ワニが跡形もなくなるとまたピコーンとアラーム音が鳴り響く今度は5回ほど。
『ほう、今度は群れじゃのう、ちと少ないが』
次に来たのは野犬の群れだった、ただ普通の犬と少し違うのが額の眉間の部分に角がついてる長さ的には30cmくらいかな刃物みたいになっててちょっとかっこいい犬たちだ。
刃物みたいな角を持つ犬の群れがワニの来た方角からかけてくる、あの角の形いいな、ククリナイフみたいに曲がりが大きく幅広で首の勢いで相手に深手を負わせやすそうだ。
その分重さでバランスがとりにくそうな気もするかな、生まれつきならそうでもないんだろうし、犬ってことは素早いんだろうな。
剣っていうか武器としてあの形はカッコ悪いかなーとか思ってたけど角としてなら割とよさそうじゃんか。
と、俺が角に集中してたらそれが起こった。
なんと剣の形が”く”の字に曲がりだしたのだ。
何事かと驚く爺さん、ついでに俺も驚いた。
『何事じゃ!?』
声に出しちゃうぐらいに驚いちゃったか爺さん。
すると角の生えた犬の一匹が驚いた爺さんに奇襲をかけてきた。
体勢の崩れていた爺さんに角の一撃が左腕の二の腕に浅くないレベルの傷口を縦にはしらせる!
『ぐぅっ!しまった、油断してしまったのう!じゃが!』
と 剣を右手に持ち横に薙ぎ払う。
角を持つ犬・・・長いな、剣みたいな角ってことで剣狼・・・いや犬だから剣犬と呼ぼう剣犬は軽く後ろに跳躍して爺さんの薙ぎを回避。
群れは一定の距離を保ちつつ扇状に囲んできた。
てかファルシオンの形状変わったままなんだけど俺が剣犬の角の形がいいなーとか思ったからかな?
『ぐっ!なぜ形が変わったかは知らんがこの形は使いにくい、”ファルシオンよ戻れ”』
と 爺さんがわめきだしたが剣の形状は変わらない。
そこで俺が刀をイメージしてみた、時代劇でよく見る奴だね、本物なんて見たことないから切れ味も想像するくらいしかできんけどね、とりあえず切れ味のイメージは昨日のミスレム(ミスリルゴーレム)がきれいに切れた時みたいに切れたらいいなーくらいに考えながら日本刀をイメージ、喰えば喰うほど切れ味が上がるなら切れ味のイメージは無駄かもしれんけどやっぱイメージは大事だと思うんだよね。
すると予想通り片刃で刃のない峰、その間に鎬があり鎬から刃の間に波紋みたいな模様ができる、何とか形はできたかな?まぁ俺の中途半端な知識じゃこんなもんだな、ってあれ?にぎりとか鍔とかの形状も刀!って感じになってる・・・でも確か刀のにぎり部分は滑りやすかったとか誰かに聞いた覚えがあるから滑りにくいように握りやすい形に変わるようにイメージしてやろう。
『よし戻ったな!これで?な、なんじゃまた違う形ではないか!?』
爺さんったら驚いちゃってまぁ、あっまた剣犬の一匹がチャンスと飛び込んできた。
『甘いわ!』
と 爺さんはとっさに突きを放って剣犬の左肩を突き刺す、そしてすかさず
『悪食ソード!』
・・・名前変えようシリアスになれんわこの名前じゃ。
よし!全部食らっちゃうから”オールイーター”にしよう。
まぁとりあえずそれは置いといて、残りの4匹は一撃で剣に吸収された仲間を見て警戒したのか距離をさらに開けたようだ。
ちなみに一番大きな奴がリーダーだと爺さんは思っているけどその横にいる少し小さめの囲いで最も距離を取っている犬が司令塔だったりする。
いや、なんかさっき喰った犬の記憶的なものが流れ込んできたっぽいんだよね。
実はさっきのワニからもいろいろ情報も貰ったりしている、あの動物はうまかった、あの動物は硬かったとかあのメスが・・・もういいか結局名前とかわかんないし、明確な知性とかがあったらまた違うんだろうけどなきっと、自分の生身の体とかがあったら脳が焼けてるだろうけど今の状態なら知らない記憶が勝手に増えても超気持ち悪いくらいで済むさ、超嫌だけど、取捨選択できたらいいのに・・・ん?できる気がするな、何事もイメージだろうしね!こんなあやふやな状態になってるんだし。
さて爺さんが筋肉をしめるだけで血を止めるとかいう離れ業をしながらも剣先を剣犬の一匹に向けている、もちろんリーダーだと思ってるやつに向けてだ。
水平にまっすぐ向いているためこのまま剣がまっすぐ飛んだりまっすぐ伸びたら刺さるのにな・・・うーん、よし!伸びろー刀身~一気に5メートルくらい一瞬で伸びたら元の長さにすぐ戻れ~
結果、一匹の剣犬がパサリと倒れた。
他の剣犬はもちろん爺さんも何が起こったのか分からず一瞬驚く。
と本物のリーダー犬が一声吠えて残った剣犬たちが逃げ出した。
爺さんはその場で見えない第三者を探している、そりゃそうだ突然リーダーだと思ってた剣犬が死んだんだもんね、目に見えない速さで剣犬串刺して目に見えない速さでもどりゃあなぜ死んだかわかんないさ。
ついでにもひとつ収穫があったりする。
爺さんだと”オールイーター”しか使えないみたいだけど。
俺は”ソウルイーター”もできるみたいだな。
『ふむ、敵性反応も反応しないようじゃしもう大丈夫じゃな、それにしても油断したとはいえ剣犬ごときにこのざまとはな情けない、やはり魔術を使わねばワシもこの程度か・・・いい検証結果じゃな』
と 爺さんが警戒を解く、そういや敵性反応とかさっきから言ってたけどどういうもんなんだろ?きっと爺さんの頭の中にこの辺のマップが出てて敵対意思を持つ奴は赤いマーカーにでもして知らせてくれる魔法なんだろうなぁきっと、ん?魔術だっけ?まぁどっちでもいいや、似たようなもんだろう。
『思ったより深いが”傷よ!癒えよ”』
と いうと同時に傷口周辺が暖かい感じの光に包まれる、これはあれだな”ヒール”って奴だな多分。
とか考えてるうちに爺さんの傷口は跡を残すだけとなった、スゲーな!傷口が強制的に治るって・・・気持ち悪くなったりしないのかな?ふむ、異世界クオリチィーですな・・・クオリティーね。
『さて、こ奴の死体を”オールイーター”!』
と 爺さんは剣犬の死体に剣先を突き立て死体を喰わせる、死体だからか流れ込んでくるもんが冷たい。
『ぬ?死体とはいえしばらくは魂の残照や魔力が多少は残ってるはずじゃと思ってたが、これは考えが違ったのかの?』
・・・ふむ今まで考えて無かったけど爺さんがオールイーター使った時って流れ込んできてたやつが爺さんにも何割か流れ込んでいたみたいだな、でもさっき俺が機転を利かせて仕留めたちゅいでに・・・ついでにつまみ食い、その名も”ソウルイーター”を使った際に流れ込んできたやつ、多分これが魂って奴なのかな?取り込む際にはいろんな情報や魔力に還元されちゃうみたいだけど勝手に、その時の取り込んだ量が一匹目の剣犬の量より多かった気がする、体は食べなかったのに。
これはつまり俺が自分で抜き取って取り込んだ分は俺が独り占めしており爺さんには流れ込まなかった、だとすると爺さんは気づかなかったわけだ俺が剣犬を仕留めた瞬間に魂を掴みだしたことに。
うん、実は刀身が伸びてもとにもどる瞬間、仕掛けた本人(本剣?)ということもあって伸びた感覚があったんだよね、自分の手が・・・たぶん自分が形の定まらないあやふやな状態だからこんなことが起きたのかもだけど、で元の大きさに戻るときに手が何かに触れた感触があったから反射的に握るイメージをしちゃったわけ。
そしたらスポっ!て感じで剣犬から何かが抜けたんだよね、まぁそれが魂だったわけで、それ取り込むときに情報が走馬灯のように流れ込んできたから魂だったってわかったんだよね。
『魔力の補充にもならんとは死体では割に合わんようじゃな』
だからこの爺さんの言葉が出てくるわけだ。
てか、なるほど爺さんは無限に魔力を行使するために俺を材料としたこの剣・・・今は形状が刀だけどこの剣を作ったわけか。
相手がいる間ならいくらでも魔力の補充もできるし、”オールイーター”を使えば相手はほぼ即死だもんね。
今のわが身ながら凶悪だね、自由にならない体だけど・・・ん?ほんとにそうかな?今回の戦闘で形状とか自分の意志で変えられたし意外と自由に動けるんじゃないかな?とか考えていると。
『一度研究所に戻るかの”静まれ、ファルシオンよ”』
と爺さんの言葉の後に俺は杖になった、いやもう俺の本体ってこの剣みたいなもんだしこの剣が俺ってことでいいじゃん俺の意志で大概は形とか力も行使できるみたいだし。
大概はってことに気づいた方も多いだろう、そう、今杖の状態になっている俺は俺を操れない状態のようだ。
きっと杖状態だと剣の意志が切り離されて意識が飛ぶからこんな風に視界とかが飛ばせちゃうんだろうかね~いろいろ納得、細かいことは気にしない。
『まさかたった一匹分の魂で暴走し始めるとはな、もう少し調整しておくかの』
と俺には不穏な響きのワードが聞こえた、やばいせっかく自由になれるチャンスだったかもしれないのに!
あっそうだ!どうせだから”起きろ!ファルシオン!”は”解放”で”静まれ、ファルシオン”は”封印”ってことにしよう長いし、いちいち爺さんに名前叫ばれるの嫌だし。
まぁ調整しようとしても多分1回2回じゃ俺には影響ないでしょ、今ですら俺の存在に気づけないんだからさww
誤字脱字優しく教えて頂けたら幸いです。