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ニコルの決意

41,42話分です

「なるほど、大筋は理解しました・・・つまり依頼を受けて森で採取をしていたら同じ冒険者のライカ嬢がゴブリンから逃走中の場面に出くわた、その後ライカ嬢の救助要請を受けゴブリンの巣まで行き救助ついでにゴブリンの巣を襲撃、殲滅してサラ・ニナ両名の他、ゴブリンの巣に捕らえられていた女性で息があった身元不明の5名を保護をして当ギルドまで運んできた、ということですね」

 と対応をしているエルフ(♂)のギルド職員が話をまとめる、当事者でないとここまで話が纏められるもんなんだなってどうでもいい事が頭をよぎる。

「そんなところだ、それでニナちゃんらはまぁ今後冒険者を続けるか微妙だけど貞操は守られてたみたいだから、まぁトラウマ程度で済むだろうな、日常生活とか大丈夫だろう。

 ただ他に俺が保護してきちゃった娘らはどうなるんだ?

 ギルドで保護してくれるとか?」

 俺は疑問に思っていたことを質問した。

「そうですね、これは私には決定が出せる事ではありませんが、こういううときは一応身元の確認とその家族の捜索を一定期間して期間内は保護をします。

 その間に身元がわかるようならそこに帰るということになりますね、期間が過ぎたら・・・需要のあるところに引き渡されたりしますね」

 と最後の方は言いにくそうにしゃべる、まぁ明るい顔で「人身売買します!」とか言えないよな。

「んじゃあその一定期間ってどのくらいだ?」

「大体一月ちょっとくらいですね、あまり短いとよからぬ輩が来た時にハイどうぞってよく調べもしないで引き渡してしまうケースが過去在りましたので」

 過去俺みたいに連れてきちゃった人が何人かいたみたいね。

「そいや2人ほど身籠らされてるけどそっちはどう対応するんだ?」

「よくそんなことまで聞けますね?このケースでは魔術的な処置を当ギルドで行いますのでおそらく大丈夫でしょう」

 つまり魔術的な方法で子供をね・・・まあ母体の安全が一番だしな・・・んっ安全なのか?

「んじゃあさ、身元が分からなかった娘は俺が預かるってのはできないかな?俺もせっかく助けた娘が結局助け出された場所と似たような環境に送られるのも忍びないんだが」

「過去にそのような提案をされて実際承認された例もありますが、一般的な意見として聞いて頂きたいのですが、Fランクのあなたに預けられることはないと思いますよ?」

 まぁそうだろうな、今の収入じゃ自分だけでいっぱいいっぱいだし。

「なるほど、まぁ俺に預かれって言われても対処に困ると考えていたからまぁいいんだがな・・・どうなったかだけは知らせてもらえるか?俺にはそこまで面倒を見ないといけない責任が・・・まぁ見方によっちゃああったんだ」

「見かけによらず律儀っぽい部分もあるんですね、はいその件に関しては受け賜りました・・・ですがあまりそんな事気にしないほうがいいと思いますよ?つらい思いをされるだけになると思いますし」

 とこちらを心配してくれてるのか、イケメンは最後の方は眉を寄せながら話す。

 まぁゴブリンとはいえ血縁者を切りまくったからには少しくらいは気にしなきゃな人としては・・・ああ、人じゃなかったっけ俺・・・。


 一通りの話をつけて個室から出る心配していたのか個室の扉の横に置いてあった長椅子にニコルが横になっている、起こすのもなんだし俺もここで寝るかな?

 などと考えてると。

「報告は終わったんだ、今日泊まる所は決まってるのかにゃ?まだにゃらオススメの宿に紹介したげるよ!」

 とニナが着替えてきたのかちゃんと服を着て話しかけてきた、後ろにサラとライカもいる、服を着て・・・残念だ。

「ふっかわいこちゃんに『宿に来ない?』なんて積極的なこと言われるとはな、俺も捨てたもんじゃないようだ」

 せっかくなので、言ってみたい軽口脳内ランキングの上位にあった「かわいこちゃん」と「俺も捨てたもんじゃない」の合わせ技をしてみた。

「はっ?何を勘違いしているの?一応恩人が宿なしだと可哀相と思って声をかけてあげたのに阿保な事言ってるならもういいわね?」

 なんかサラにキレられた・・・まぁ宿に泊まりたいけど、ニコルがここで寝ちゃったみたいだから俺もここで寝ちゃおうかと思ってたんだよね。

「ちなみにその宿近いのか?ニコルは疲れてるだろうからこのまま起こさないで運ぶことにしたいんだが」

「近いですけど~、運んだら起こしちゃいますよね~」

と ライカが答える・・・ならしょうがないな。

「んじゃ、誘ってくれて嬉しかったけど、悪いが今日は此処で寝るよ・・・それじゃあ宿直の人に頼んでくるんでまた」

 といってニナがもっていた俺のマントを受け取りニコルにかける、それから夜勤の職員に今日はここで夜を明かすという話を通しておく・・・今回は特別だと許可を貰いニコルの元に戻る。

「ん?まだいたの?」

 戻ったらもう宿に帰ってると思ってた3人娘がいた。

「あなたがここで寝るのなら私たちもここで寝るわ」

 え?意味が分からない・・・もしやこれがモテ気の到来なのか?確かにこの顔はニコルを元にしてるからイケメンではあるが・・・。

「ほんとのことを言うとあたしたち今一文にゃしにゃんだ・・・」

「二人についてって便乗する予定でした~」

 ・・・誰だ!俺にモテ気が来たとか適当なこと言った奴!・・・俺ですね、ハイ。

「・・・んーしょうがないか後でニコルが怒るだろうけど今日分の宿代くらい出してやるよ、3人でいくら?」

「いいのかにゃ!」

「いいも悪いも救助頼まれてここまで連れてきたんだ今日分くらい立て替えてやるよ、そのくらいは依頼された責任があると思うし」

「でも~一方的に頼んだだけですし~依頼料も払ってませんよ~?」

「むしろ今貰ってるくらいだし・・・後で何かいやらしい要求でもしてくるんじゃないでしょうね?」

 サラちゃんは何気にひどいな、まぁ警戒するよね・・・だが我に秘策あり。

「ふっ!依頼料ならもういただいているさ・・・」

「私たちの無事な姿とか言うつもりならやめときなさいよ?ダサいから」

「やれやれサラちゃんは俺のことをなんだと思ってるんだか」

「阿保なかっこつけ」

「褒め言葉と受け取っておこう・・・ちなみにライカには走りながら上下にプルンプルン揺れてた胸をサラとニナには素晴らしい姿を見せてもらったからね、むしろ貰いすぎたくらいかな?」

「サイテー」×3

「ハイハイそれじゃあ宿代はいくら?これで遠慮無く貰えるでしょう?」

 若干納得いってないような顔をしながらも宿代を伝えてきた・・・アレかな?「私たちはそんなに安くないわよ!」って言いたいのかもしれないな。

 まぁ追加で出してもいいかもしれないけどさ・・・。


「うぅん?なんだろう」

 朝、まどろみながら意識がもどってくる。

「ふあぁ~あ!あれ?ここは?確か昨日は・・・あのまま寝ちゃったんだ」

 朝、冒険者ギルドに賑わいが出始めたころに目覚めた赤みがかった茶髪の美少年がそのきれいな青い瞳を持つ目を手でこすりながら呟く、向こう側で冒険者たちがワイワイやってるのが見える。

「お早うニコル、疲れてるようだし、まだ寝ててもよかったんだが・・・いや、やめたほうがいいかここも五月蠅くなってきたし2度寝には向かないな」

 と少年の耳の近くで聞きなれた声が聞こえる、長椅子に横向きで寝てて姿が見えてないのに声がしたということは・・・ニコルは首を横に回す、そこには燃えるような瞳の目がのぞき込んでいた。

「に!兄さん!なんで!」

 パニックになったニコルは自分の現状を理解して慌てて転がりながら起きる。

「お!器用な起き方だな、それだけ元気なら昨日の疲れも気にしなくていいかな?・・・あーでも丁寧に伸びしとけよ?この椅子ちょっと硬かったから」

 と笑いながら話す兄と呼ばれた青年。

「え?あっはい・・・あれ?僕昨日兄さんを待っててそのあとの記憶がない、寝てて起きたらレッド兄さんが膝枕してて・・・もしかして一晩中しててくれてたんですか?」

 と兄に確認する。

「ん?まぁやってたかな?枕代わりになるモノも他のが思いつかなかったし」

 といたずらが成功したって顔でニコルに笑いかける兄。

「そんな!なら起こしてくれればよかったじゃないですか!」

 なおも慌てているニコル。

「疲れてたみたいだしせっかく寝てるのを起こすのも可哀相だったからな、おかげでニコルの寝顔を堪能できたからいいさ・・・俺はブラコンに目覚めつつあるようだな・・・」

 と悪びれることもなく話す、後半は声が小さくニコルには聞き取れなかった。

「ダメですよ!一晩中膝枕してたってことはほとんど寝れてないってことじゃないですか!昨日僕より働いていた兄さんが僕の疲れを心配してどうするんですか!?」

「弟を気遣うのは当然だろ?これでも俺はお前の兄ちゃんなんだぜ?」

 今はなっと語尾につなげて笑いながら言う、ニコルは絶句する・・・今までにここまで自分を気遣ってくれたものがいなかったからだ。

 ニコルの母もニコルを奴隷商に売って、ニコルを生んで初めてよかったと思えたと大目に貰ったはした金をニコルに見せつつ言い放ったくらいだからである。

 思えばこの自分の兄を名乗りだした男はあった時から不思議な男であった、普通なら自分のような子供なんかただの足手まといでしかないのに、こうして気を使いながらも連れ歩き挙句に先に寝てしまった自分に膝枕をして自身はほとんど寝てない、しかもその理由が「弟を気遣うのは当然だろ?」の一言である・・・形だけの兄弟でしかないのに。

「さて、ニコルも起きたしケイベルに戻る前にどっかで飯にしようか?」

 と衝撃に絶句していたニコルにそんな提案をしといて返事も聞かないでさっさと歩きだす兄・・・ちなみにニコルは兄の本体がファルシオンであると知っているのだが、船旅中やケイベルの港町で兄が人並みに寝ているために、睡眠が必要なのだと勘違いしていたために若干話が食い違ってたりする。

「おはよー!まだここにいたんだ!今日はこの後どおすんのかにゃ?」

 と元気に挨拶してくるビーストの少女、昨日マントに裸という18禁な格好でいたために仕方なくニコルの持っていた客船にあった服をあげたニナという娘だ、因みに今もその服を着ている。

「おはよう、今日は今から朝飯にして終わったらケイベルに帰るところだ、そういうお前たちは?森に荷物を取りにでも行くのか?」

「食事ならご一緒してもいいわよ?なんならおごらせてあげるわ」

 とニナの横にいた昨日ニナ同様の格好だったため服を恵んであげたヒューマンの少女サラが何やらふざけたことを言っていたのでニコルが噛みつく。

「馬鹿なんですか?なぜ兄さんがあなた方に朝ご飯まで恵んであげなきゃいけないんですか?そうやってたかるなら、ホラ!そこにいる鼻の下伸ばしてあなた方を見ている彼らにでも恵んでもらってください!

 何より兄さんに対する言葉使いが不愉快です!」

「おおぅ、よくそこまで言えるなニコル・・・兄ちゃんちょっと引いてるぞ?」

 ニコルの言葉を聞いて兄が小声を漏らす。

「も~サラちゃん!そんないい方したらレッドさんはともかく~ニコル君が怒るのは仕方ないですよ~、ごめんねニコル君じつは昨日の一件で~お金なんかもほとんど無くなっちゃってて~昨日親切にしてくれたレッドさんに頼ってみようと思って来たんですよ~」

「まぁ飯くらいならいいけど昨日行った宿は飯代込みの宿じゃなかったのか?」

 と兄が質問するちなみにやたらのんびり話していたのが、昨日のゴブリン騒ぎでニコルの兄であるレッドにサラ・ニナの救助を求めたデモン種の少女ライカである。

「食事を用意してくれる宿にゃんてこの町にはにゃいよ~」

「じゃあオススメの店を紹介するからおごってくれないかしら?」

「まぁいいけど俺らがいなくなったらどうしていく気なんだ?」

 3人とも口を閉じて考え始める・・・どうやら考えて無かったようだ、そのことを察した兄がこんな提案をしてきた、

「なら俺らとパーティでも組むか?しばらくの間なら面倒見てもいいぞ?拠点はケイベルに変わるけど」

「兄さん!」

 当然ニコルは驚くまさかこんな足手まといになるであろう者たちを態々抱え込むと言いだしたのだから。

「まぁ俺から一つ条件が出るけどね」

「それは拠点が移ることじゃないわけね?」

「あ・・・んじゃ2つ・・・」

「・・・兄さん」

 いまいちカッコつかない人なんだなと苦笑する、結局彼はお人好しなんだろうとニコルは思う。

「ふふっ分かったわ、それじゃ二つ目は?」

「ニコルの剣の稽古に付き合ってくれないか?模擬戦に丁度いい相手になりそうだしさ」

 またニコルは絶句した、正直兄はこの少女たちが気にいったから誘ったのかと思って話を聞いていたのだが、まさかニコルの・・・自分の為だったとは・・・ニコルをダシに使っただけかもしれないのだが。

「ニコル君の稽古くらいにゃらいくらでもしてあげるよ!」

「そうね、その二つくらいなら別にいいわね」

「わ~い!これからよろしくお願いします~」

 と3人娘が了承の意を示す。

「おう!よろしく!んじゃあ改めて俺の名前はブレド・ファルシオン!敬意と親しみを込めてレッドと呼んでくれ!でこっちが」

「改めまして、ニコル・ファルシオンと申します、今後ともよろしくお願いします」

「ニナっていうにゃ前だよ!改めてよろしくね!」

「サラよ、しばらく厄介になるわね」

「ライカで~す!よろしくお願いしますね~」

 と一通り挨拶も終えて飯屋に案内される・・・移動中にニコルが。

「兄さん・・・気を使わせ過ぎてすみません、僕はもっと強くなってお役に立てるようになります見ていてください!」

 決意を新たに自分がこの最初の印象から徐々にお人好しな印象に変わってきた兄に必ず報いようと、兄とともに今、ここにいれることの奇跡を感謝し朝日を全身に浴びて歩き出した・・・飯屋に向けて。

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