砂浜
~50話分です
「よし、完了!体はどんな感じだ?」
「そうですね・・・なんだかふわふわした感じがします・・・これで兄さんが言うように魂の魔力容量が上がったんですね?」
「まぁそんな感覚になるとは知らなかったがばっちり上がっているはずだ、体も2,3日でなれるだろう明日まで大事を取って休みにする・・・どうせあの3人も動けないだろうし」
と話をまとめて溜息を吐く、結局昨日飲みすぎた3人を運んで部屋に放り込んできたのだが、今朝見に行ったら二日酔いでニナとライカがダウンしており今はサラが面倒を見ている状態だ。
「兄さんは今日何をするんですか?」
「俺か?そうだな・・・」
さて、今日は何するかな?
「で?今日は何買って行くんだ?」
と聞いてきたのは武具屋のおっちゃんデモン種のコタロー、俺は武具屋に来ている・・・一人で。
「手ごろな片手剣が欲しくってね」
と俺は今日買いに来たものを簡単に話す。
「お前さん用の武器なのか?今腰にさしてるのじゃ役不足なのか?」
おっちゃんの疑問ももっともである、なので。
「逆だよだよおっちゃん・・・こいつだと強すぎて戦いにならない、あれじゃあ討伐というよりただの駆除になっちまう・・・正直つまんないんだよ」
と愚痴が漏れる。
「危険な考えだな、それは・・・命を落とす若い冒険者によくある兆候だ、他人のワシがとやかく言っても効果はないんだろうがお前さんは気にいっている・・・無駄に命を散らすようなことはするなよ?」
と俺のことを心配してくれるおっちゃん、照れるぜ。
「分かったよ気をつけるって、んじゃあこれでいいや、いくらになる?」
とりあえずよさそうなショートソードがあったのでそれを手に値段を聞く。
「こいつはお前の弟に売った奴と同じもんだから2500ナルだ・・・確かに受け取った、何度もいうがあまり無理なことはするなよ?」
とお金を受け取りながらも忠告してくれる。
「分かってるって、んじゃあまた来る!」
そういって店を後にし町から出る一応ワンツーサンの眷属も連れていく、目的地はここに来た時に上陸した浜である。
「どうやら近くに潜んでたみたいだな、セイレム!」
『ゴァーーー!』
「ちょっと声小さくしようか?」
とセイレムを呼んで声の大きさを注意する、7日に一度顔を見せるよう言っておいたのだがどうやらこの辺に住みついていたらしい。
「セイレム、お前に特別任務を伝える!」
『ゴァーーー!』
「ちょっと声小さくしようか?」
デジャブが襲う、こいつめ!
「まぁいいか、で、セイレムお前はしばらくこの大陸の外周を周っていろ!んで道中船がいたら船の連中が気づく程度にパフォーマンスしてみろ船の近くでジャンプするとかな」
『ゴァーーー!』
「ちょっと・・・もおいいか、それからこれからが重要な任務だが漂流している奴がいたら近くの陸地まで連れてってやれ・・・食うなよ?」
『ゴァ?』
どうやら俺が何をさせたいのかが理解できないらしい、まぁ俺としても何となくした注文だから特に理由ってほどの物も無い。
「簡単に説明してやるとその方が面白いことになりそうだからだ、俺も冒険者になったからにはいろいろな場所をめぐることになる、そんな時、俺の手下の活躍が聞こえたら楽しいだろう?理由はそれだけさ・・・つまり何が言いたいかというと、お前の行動で俺を楽しませろってことだ!」
『ゴァーーー!』
ふむ、了承なのかな?まぁいいや。
「んじゃ行って来い!気をつけてなーー!」
『ゴァーーー!』
さらばセイレムしばらく一人で頑張れ!
さてと今度はこっちかな?
この浜はかなり広いのだがパッと見生物がいない。
普段この浜にはみだりに人は踏み込んだりしないらしい、聞くところによるとこの浜に生息している魔物の特性が面倒だかららしい、その面倒な特性とは、俺はおもむろに小物袋からさっき道中に拾っておいた木の枝やコブシ大の石ころを取り出した、でそれをとある場所に放り投げる。
ガチィィィン!
砂の中にいた何かが自分の上に落ちたものを挟み込む石ころは砕け散ったみたいだ。
そして俺の前に現れたのは、カニだちょっとでかいサイズでワゴン車ぐらい?見た目は沢蟹って奴に近いかな?ここは沢じゃないから名前は浜蟹だな。
このカニの面倒な特性とは非常に硬い甲殻に覆われていることと、普段は潜ってるからどこにいるのかわからず先制攻撃の魔法をあてることもできない、しかもこの浜の至る所に潜んでいるためにあまり激しく戦ってうっかり他のカニのいるとこに足を置くとズッパシやられてしまうからまた面倒、リスクに見合った相手ではないためこの浜に人が来ることはなかなかない。
今回相手にするのは・・・まぁ暇つぶしだ。
んじゃあ今日のカニ鍋の材料にでもしますかね?
そう考えて今日買ったショートソードを腰から抜き正眼に構える・・・。
「チッ!」
俺は舌打ちする今日買った剣を正眼に構えて失敗に気づいたからだ・・・。
・・・これ、片手剣じゃん、カッコつけて正眼に構えようとして左手が空を切った、かなり恥ずかしい。
後ろで見ていたワンツーサン太郎が視線をそらしている、カニまで気まずそうに俺とワンツーサン太郎を交互に見ている・・・。
俺は自然な動きで空を切っていた左手を右手首の上に置いてカニに向ける、何とか挽回できそうだ。
「まぁ瞬殺だ”メニードル”!」
瞬間左の腰に纏めて差しておいた鞘を突き抜け多数の棘が足もとに穴をあける!
癖って怖いね~、足もと穴だらけ・・・腰に斜めに差してたから足に穴が開くことがなくて済んだけど・・・。
後ろで見ていたワンツーサン太郎が視線をそらしている、カニまで気まずそうに俺とワンツーサン太郎を交互に見ている・・・。
どうする?向こうもどうやらやる気がそがれたようでこの空気にいたくないようだ・・・だが逃がさん!
「逃がしてやらん!」
声が漏れた、が気にせず跳びかかり真っ二つにすべく上段から縦に切りこむ。
バギャンッ!
新品の剣がいい音を上げるカニの殻が固く刃が通らなかったようだ、が俺の怪力のせいでカニは真っ二つに折れた・・・谷折りって奴だ。
後ろで見ていたワンツーサン太郎が視線をそらしている、剣ってそういう使い方じゃないよね?ってお互い視線で会話しているようだ。
「言いたいことは素直に言っていいぞ、俺も素直に怒るが」
恥ずかしさを紛らわそうとしていった言葉に俺は更に追いつめられる、顔が真っ赤になってんじゃね?なんて考えてたら。
ガッチィィン!×6
おや?殻の破片が近くのカニに飛んじゃったようだ。
ちなみにカニは土に潜んでいても”サーチレーダー”に引っかかってるからどこにいるかは分かる。
今度出てきたカニどもはさっさと襲い掛かってきた、俺は剣を下段に構える、
「よっとー!」
まっすぐ歩けないカニの正面にまわり振り下ろされたハサミを華麗にステップ回避、左側の大きく広げている足の付け根に剣を滑らせて。
バギンッ!
音と共に新品の剣が折れた、新品なのに・・・ついでにカニの足は2本ほど切り飛ばした、カニのいない方に。
「おおっ!折れてしまうとは情けない!」
と冗談を言ってる間も猛攻が続く、軽く躱してるけどジャンプして躱した時に見事に払ってきたハサミが直撃する!
・・・ただし俺は飛ばされていない、ハサミの根元に腕がめり込んでいる。
払われたハサミにカウンターでコブシを叩きこんでみたら殻が割れてめり込んじゃったのである。
武器が折れて本体使わないという縛りで、どう倒そうか悩んでたがこれなら簡単そうだな。
数刻後、カニの死骸が赤い絨毯のようにおびただしい量になっていた。
カニを殴り飛ばすたんびにカニが増える面倒なループが起き途切れるまで倒してたら日が暮れていた。
ワンツーサン太郎は途中から見学をやめてカニの死骸を食べていた、手伝う気は一切なかったようだ。
とまぁ結局はそこらの剣より直接殴った方が強いってことがわかったな。
などと考えながらカニの比較的に食べれそうな状態の部分だけ拾っていく、土の付いた身は捨てとこう、こんだけあるし。
ある程度拾ったら港町ケイベルに足を向けて歩き出した・・・カニを避けてね。
「おかえりなさい兄さん!ずいぶん遅かったですね?」
と心配してくるニコル、結局町に着きカモメ亭にまで着いたのは完全に日が沈んでからだった。
「ちょっと浜で遊んでたら遅くなった、すまんなニコル心配させたか?」
「いえ、ただ食事をどうするのかが分からなかったので待ってたんですよ」
どうやら昼くらいには帰ってくると思っていたらしい、いつ帰るとか言わなかった俺の落ち度かな?
「そうかじゃあ食事はもうできてそうだな、まぁいいか」
カニ鍋でもしようかな?って思ってたが用意されてるならそっちを食べるかな。
「何か食材を持ってきたんですか?でしたら明日に出も出してもらえるようにおかみさんにでも渡しときましょう」
と言ってる間に看板娘のアイナが料理を持ってくる、
「はーいおまちどー」
持ってきたのはシーフードシチューにパンだった、ついでに浜のカニは調理できるか聞いてみたところ渡してくれたら明日の夜に出してくれるそうだ、明日はカニ鍋だな。
ちなみにニナとライカはまだダウン中だそうだ二日酔は長引くとつらいよな。




