昇格依頼受注
~53
さて、カニとスパーリングをした日から実に2か月ほどの時間が流れた。
その間にはいろいろな出来事があったのだが・・・まぁまずは現在俺の技が進化した。
進化したのは”スキャン”で対象の現在の魂の数値SP、MPがわかるようになった。
このままステータスとかも見れるんじゃね?とか思ってたがそう都合よくいかないところが世知辛い。
まぁこの進化した”スキャン”は”ソウルスキャン”と名付けてさっそくニコルのSPとMPを確認したのだがSP300/22/22、MP22/22と出た、因みにワン太郎たちはSP40/31/31、MP31/31と出てた。
SPの後ろの方22/22とか31/31は現在のSPだなって思ったんだけどニコルの300とかワン太郎たちの40が分からなかった、位置的にSPの容量限界値とかかな?って思ってたらワン太郎たちのSPが40/40/40になった時にワン太郎たちに変化が起きたことで確信できた。
変化というか進化?ワン太郎は体が一回り大きくなって角が伸縮ができるようになった、ギルドの人に聞いたらブレードウルフって種類になったらしい。
ツー太郎はワン太郎と同じく体は一回り大きくなったが角が消えて頭が二つになった何となく魔物名の予想をしたのだが・・・ギルドの人によるとツインドッグだった、予想が外れてショックだった。
そしてサン太郎は大きさとかは変わらなかったが毛並みが剣犬のころの灰色じゃなく綺麗な赤になりゆらゆらとそう!まるで炎のような毛並みに変わりその毛はサン太郎を敵と認識したものが触れると火傷をしてしまう、下手に触れるのが怖いがそれでも手触りがいいので撫でまくっている。
ちなみに進化後の三匹のSPはワン60/40/40、ツー85/40/40、サン100/40/40、となっていた。
個性が別れてるからか進化先が見事に分かれたようだ、因みに真面目なワン太郎、好奇心旺盛なツー太郎、甘えん坊なサン太郎である。
つまりSPの最初の数字はSPの成長限界値でありこれが満たされたら体が次のステップに行くってことらしい、だが前の実験の時に分かっているように急激にSPをあたえると体が異常な変化をして肉塊へと変化する。
因みにSPの順番だが成長規定値/現在最大SP/現在SPで”ソウルブリーダー”でSPを+1するとこう表示される。
例はニコルでSP300/22/23
”ソウルブリーダー”で加算されるのは現在SPの様でその数値に現在最大SPが引っ張られてSP300/23/23になったらまた”ソウルブリーダー”を施す。
これによって体の魔力伝達がよくなって身体能力が飛躍的に上がってるらしい。
普通ならおかしい成長ではあるが・・・まぁ異世界だしって便利な言葉で解決しよう。
という腹積もりでいたんだけどニコルとワン太郎たちに”ソウルブリーダー”を使ってるところを3人娘に思いっきりみられた。
敵対意思を持つ者にしか反応しない”サーチレーダー”の弱点が浮き彫りになる出来事だったが、だから口封じに!ってやるには躊躇するくらいには情が移ってたのでしょうがなく説明して反応を見た、すると自分たちにもやれって言って来たので、まぁリスクの話もしてそれでもとやるというならと3人娘にも施すことになった。
そんなこんなでパーティの実力が異常に底上げされていった結果現在Dランクの昇格依頼を受注しに来たところである。
「今回は何の御用でしょうか?」
冒険者ギルドの受付嬢ノエルさんが聞いてくる。
「今回はDランクへの昇格依頼をしたいと思ってこのDランクの依頼を受けに来ました」
といってノエルさんに渡す、内容は。
・規定期間中の護衛・・・ケイベルから北にあるシーフォートに商品の仕入れに行きたいためその道中の護衛をしてもらいたい、行きと帰りの往復での依頼となるため依頼者側の都合で規定日数を超えてしまった場合その分上乗せして報酬を払います、規定日数14日、護衛対象は依頼人とその荷物です必ず守ってください・・・報酬42000ナル+超過日数
「はい、承りました・・・こちらは護衛依頼となりますので他のパーティも受けることがあります、なのでトラブルなどにはくれぐれも注意してください、他に馬車や食事などはある程度依頼側からも用意してくれるそうですが自前である程度用意していたほうがいいかと思います、過去これらのことで依頼人ともめたケースの多いですので」
とある程度注意をしてくれるノエルさん。
「では、依頼人とは明後日早朝に町の出入り口に集合との事です、また今回は昇格依頼ですので試験官が着いていきます、試験管も明後日合流しますのでその時に挨拶をしてください、以上で何か質問等ありますか?」
「いや、特に無い」
ぱっと思いつく質問もなかったので明日の準備のためにギルドを後にする。
Eランクになっているとはいえ今回が初めての昇格依頼となる・・・前回はズルしたようなもんだし、試験がスムーズにいく様にきちんと提案されてたものを買い込んで・・・馬車はどうするかな?
翌々日昼頃、俺は暇を持て余し自前の馬車の中で寝っ転がりながら周りの景色を堪能させてもらっていた。
というのも今朝方・・・。
早朝、俺達は日が昇る前に朝食を済ませて町の外へと向かっていた。
門の外に出ると既に人が集まっており。
「おいおいおい!おせーじゃねーかガキ共!依頼人よりも早く集合場所についとくのは常識だろうが!」
開口一番に怒られた、いきなり怒ってきたおっちゃんに「誰だろ?」って視線を送ったら。
「おいおいおい!睨みつける前にまずは自己紹介するもんじゃないのかガキ!」
また怒鳴ってきたのでついムッとして。
「うるさいな、ちょっと見ただけで睨まれてると思うなんて、よほど臆病者だな?冒険者なんてやめて実家に帰れ」
売り言葉を買っちゃった、テヘッ。
「あぁん?舐めてんのかクソガキ!」
おお!あの程度の悪口で欠陥が浮かぶなんて・・・沸点低いな~短期は損気よ?
「ままっそのくらいでガデムさん、君たちが”ファルシオン”でいいのかな?」
と温和そうなおじいちゃんが慌てて短気なおっちゃんを落ち着かせる。
「はい、遅れてしまい申し訳ありません少し準備に戸惑いまして、何せ初めてのDランクの依頼だったんで失敗がないように慎重になってしまったようです、遅くなってしまって申し訳ありません」
とニコルが謝罪する。
「いえいえ、日が出てから出発の予定でしたからお気になさらずに」
とにこやかに返してくれたじいちゃん。
「では僕達から自己紹介させてもらいます、まずは僕の兄であるブレド・ファルシオン・・・」
と俺から順に紹介していくが。
「おいおいおい!弟に全部任せて情けねーな~?恥ずかしくないのか?」
ニコルが俺の弟と分かるとガデムがよこやりを入れてきた。
「ガデムさん話が進みませんのでそのくらいに・・・」
「おう、分かったよ依頼人の頼みじゃーしょうがないな見逃してやる」
とふざけたことを言って引き下がる、俺はいつでも動けるように準備していた、なぜかって?ニコルの殺気がとんでも無くなってるからさ。
なんとか我慢したニコルがこちらのパーティの紹介を終える、因みにパーティ名はニナたちが俺の持つ家宝の宝剣(という設定)にあやかった名前だ、これで行こうと半ば勝手に決められた。
「その珍しい魔物もあなた方のパーティなんですよね?
それならば今回の仕入れは安心できますね。
それでは私たちも自己紹介していきましょう、私は今回の依頼を出したエドモンド商会のルベロです、でこちらのパーティが」
「”ハモニアの剣”だ、うちのガデムが少しうるさくてすまなかったな、俺はケインだ」
「私はミラ、こっちのおとなしい子がミシェルよ」
「・・・よろしく」
「で俺がガデムだ!ガキども俺らがいればこの依頼は寝てても成功するだろう、だから俺らの言うことはちゃんと聞けよ!」
「はいはい、無駄に干渉してくんなよ先輩?」
と適当に挨拶を返す途中まではよかったのに最後で仲良くする気が消えたな、まぁ一応覚えとくか。
えーと金髪イケメンヒューマンがケインで魔術師っぽい、で露出が多い服を着てその服の上に防具を付けてる金髪碧眼のエルフ姉ちゃんがミラだ剣士らしいな弓じゃないのか・・・でその後ろに隠れている子がミシェル、この子も金髪碧眼エルフで武器は弓だねエルフっぽい、でこの五月蠅いマッチョハゲはガデム、デカい剣を背負ったビーストで多分犬人族って奴かな?耳がふさふさなだけじゃ見分けがつかん・・・おっさんの尻尾とか見たくないし・・・。
で依頼人のルベロはヒューマンだ、ところで?
「ルベロさん、今回僕達の試験官が来るはずなのですが・・・まだ来てないのでしょうか?」
「おや?そのような方は、まだきておりませんね?ですが来るならもうすぐ来るでしょう・・・おや?噂をすれば」
とルベロさんが見てるほうを向く何やら人影が猛スピードで走ってきてるようだ・・・あっ門番に止められて怒られてる。
少ししてその人影がこちらに来る、よく見ると眼鏡をかけている・・・試験管っぽい!
「遅れて申し訳ありません・・・出発を後らせてしまいましたか?」
と眼鏡が心配そうに聞いてくる。
「いえいえ、今しがた自己紹介が済んだところです試験管さんは彼らの情報は知ってますよね?」
と温和な態度を崩さないルベロさん。
「はい、彼ら冒険者たちの情報は報告されてある分は頭に入っています、なので私からの自己紹介で充分です。
では、私の名はコリンと申します、本日からしばらくの間”ファルシオン”が受ける護衛依頼に同行しDランクでやっていけるかを判断させていただく試験管です。
私自身も多少の武の心得はありますが、試験管の立場のため戦闘などには極力参加できないのでそのあたりを踏まえてよろしくお願いします」
といってコリンはぺこりと頭を下げた、三つ編みにしていた長い黒髪が肩にかかる。
「では少し打ち合わせをしてから出発をしましょうか?」
とルベロさんが話すと移動中の警戒をどうする、から今晩はどっちのパーティが夜の警戒をするかとか話し合う・・・主にニコルとケインさんが・・・。
で今は”ハモニアの剣”の馬車が先頭を、俺らの馬車が最後尾を、その間のルベロさんの馬車3台にはルベロさんが乗る馬車に”ハモニアの剣”のガデムが同乗し後ろの2台の馬車には前にニナ・サラ後ろにライカとニコルが同乗している、俺は自前の馬車に乗っている、後方を走りながら警戒してくれているのはワンツーサン太郎たちだ。
コリンはというと元論俺の馬車に乗ってる、馬車で俺が寝転がっているってことは。
「ブレドさん!」
ホラ来た。
「ブレドさん!」
と興奮して詰め寄る長い黒髪を三つ編みにして眼鏡にスーツを着込んだヒューマン種、彼の名はコリン、その眼鏡の奥にある黒い瞳にはある光が宿りブレドと呼んだ冒険者に問う。
「なんですか!この馬車は!」
と質問したコリンにたいしてブレドの答えは。
「ゴーレム馬車って珍しいのか?」
と返事が来た、それに対してコリンは。
「そうですよ!」
と興奮して答えを返して。
「というよりも初めて見ました!ゴーレムに馬車を引かせる、という発想自体は昔からあったそうですが・・・馬車自体がゴーレムというものは初めてです!」
そうコリンはこの馬車に乗って感動を覚えていた最初乗った時は馬のいない馬車が本当に走るのか不振に思っていたのだが、それも杞憂に終わった。
途中まで御者台に座っていたブレドが「飽きた!」といって寝転がった時は固まってしまい「何やってるんだと!」とギャーギャー喚いていたが、それでもきちんと前の馬車との距離を一定間隔開けて走っているゴーレム馬車を見て感動していた。
ただ馬がいないのに馬車、もはや馬車ではないのではないとコリンは内心思っているが所有者がゴーレム馬車という以上馬車なのだろう。
「それにしてもこの馬車は一体誰の手で創ったものなのですか?」
と素朴な疑問を投げかける。
「俺」
一言でかえってきた、コリンは当然疑った、ゴーレムを創るにはその工程と莫大な魔力が必要となる、普通の魔術師がゴーレムを一体創るには数日間の儀式と膨大な時間が必要になる。
もしくは何らかの工夫でどうにかする魔術師もいるそうだが。
「入手経路は秘密ってことですね、分かりました」
冒険者ならギルドに対して内緒事の1つや2つや3つくらいあってもおかしくないとコリンは勝手に納得する、当のブレドは「まぁいいか」とつぶやきながら後頭部に手をまわして寝転がる、せっかくテンションが上がっていたのに正直これは減点対象だ。
一応今回コリンはDランクで通用するだけの実力を持っているかを測るだけなのだがこんなに不真面目な態度を取られると依頼人に対して失礼であり、結果として冒険者ギルドや他の冒険者たちも品性が悪いのでは?などと根も葉もない噂が立ってしまう原因になりかねない・・・原因がここにいるなら根は此処にあるのだが。
「それよりブレドさん、その態度はあまり仕事に対していい姿勢とは言えませんね」
「暇だから別にいいだろ?」
「そういうわけにはいきません!あなたのその態度を見た依頼人がどう思うかわかりますか?それによって我々冒険者ギルドの評判が悪くなってしまったらあなたは責任とれるんですか?」
ここらで冒険者としての心得を叩きこんでやろうと意気込んで説教を始めようとしたときにそれが起きた、
『ワオォォォォォン!』
ワンツーサン太郎のいずれかが遠吠えをあげて警戒を促す。
「この声はワン太郎だな、ということは右側の丘の向こうか」
と呟いたのは今自分が説教をしてやろうとしていた怠け者。
「ワン太郎!俺らで片付ける!コリンさん悪いんだけど俺とワン太郎は斥候がてら何が来るか確認してくるんで皆には気にせず進んでくれと言ってくれ。まぁすぐに追いつくから心配しなくてもいいとも伝えてくれれば充分だ」
「いや、こんな時に単独行動するなんてことは許されませんよ!」
というコリンの叫びをブレドは無視してワン太郎の横に飛び降り、ワン太郎と同じの速度で丘の向こう側に走っていった。
「へっ?」
一瞬の出来事に何が起きたかわからなかったコリンだが、ブレドの身体能力は自分が思っていた以上に凄まじいということは、今の出来事である程度把握できた。
仕方なしに今の出来事を前に走る馬車に伝えようと声をかける直前に先頭の馬車が止まる、それに伴い後ろの馬車も止まった。
何事かと思いコリンは馬車から降りて先頭の馬車まで行く、と少し離れた先に見るからに盗賊!って感じのガラの悪い男たちがバリケードを張ってニヤニヤしながらこちらを窺っていた。
「ここを通りたきゃ通行料金が必要だぞ~!」
と大声で訳の分からないことを言っている、距離も離れていたため警戒しつつ両パーティが話し合いをするために集まるが。
「おいおいおい!あの生意気なガキはどおしたんだよ!あの程度の数にビビって逃げたんじゃないだろうな!」
ガデムさんの言うことももっともだと思いコリンもそれに賛同するように先ほどのことを伝える。
「おいおいおい!なんだよやっぱり逃げたんじゃないか!なんだあのガキ、口だけじゃねえか!」
ガデムさんの声にも若干怒りが混じり騒ぎ出す、それとは逆にブレドさんのパーティは静かだ・・・寒気がするほどに。
「兄さんには兄さんお考えがあるんですよ、兄さんを知らずにそんな言葉を紡ぐなら細切れにして海に撒きますよ?」
「落ち着いてニコル!」
ニコル君の殺気にコリンの背中に冷たい何かがはしった気がした、知らずに大粒の汗をかいてたようだ、それにしてもサラさんはあんな殺気を放っていたニコル君によく声が掛けられるもんだなってコリンは感心する。
ファルシオン兄弟はそろって問題児のようだ、弟の方は品行もよく相手にも丁寧に接していたが場合によっては相当危険だなと評価を改めた。
正直もう帰りたいかな?って考えているときに”ファルシオン”のニナさんがとんでもない提案をしてきた。
「うちのリーダーが戦線放棄しちゃったからあたしらあいつらに八つ当たりして来ていいかにゃ?」
といって自分たちの進行方向を塞いでる連中に親指を立てて示す。
相手の数は20人ほどいてどいつも動きやすい程度に武装している、つまり決して弱い集団ではない、それに八つ当たりをするってノリで挑もうなんてどれだけ自信過剰なんだ!
そう思いコリンは注意しようとして”ハモニアの剣”の問題児が余計なことを言う。
「おいおいおい!できもしない大口たたくなよ嬢ちゃん!そんなことできるならてめえらで勝手にやりな!俺たちは援護なんかしないからな!」
「ガデムさん!そのような勝手なことを言われては困ります!」
依頼主のルベロさんがついに我慢できず講義を始めるが。
「おいおいおい!いくら依頼主といえども戦闘に関して口出しされちゃあこっちが困るな!第一こいつらが言いだしたんだぞ!」
「ですが!」
それでもと食い下がり抗議しようとするルベロさんをコリンが止める。
「ルベロさん、この事態に”ファルシオン”のリーダーがいない時点で現場の指揮権は”ハモニアの剣”にあるといってもいいです、ここは”ハモニアの剣”に任せてください」
「おいおいおい!話が分かるじゃないかギルド職員さんはよ!」
「ただし!”ハモニアの剣”もあまり無茶なことを要求しないでくださいね!」
とコリンがくぎを刺した時に控えめなミシェルが手を挙げ。
「・・・あの~」
「おいおいおい!なんだよミシェル、トイレか?」
「・・・違います馬鹿、”ファルシオン”行っちゃったよ」
とミシェルがバリケードがあった方を指さす。
「へっ!?」×7
ミシェル以外の他2台の御者まで素っ頓狂な声を上げる。
見ると既に戦端が開かれているようだ、人一人飲み込みそうな炎の玉がバリケードに穴をあけていた、そしてその穴から侵入していくニコル、ニナ、ライカの3人とツーサン太郎の2匹、あっけに取られていた面々が正気に戻ったのはバリケードの向こうから悲鳴が聞こえなくなってからだった。
「おいおいおい!まさか勝手に突っ込んで全滅したってのか!」
と正気に戻ったガデムが叫ぶ、あれだけ響いた野太い悲鳴が今は聞こえなくなり代わりに静寂が訪れたからだ、手練れもいたであろう敵の陣地にルーキーが策もなくただ飛び込んでいってしまったのだ。
どの様な結果となってるかの予想など簡単なものだ。
「おいおいおい!仕方ねーなぁもう遅いかもしれねーが助けに行くぞ!ケイン!ミラ!悪いがミシェルはここで依頼人たちの護衛だいいな!」
正気に戻ったガデムの判断は早かった、しかし”ハモニアの剣”の一人があるものを目にしてガデムを止める。
「ガデム待て!あの戦闘の結果なんだが多分お前は信じられないものを見るかもしれんぞ」
「おいおいおい!どんだけ悲惨な目にあってることを予想してんだケイン!いくら生意気なガキでもまだ助かる芽ぐらいあるぁ!急ぐぞ!」
と急ぐガデムにケインが首を振りながら。
「そうじゃないガデム!よく見ろあのバリケードの状態を!俺でもあそこまで大きな穴が開くような”ファイアボール”は使えんぞ!」
ケインの言葉に冷静になるガデム、ガデムたちはまだDランクの中堅といったところだケインもまた凄まじいというほどではないが優秀な部類の魔術師だ、そんな彼があの規模の火球を放った魔法が・・・火炎系統の初歩の初歩”ファイアボール”だといったのだ。
「おいおいおい!ケインあの規模の火球が”エクスプロージョン”とかじゃなく”ファイアボール”だったなんて言うのか?初歩魔法であんな大穴開けたと?」
ガデムの疑問ももっともである、本来あの規模の火球となると”ファイアボール”を使って作るのは効率が悪い、というのもあの規模の火球なら”エクスプロージョン”なんかを使った方が威力があるからだ、しかし”ファイアボール”で撃てればとある利点ができる部分もある。
「その通りだガデム、第一”エクスプロージョン”だと消える間際に爆発が起きる、そして詠唱が多少長くなるしその間に俺が感知出来てたはずだ!だが気づいた時にはもう魔法が放たれていた!」
「おいおいおい!それでお前は何が言いたい!そんな将来有望な子がいるなら早いとこ救助せんといかんだろ!」
「待ちなガデム!ケインが言いたいことが私にもわかったわ!ケインの説明をちゃんと聞いて!」
と今度はミラまでガデムを止めに入る、ここまでくるとガデムもケインたちの言いたいことぐらいわかる。
「おいおいおい!まさか、とんでもないのは嬢ちゃんだけじゃないって言いたいんじゃないだろうな!」
「そのまさかね・・・」
ミラが声を落としながら呟く、そのとき。
「終わりましたよ、すみません少し手こずりました。こいつを生け捕りにしようとしたら暴れましたので」
といって両肘両膝から先がプラプラ揺れている男をツー太郎の背中に乗せて”ファルシオン”のリーダーの弟が歩いてきた、すると”ファルシオン”の試験官をしているコリンが。
「に、ニコル君その男はどうしたんですか?」
「ああ、この盗賊が興味深いことを言ってたので全員で聞いてみようと思いましてとりあえず無駄に逃げられないよう処置を施しておきました」
と事も無げに答える・・・その笑顔にコリンは当然ながらガデムさえもゾッとした。
「それで?興味深いこととは?」
意を決したケインが質問する。
「それはこの男から・・・ああそれからニナさんたちにはあそこのバリケードの撤去をしてもらってます」
ニコルの言葉にバリケードの方を向くとニナやライカがバリケードを壊して集めている、サラは集めたものを袋に入れているようだ。
視線を戻してツー太郎の上に乗っている・・・いや置いている男に話を聞いてみる。
「うぅ・・てめえらこんなことしてただじゃ置かねえからな!俺たちは囮だ!俺たちが獲物の足を止めたら別にいる俺たちの親分たちがここに向けて駆けつけてくる手はずだからな!親分たちの方には魔法が得意な奴が10人はいる!遠くからの炎に撒かれて死んじまえ!ひゃはははは!がふっ」
「笑っていいとまでは言ってませんよ?」
高笑いしだした盗賊の頬にコブシを振るうニコル、だがそれを咎める者はいなかった、正直それどころではなかったからだ。
「おいおいおい!今こいつが言ったことがほんとならちょっとやべえぞ!遠距離から一方的に魔法を撃たれちまったらいくら俺らでも・・・」
と不安を口にしていたその背後から。
「先に行ってていいって言っといたのになんで待ってんだ?」
と場の空気にそぐわない声が聞こえた、覚えのある生意気なガキの声だった。
「おいおいおい!今頃登場たぁどういうことだ!今しがたお前のパーティがそこにいた盗賊どもを片付けてきたところだぞ!敵前逃亡して安全になったから帰ってきたってとこだろうがまだ別動隊がいるらしいからな、まだ帰ってくるには早かったんじゃないかぁ?」
とガデムは八つ当たり気味に今来た生意気な口だけのガキに喚き散らす。
「別動隊?ん、ニコルそいつが盗賊の生き残りか?」
とガデムを無視してニコルに質問する。
「おいおいおい!てめえ無視・・・」
「別動隊ってあっちの丘の向こうにいた連中か?」
「知らねえガフッ・・・見つけてたのか?だがそれがどうした!てめえ一人で倒してきたのか?ハッハッガフッ!」
ニコルからボコボコ殴られてる男に無視してガキ、ブレドが呟く・・・。
「阿保か?カマかけただけだ、そんな奴らいなかったぞ?」
「おいおいおい!何言ってんだ?全部こいつのでまかせとでもいうのか!」
と不安からブレドに食って掛かる、
「でまかせだな~俺の誘導尋問に引っ掛かったし~、何ならこいつ連れて見に行ってみる?ルベロさんちょっとこいつ連れて向こうの丘を越えたところを見に行くってくる」
と依頼人に馴れ馴れしく話すブレド。
「ええ、この際心配事はきっちりつぶしておきたいですし、ガデムさんも一緒に見てきてください」
とルベロさんに頼まれたので仕方なくガデム、ブレド、ツー太郎と背中に乗る盗賊で丘を越える、そこには・・・。
何もいなかった。
ただ、丘の向こう側の草原には戦闘痕は多少あったが・・・そこには死体は一つもなかった・・・。
「ほら、なにもいないだろ?ここにいる盗賊はもうお前しかいないんだよ」
この光景を見せたブレドは盗賊に向かって嘲笑うような表情でそう告げる、その顔を見た盗賊が・・・いや、先ほどの光景で何かを見つけた盗賊がその顔を見て顔を元の色から蒼くしさらに蒼から白に変え奥歯の音が近くに立っているとはいえガデムの耳に聞こえるほどに鳴り響く・・・。
「おいおいおい・・・お前はここで何をしてたんだ・・・?」
とガデムは底知れない不安からそれを聞いてしまう、が、帰ってきた声は軽く。
「いや特になんも?ただ食事を独りで済ませてただけだ」
という言葉にガデムはこいつはたださぼってただけなのか?とどこか安心した。
SP成長規定値/現在最大SP/現在SP
MP最大MP
今回はMPを消費した数値は必要ないためMPは最大MPのみ
一般成人ヒューマン
SP300/30/30
MP30±15%(端数切り上げ〉
Dランク昇格依頼受注時
ブレド・ファルシオン
SP----/239/239
MP239
ニコル・ファルシオン
SP300/34/34
MP34
ワン太郎
SP70/42/42
MP42
ツー太郎
SP85/42/42
MP42
サン太郎
SP100/42/42
MP42
ニナ
SP350/32/32
MP29
サラ
SP300/27/27
MP32
ライカ
SP750/72/72
MP64




