昇格
~47話分です
「さすがにこのチンピラたちも不憫に思えるわね」
と優しい言葉とは裏腹に嗜虐的な笑みを浮かべるサラ・・・いい性格してるよ全く、まぁ嫌いじゃないが。
ちなみに俺の食事が終わるまでチンピラたちを無視していたらチンピラたちはヒートアップして騒ぎ出した、おかげで今周りにワン太郎たちと同じ剣犬の群れに囲まれてしまっている。
面白いことを思いついたのでチンピラたちの武器を奪い剣犬たちの群れに放ってからチンピラたちを解放した、これが今の状態である。
さすがに丸腰でヒイ、フウ、ミイと30匹くらいかな?の群れに囲まれてるのは怖いようだ・・・いや武器持ってても怖いらしい。
何気に剣犬のランクはEで群れの大きさでDにまで上がるそうだ、普通の群れで15匹前後らしいからこいつらはDなんだろうなきっと・・・つまり俺らパーティより2つ上の相手みたいだ、チンピラたちはEなんだと、偉そうにしていたのに大した事無いな、まぁ所詮チンピラだからしょうがないか。
余談になるが眷属の3匹の名前は実験に使った順にワン太郎、ツー太郎、三太郎である・・・スリ太郎だと語呂がね。
「んじゃあサラは近くのゴーレムに乗って援護に徹しろ、ニナは他のゴーレムと連携してサラの護衛、ニコルとライカはワン太郎たちと相手の数を削っていけ」
「了解!」
うんいい返事。
「それで兄さんは?」
「ここでチンピラでも見とくよ、楽しそうだろ?」
ニコルが苦笑に顔をゆがめるが美形な顔はそれでも絵になるな、などと考えていると。
『わぉぉぉぉん!』
剣犬のリーダーらしい一匹が吠える、こっちの準備を待つ気は無いようだ、がまぁ問題ないな。
「来るぞ!」
「来るぞ!じゃない!お前!俺の武器投げやがって代わりにお前の武器を寄越せ!」
と錯乱した赤いモヒカンが汚い手で俺の本体である錬成魔剣ファルシオンに触ろうとした!
なので丁寧に両腕の肘を逆の方向に曲がるように柔らかくしてあげた、コブシで。
「ギャー」
「てめぇやりやがったな!」×4
カラフルなチンピラがこちらに向かって殴りかかってくる全員の足を素早く払い一人の足首を掴み横に払う青い軌跡が跳びかかってきた剣犬たちを吹き飛ばす。
「ガフハッ!」
「ブルー!」×3
えっ?そんな名前なの?てことは赤モヒカンはレッド?俺とかぶってんじゃん・・・だから絡んできてたのかな?まぁ今更どうでもいいか。
「てめぇ!」×3
起き上がり跳びかかってくるチンピラ×3、一番後ろの黒いモヒカンの後ろに一瞬で回り込み腰あたりのタンクトップとズボンの重なっている部分を掴み、持ち上げて地面に振り下ろす、跳びかかってきてた剣犬が地面に叩きつけられるる。
「ガブバッ!」
「ブラーック!」×2
どうやらこいつらは自分たちをモヒカンの色で呼び合っているようだ、モヒカンが本体なんじゃないか?俺と一緒だな・・・モヒカンと一緒は嫌だな。
「てめぇ!」×2
セリフのレパートリイ増やせよ!と思ってると黄色が殴りかかってきたのでスウェー気味に躱して、跳びかかってきていた剣犬の前足を掴んで黄色モヒカンの背中に投げつける。
「ブべバッ!」
「キイロー!」
なに!イエローじゃないだと!
「てめぇ!」
ついに最後になったピンクモヒカンがタックルを仕掛けてきた俺の体制を崩そうというのだろうか?普通に横に躱してブラックの足を掴んでブルーのように横に払いピンクモヒカンに投げるが、ピンクモヒカンは垂直に跳躍して躱す・・・やるじゃん。
しかし、ピンクモヒカンの顔が降りてくる位置にコブシを添えておくと吸い込まれるように顎にアッパーが決まる、ピンクモヒカンはそのまま膝をつき前のめりの倒れる。
「サッサーモン!」
おそらくレッド(仮)が叫ぶ、サーモン?
「化けもんか・・・?」
「っふ、おいおい心外だねぇ?お前らが口さきだけなんでしょ?」
といいつつ腰のファルシオンを抜き、今の俺の立ち位置だと3メートルくらい離れたレッド(仮)の後ろに迫ってきてた剣犬を剣を伸ばして切り飛ばす、伸縮は一瞬だからにレッド(仮)は何が起きたのかは結果しかわからなかった。
「ひっひぃぃ!助けてくれ!俺はあんたと敵対する気は無かったんだ、ただ・・・ギャーギャー」
『聞くに堪えないから黙ってろ』
イラッとしたので言葉に魔力をのせて言い放つとレッド(仮)が尻もちをつきながら水たまりを作る、頭をピストンのように上下させながら・・・。
「それにしても・・・あっちはまだ終わんないのか?」
とぼやく、いまだに自分たちを包囲していた剣犬は半数ほどいて、しかもほとんどはチンピラと遊んでるついでに俺が片付けた奴だ。
「これがDランクってことなのかね?」
と誰にも聞こえないような小声で呟き戦闘を見守る、とりあえず自分とチンピラに向かってきたのは片づけていたが、剣犬たちは残り5匹くらいで逃げていった・・・。
俺一人で半分以上は片づけちゃったのだがみんなの疲労具合が酷かった、なので今日はもう帰ることにした、簀巻きにしたチンピラたちはゴーレムに担がせて持っていく。
ちなみにゴブリンの耳は昨日大量に回収していたのでそれを提出しておいた。
「この量は・・・昨日の騒動の時のモノと見受けますが?」
とノエルさんが質問してきたので。
「そうですよ、もしかしてダメでしたか?」
と正直に答えてダメだったか改めて訊いておく、ニコルが。
「いえ、この依頼は討伐数が問題になる依頼なので倒してきた場所がわかっている以上問題ないですよ、ただ以前話したように特定の魔物の討伐はもめる可能性もあるので注意してくださいね?」
「あぁ、あの倒しちゃったのが実は別の冒険者が討伐依頼を受けてた魔物だった場合の奴ね?そうだな・・・ありがとう気をつけるよ」
「はい、では今回の報酬となりますが薬草の採集の報酬が規定量分と超過分で1050ナル、ゴブリンの討伐が規定数量と超過分で12000ナルになります、だいぶ討伐したんですね・・・」
ちなみに薬草は1本70ナルゴブリン1体で200ナルになるゴブリンは洞窟にいる分で俺が討伐した分だけ回収している、端数は何となく捨てちゃった。
「まあ巣に突撃してきからな、緊急性が高かったとはいえ無茶をしたと思うよ」
「そうですね・・・結果助け出せた方たちもいますから強くは言えませんがあなたに何かあればニコル君が一人になってしまいます、もう少し自分を大事にしてください」
おおう・・・心配されてるよ。
「それと今日捕らえてきたチンピラたちですが特に依頼も受けておらず他の冒険者に妨害行為をしたとのことですが、申し訳ありませんがギルドでは厳重注意に留まることになります」
まぁこれは、所詮冒険者ギルドも仕事の仲介屋ってとこなんだろうな。
「まぁ仕方ない、俺としても返り討ちにしただけで充分にすっきりしたし」
「そうですか、それと実は今回のゴブリンの討伐数が依頼12回分の達成と同等になるので次回からEランクの依頼を受けることでランク昇格が可能です」
ほう、討伐数依頼ってのは大分割がいいな過剰討伐が依頼達成数の代わりにまでなるとは。
「ちなみにどんなクエストがあるの?」
「はいEランクの依頼はこちらになります」
と表紙にEと書かれたファイルを取り出し開いて渡してくれた、適当にパラパラめくっていたら。
・ブレードドックの討伐・・・ケイベル近くにあるケイブ森林に生息しているブレードドックの討伐をしてもらいたい、とにかく数を減らしたほうがいいので規定数を超えて討伐をすればその分上乗せして報酬を払います、規定討伐数5匹、討伐証明部位は額の角きちんと根元があるもののみ数えるので注意してください・・・報酬1500ナル+超過討伐数で加算
「ノエルさん」
「はい?なんでしょう?」
「はいこれ」
と俺は今日討伐したブレードドックの角25本を渡した。
夕方、宿の一階食堂にて。
「乾杯!」×5
宿に着くとすぐに食堂で、仲間内のささやかなパーティを始める。
「まさかこんにゃにあっさりEランクににゃっちゃうにゃんてね」
「そうね昨日、いろいろ諦めていたことを考えれば夢みたいね」
「も~そんな暗い話は無しですよ~」
「そうね、今日はささやかだけどパァッといきましょう!」
「・・・払ってるのは兄さんなのですが」
「気にするなニコル、こういう時に笑って流す器がある俺と卑屈になる俺、お前はどっちがいい?」
「ですが兄さん!」
「お前が俺を心配しているように俺はお前にでっかい男を目指してほしいんだ、英雄になるくらいに・・・だからこんな時くらいパァ~ッていこう、な?」
「・・・分かりました、英雄は難しいですがこんな時くらい兄さんに気を使わせない弟になります」
うちの弟は大分硬いなぁ、まぁいいかこれも個性だし。
「にゃにむずゅきゃしぃいこと言ってりゅにょ?たにょしもうにょー!」
ニナが言葉を捨てた、俺は涙を払い・・・流してないけど、聞いてみる。
「これってまさか酒?」
「そうよ、せっかくの祝い事なんだから・・・少しくらいいいでしょ?」
とサラが答えて甘えてくる、ついにデレが来たのか!
「まぁ明日に残らないくらいにしとけよ?・・・ライカその持ってる容器見せろ」
ニコルにまで飲ませようとしているライカを引き離す。
「ニコル、飯食べたらすぐ寝とけよ俺は酔っ払いどもの相手をしてから寝るから」
「えーと兄さん、お疲れ様です」
全くこの世界の成人は15歳かららしいが、ガキに酒飲ませたら大変になるだけだっての・・・。