始まりの話
1~4話を纏めました
ほとんどそのままですw
ある日の夕暮れ時
人気のない山道の途中の道から少し外れたところにある木の枝の上
人知れずこの世界からおさらばしようとしている少し歳の行った特に特徴もない黒いジャージ姿の男がいる。
彼の名は小春潮歳はついこの間30に達してしまった、そう三十路である。
彼がこのようなところでこの世からグッバイしようとしているのにはいろいろな理由が ある。
1つ1つ説明しているとこっちが鬱になりそうなのでいろいろ省くが一番の理由がついに魔法使いになる条件が満たされたからである。
といってもこの男、実はここまで来て木の枝にロープをくくっては『何か音がした』や『誰かの気配がする』など言って言い訳してはロープをほどいたりしていまいち踏ん切りをつけきれていない。
内心では誰かが止めてくれるのを待っているのだ。
まぁ誰にも言わずいなくなったからと心配してくれる友達もいない彼を都合よく止めてくれるものなどいないだろう。
そもそも彼に相談できるような友がいれば・・・いや、こればかりは今更である。
遂に彼は決意を決め唇をかみロープの輪を首にかけ枝から跳んだ!
勢いよくロープがぴんと張り・・・結び目のほど近い枝の部分がいい音を立てて折れる。
彼は一度勢いが消えたとはいえそれでも再度起きた落下の衝撃で強く背中から落ちる。
一瞬意識がとんでいた彼だが仰向けに寝転がる形の体制ゆえにどうなったのか理解する、そして目から涙があふれ出してきたようだ。
その涙は果たして助かった安堵からか?それとも助かってしまった落胆からなのか?
「どうして・・・俺はこうも・・・」
声にならないように顔を手で覆い泣き始める。
が、急に辺りの音が消え耳にひどい耳鳴りが始まる。
彼もいきなりのことに戸惑い辺りの様子を窺い始める。
「景色が・・・歪んで?・・・あっ!」
彼は何かに気づいたようなしぐさをして目にあふれた涙を袖でぬぐう。
「チュウニビョウじゃあるまいし、景色が歪んでるって(笑)・・・ハハハッハァァァ!?」
涙をぬぐってもいまだ景色が歪んでいるというよりもどんどん歪みはひどくなる一方だ。
「なんだよぅ・・・どうなってんだよぅ・・・頭も打ったし幻覚が見えてんのかよぅ・・・耳もおかしいし・・・」
依然音が消えているためと不安から彼の耳はすさまじいほどの耳鳴りが起きている。
と、突然!その声が彼の耳に、否!頭に直接響いてきた!
『わが声に応えよ、絶望の淵に嘆く者よ』
酷く低くそれでよく通る声が小春潮の頭の中に響いた、まぁ頭に直接響くならよく通る声も何もない気もするが。
そして小春潮は声を漏らす
「今度は幻聴か?尊大な物言いだな我が頭ながら偉そうだな?・・・ったく、”うるさいよ!”」
と 彼は、小春潮は返事をしてしまった・・・それは自分の幻聴に対しての言葉のはずであったが自分の頭に響いた声に応えてしまったのだ・・・。
・・・そして景色は暗転する
私、小春潮は事この状況の把握に小一時間かけたいと思っております・・・はい、ダメですね!分かります。
正直何が起こっているのか全然分かりません、いや、何となく分からなくもないけど・・・
視界が一瞬で黒く塗りつぶされた瞬間の浮遊感、次に木々に囲まれていたはずなのに今いるところは薄暗い石造りの建物の中で俺が立っている場所には変な布が敷いてあり少し離れた場所には眼力のすごい爺さんが杖を片手にローブ姿で立っている、因みに俺はジャージ姿に端に木の枝がついてるロープを首に巻いている。
さて、変な布といったのは---おそらく大体の人が見たら興奮してしまいそうな幾何学模様が描かれていて割と・・・どう表現したらいいのか迷うけど割と部屋の大きさ自体が大きいんだけどこの布のでかさが部屋の6分の1くらいあるんだよね、そして変な布と揶揄した一番の理由がなんとこの布ったら模様から割と強い光が漏れ出てるように出ている、んー暗い廊下でどこかの部屋の戸の隙間から光が漏れてるような感じかな?
と いったところで自分の状況を考えてみるとアレじゃない?アレ!厨二心あるものなら誰しもがあこがれるアレ!異世界召喚!
やーどうせ召喚されるんだったらもっと若い時に召喚してくれたらよかったのに、こんな既にいろいろ完成しちゃった三十路の俺なんか召喚しても魔王なんか倒せないよ?
ん?いるのかな魔王?てかこの爺さんのが魔王じゃね?
普通、勇者呼ぶのはかわいいお姫様か巫女さんとかでしょ?
あれ?やばいんじゃない?
さっきからあの爺さんこっちにいろいろ話しかけてるみたいだしちょっと何言ってるか聞いてあげるかな?
「○×!◇□◎◆○!¥#%%*\\」
うん・・・分からん、何言ってんのこのジジイ、日本語しゃべれ・・・無理だろなー予想しとくべきだったけど言葉わかんねー・・・
えーこういうときって大概異世界チートで自動翻訳って便利なものが多かれ少なかれあるんじゃないのーコミュニケーションの初めの一歩から失敗じゃーん・・・
いや?こっちからの言葉なら理解してくれるかも!よし!
「ジイサンノコトバ、ワッカリマッセーン」
どうだ?通じたかな?俺だったら今の言い方イラッとするだろうな・・・怒らせたかも・・・腕組んでぶつぶつ言いだしたし・・・
『これならわかるか愚図?』
突然頭に転移直前に響いた声が鳴り響いた!
「どわっ!何っ!何事っ!?」
『ふんっ!騒ぐなっ!みっともない、ワシは今お前の前にいるナイスミドルじゃ、今お前の頭に直接ワシの言葉を伝える術を使ったのじゃ』
ナイスミドルと来たか・・・いや頭に響く場合は俺の脳内で勝手に翻訳されるのかもしれない。
『それとこの術はお前に分かりやすく言葉が変換されるため場合によってはワシにとって不本意な言葉になってる場合がある・・・あまり不本意な受け取り方をするなよ?』
おお、自動翻訳俺仕様か(笑)ナイスミドルは褒め言葉だし別にいいよね(汗)。
『・・・まぁいい、ワシの名はアーノルド、錬金術師として錬金術を駆使して究極の・・・いや至高の・・・うーむ・・・頂に至る・・・うむ!頂に至るための魔導武具の作製を日々追及しておる』
あれ?錬金術師?せめて召喚術師とかだと思ってたんだけどな?ふむぅ?
「錬金術師が何の用で俺をえーと・・・ここへ召喚したんですか?あっ!召喚したのは別人で応対しているのがアーノルドさんってだけですか?ハハハ」
途中でその可能性もあることに気づいて愛想笑いをしてごまかす、ふふ日本人だね俺。
『ふんっ!召喚したのはワシじゃ!それよりもお前は自己紹介もできんのか愚図がっ!』
キレられた・・・いやまぁ初対面に自己紹介するのは当然だけどさそんな怒んなくてもよくない?
悪いのは俺だけどさー・・・ん?勝手にこの場所に召喚しといてこの扱いって俺そこまで悪く無くね?
なんか腹たってきた・・・
「あのさー何の用で俺よんだのかは知らないんですけど、その態度はないんじゃないですか?俺ってば自分の今の状況を整理するのも一苦労なんですよね、いたわってくださいとまでは言いませんけど少しくらい大目に見てもいいんじゃないでしか?」
最後噛んだ・・・ま、まぁ言いたい事言えたしこれでいいでしょ・・・噛んだけど・・・。
『ふんっ!それでっ?おまえの名は?』
なんなんだろうねこの老人、はぁもういいや。
俺もコミュ力が希薄な方だけどさこの爺さんもすごいね、あれかなB型かな?なんてね。
もうこのままじゃ事態も動きそうもないしこれ以上怒らせたらこっちもイライラが感染してきそうだからさっさと自己紹介でもするかな。
「はぁー、初めまして小春潮といいます、ああっと・・・こっちじゃ姓名は逆でしたか?まぁいいですよね、私の国じゃこの順ですし、職はここに来た以上いまさら言ってもしょうがないでしょうねハハハ。」
何故か最後に無意識で愛想笑いしてしまう、やっぱり日本人なんだねー俺ってば。
『ふんっまぁ言いだろう・・・小春潮か、それでお前をこの世界ハモニアによんだのはお前を我が刃にするためじゃ。』
お!やっと話が進んだよまったくその一言出すのにどんだけかけるんだよこの爺さんはもう!っと、それはまぁいいや刃ってどういう意味?あっ!錬金術師ってことはあれか、後衛だから(たぶん)前衛としてファイター的な奴が欲しいと、でコミュ力も大概だから召喚した奴を壁に使おうと適正とか見ないで・・・なら壁とか盾とか言えばいいのにカッコつけて刃にってほんとこの爺さん大概だわ。
「えーと、壁役とかちょっと難しいんじゃないかなーと思うんですけどどうせでしたらもっと若くて能力の伸びもいい子とかにしたほうがいいんじゃないですか?」
とりあえずNOと言える日本人になろう、この世界にて第2の人生を新しく開くために!・・・言葉の壁はどうしようかな。
『ふんっどのみちお前に選択の余地はあるまい素直にワシの刃になるといえばいいのじゃ。』
この爺さん鼻つまってんの?毎回人の頭ん中でふんふんしないでほしいんだけど・・・
はぁでも確かに選択の余地はないかな、どうせ召喚術だの錬金術だのの世界じゃ文明レベルもたかが知れてるしそんな中一人でフラフラして獣や盗賊に会えば・・・あらやだ怖いじゃない。
でも爺さんの刃とやらになっても似たようなもんなんじゃないかな?
いや、少なくとも現地人がいるのは大きいかな?
そういや腐っても異世界召喚だしなんか戦闘系でチートなスキル的なものがあるんじゃないかな?
そうなるとステータスとかで見れるんじゃないかな?どうにか見れないかな?よし一八だ!
「ステータスオープン!」
・・・
「メニューオープン!」
・・・
「ヘルプ!」
・・・
俺の心が壊れそうだ誰かヘルプ!
真っ赤に染まった自分の顔を両手で覆って悶えていると
『ふんっうるさいぞ愚図何をいきなり叫んでおる!後、その動き気持ち悪いからやめんかっ!それから早うわしの刃になるといわんか馬鹿モンが!』
この時点で労働条件は最悪だなって思えてる自分はゆとり世代だからなのかな?三十路だけど・・・
まぁ野垂れ死には嫌だししょうがないかな。
「分かりましたではあなたの刃になりますよ。」
といったら今度はこの爺さん
『ふんっでは宣言しろ!私、小春潮はその身を刃としワシの敵を切り喰らい自身を錬磨し続ける剣となることを誓う!と高らかにな』
なにそれ恥ずかしい言わなきゃダメな感じ?ダメな感じなんだろうね、これってパワハラで訴えられるんじゃ・・・どこにだよ・・・しょうがないか。
「はぁ分かりましたよ言いますよ」
その時、これから起こったことに一生、いや永遠に後悔することになるとはその時のジジイとの対話や今自分に置かれている状況そしてこれからのことなどを考えていた俺には無かった。
ほんと嫌になるなこの時の俺・・・
「んじゃいきますよ~”私、小春潮はその身を刃とし我の敵を切り喰らい自身を錬磨し続ける剣となることを誓う!”」
宣言した・・・恥ずかしい、顔が熱い俺のライフはもうゼロに近いだろう。
あれ?思い返したら一文字違ったような・・・まぁいいかな。
と 思った瞬間に体が鋭い痛みを感じ始める爪切りでどんどん深爪をしていってるような体がどんどん削られていくようなそんな痛みを感じはじめ自分の両手を見ると光る粒子状の物が出始めている。
いや、両手だけじゃなくどうやら全身から出ているようだ、だって全身痛いもん。
あれ?なんか余裕が出てきた人間って順応が早いって聞くけどほんとだね(笑)・・・笑えんけどね。
「これはなんですか?爺さんこれはどうなってんですか?」
おそらく、・・・いや確実に答えを知っているこのジジイに答えを聞く答えてくれたらもうけって気もするのでまぁ期待はしてないけど・・・半分くらいしか。
てかジジイここにきてメッチャ笑顔になってる、うわームカつく顔~
『くふふふふ、お前が宣言したのではないか”私、小春潮はその身を刃としワシの敵を切り喰らい自身を錬磨し続ける剣となることを誓う!”とな、つまりお前はこれからワシが創り上げた錬成魔剣の魂となるのだ!ハァっハッハッ!』
会話に少し違和感を感じつつというか一文字の間違いがきちんと翻訳されてないことに気づいていたのだが指摘する気も起きないくらい自分の痛恨ともいえる失敗に眩暈がしていた。
また俺はこんな、相手の真意もわからずに適当なことを言ってこんな取り返しのつかないことをしてしまったのか!
いや?意外と取り返しつくかもしれないじゃん?訊いてみよ!
「爺さん!これって元に戻れたりするんですよね?」
直球勝負!
ジジイが優しく微笑んだ!いけるか?
『もちろんじゃ』
おおっ!もう鼻がつまってないのか!
『お前の元の姿は剣となるのだからなぁ!』
息がつまる・・・ジジイが微笑みから嘲笑うような顔に変わる。
既に体の6割ほどが粒子となって浮いている状態になっている痛みはもう感じない、序盤で痛覚は麻痺でもしたんだろうか?ただ全身が熱い、これは痛みからじゃないようだ。
これは内側から熱になって現れるほどの感情のせいだろうと思う。
身を焦がすほどの怒りがジジイに向かい、憎しみが浅慮だった自分に向かい、逆に浅慮で行きつくところにまで行きついた自分に憤慨し行きつかせたじじいを憎悪する。
感情がコントロールできない、する気もない、ファンタジーの世界ならこのジジイ呪い殺せるだろうこんだけ俺の憎悪をぶつけているんだから!
そして最後に残ったのは以外にも唇付近でもはや動かす事も出来ないはずなのに消える直前何かを言おうと動いた。
だが対面していた爺さんは、
『ふんっ往生際の悪い奴だ、所詮異世界でも孤独に死を迎えるだけの役立たずの愚図の分際で無駄な抵抗しおって、いやっ愚図だからここまで無駄に抵抗したのか・・・クッハァッハッハッハッ』
気が済むまで笑うと表情を整え
『異世界では何故かある一定の年齢を過ぎるとスピリット体を構成する魔力量が異常に跳ね上がるものがいるが総じてあのような愚図が多いのはそういった共通項が必要なのだろうな、だがもう奴らとはかかわることもあるまい今回完成する錬成魔剣こそ頂にいたり神々すら屠り続ける剣となろう』
そして爺さんは気づく
『もうこの念話術も改良する必要もないのう、というか効果が一定期間で改良の度に効果時間が変わるのも考え物じゃったなー。』
深く溜息を吐くそして手に持つ杖で強く床を3回たたく。
すると杖が漆黒の刀身を持つ一振りの剣となった。
そして剣を逆手のまま掲げ老人とは思えないような、否、老人だから出せるような低く地面から響かせるような声で一言
『集い魂となれ!』
その言葉と同時に部屋に満ちていた粒子が次々に剣へと集まり刀身、柄、鍔ところかまわず溶け込んでいく。
そしてすべての粒子が溶け込んが時老人がほくそ笑みながら
『ふんっこの錬成魔剣の名はお前の名の響きに似せてやろうかのぅクックックッ』
少し考えながらピンときたこの名前にすることにした老人は剣の刀身の横っ腹に空いていた手で持ち両手で水平に持ちながら名前を叫ぶ。
『これにあるは我が創り上げし神々すらも屠り続ける人の手による錬成魔剣!銘をファルシオンとする』
と 誰もいない部屋で高らかと宣言する。
話は変わるがその銘はコアにされた彼の世界にてかつて戦闘用としてではなく安価な生活用具としてそこらの一般人にも使われていた剣の名前でもあったのはそこらの一般人であった彼に対して運命が与えた皮肉なのかもしれない。
誤字脱字優しく教えてくれたら幸いです。