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鳥の娘 ~見えない明日を、きみと~ ≪改稿版≫  作者: 灯乃
神々の章

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42/85

思春期の少年は、一度はスキンケアにトライするものなのです

(ったく……なんだよ、全然元気そうじゃねえか。つうか、何コイツこんないい感じに日焼けしてんの、前よりがっつり鍛えたカンジになってんの、なんでまたにょろっと少し背ー伸びたりしてんの。しかも座ったときの目線が変わらないって、伸びたの全部脚とかそーゆーことですか、あーなんかムカつくなぁオイ)


「なんか言ったか?」

「イイエー?」


 衝撃から立ち直るなり、少々どんよりしながら話があると言う翔に誘われるまま、晶は同年代の少年少女で溢れ返るファストフード店にやってきている。


 てめえのオゴリだからな、と睨みつけると、翔はあっさりうなずいた。


 この際だと普段なら手を出さない『デラックス』、『W』という看板を誇らしげに背負っているモノを片っ端から注文してやる。


 翔はいやな顔ひとつせずにそれらと自分のコーヒーを買ってきて、トレイを晶の前に置く。


「……それで?」

「あ?」


 ポテトに手を伸ばしながら、気になっていた問いを向ける。


「おまえ、ヨメはどうしたのよ、ヨメは」

「……一ノ瀬。何がどうなってそんな話になってんだか、オレにはさっぱり意味不明なんだが」


 呻くように言う翔に、晶はアホか、と半目になる。


「あれだけ鬱陶しく周囲に砂糖吐かせておいて、いきなりふたり揃ってガッコ辞めたら、ふつーそーゆーハナシになんだろ。つーかむしろ、そうじゃねえならそっちにビックリだわ。なんだ、フラれたのか? そんでひとり寂しく戻ってきたのか、気の毒に」


「フラれてねえ。毎日朝晩メールと電話は欠かしてねえし、愛してるっつってるし、この頃優衣も『大好き』とか超! 可愛いこと言ってくるようになったし、それでもいろいろ物足りなくて最近のーみそがヤバい妄想吐き出すようになってきてっけど。とりあえず、オレから優衣を奪おうとする輩はさくっと存在そのものを消滅させてやる予定だから、今後フラれる予定もない。以上」


 ……とりあえず、据わった目つきで淡々と言葉を吐き出す翔が、見た目以上に遙かに病んでいるのはわかった。言っていることが今まで以上に鬱陶しいし、ガチで重い。


 なんだか知らないが、どうやら最近、愛しいカノジョとあまり会えていないらしい。


 それまでほとんど制服姿や道着姿しか見たことのなかった相手が私服になって現れると、普通なら妙な違和感を感じるものだ。


 だが、翔はまるでずっとこうして生きてきましたと言わんばかりで、むしろ今では高校の制服を着ているところの方が想像しにくい。


 自分にはもう親や教師に庇護されている証である制服など必要ないのだと、以前とは明らかにどこかが違う、妙に落ち着いている隙のない仕草や、子どもっぽさを感じさせない瞳が告げている。


(んだよ……。自分だけ大人になったみてえな顔しやがって)


 それとも、本当に自分たちより一足先に「大人」になってしまったのだろうか。


 ズズズ、と音を立ててメロンソーダを啜る。


「おれら的には、おまえが本能と煩悩を突っ走らせて、うっかりお子ができちまったもんだから、どこか遠くの街で若夫婦やってますーってのが本命だったんだけど」


 晶がそう口にした途端、コーヒーに口をつけていた翔が思いきりむせた。


 吹き出しこそしなかったものの、苦しげにじたばたもがいている姿は、やはり見覚えているクラスメイトのままだ。ざまぁ。


「そ……っ、そこまでアホくねえわ!」


 どうにか立ち直ったらしいが、そういうセリフはあの頃の鬱陶しい己の姿をきちんと思い出してから言ってもらいたいものである。


「いや、それくらいふつーにありそうな勢いだったし」

「つうか、まだそこまで手ぇ出してねえし!」


 真っ赤になって喚いた翔に、晶は心底驚いた。


「うええ!? マジかよ、あんだけ人目も憚らずイチャこいてたくせに!?」

「青少年の純情ナメんな、そう簡単にんなことできたら苦労しねえっての!」


 晶は一瞬、己の耳を疑った。


 言われた言葉の意味を正しく理解した瞬間、くわっと目を剥く。


「……謝れ! 今すぐ世の中の正しい純情少年に謝れ! おれも含めて!」


 一応公共の場であることを鑑みて、声を抑えつつぎゃあぎゃあと言い合う。


 あまりにも不毛な言い争いに虚しくなったのか、翔が軽く片手を上げて制してくる。


「だから、そんな話しにきたんじゃねえんだっつの。……あー、ちょっと変なこと言うかもだけど、引くなよ?」


「レベルによる。今までおまえがしでかしてきたアレコレ程度なら、許容範囲内だ」


 晶の心の広さをありがたく思うよう言ってやったのに、翔は「あっそう」とスルーしやがった。感謝の心を知らないヤツである。


「おまえさぁ」

「んだよ」


 言いかけた翔は、何故か晶の背後にちらりと視線を向けた。少し迷うようにしてから、ぼそぼそと口を開く。


「いや……うん。やっぱいいわ。――コレ、オレの新しいケータイ。何か困ったことあったら、連絡寄越せよ」


 妙に歯切れ悪く言って、メモ帳に走り書きした携帯端末のナンバーとメールアドレスを押しつけてくる。


「なんだよ、困ったことって?」


 他人様に言えない困ったことなら、まさに現在進行形である。


 だが、さすがに再会したばかりの悪友に、脳の具合を心配されるようなことは言いたくない。


 翔は小さく息を吐くと、晶の繊細な心臓を止めるようなことをさらりと口にした。


「一応言っとくけど、おまえにまとわりついてるもふもふしいそいつら。オレ、見えてるからな」

「……は?」

「まぁ、おまえは昔っから犬バカだったもんな。なんかもう慣れてるみたいだし、問題ねえよな」


 うんうんと勝手にうなずいた挙げ句、翔は邪魔したなと言いながら席を立つ。


「そーゆーわけで、オレの用はそんだけだ。じゃあな」


(じゃあな、って……)


 寝不足の思考回路がぐるんぐるんと渦巻いて、次第にそれが高速回転しはじめる。


 停止していた言語中枢が、エマージェンシーモードで再起動。


「……アホかあああああぁーっ!?」

「へ? ……っておい、大丈夫か!?」


 空手部にあるまじきことに、晶は翔の背後から力一杯タックルをかました。


 腹立たしいことに、翔は晶がその胴体にしがみつく寸前、すいと半歩横にずれた。


 結果、晶がその勢いのまま店の床にダイブする羽目になったのは、言うまでもない。


(なんっだその反射神経は、後ろに目がついてんのか、どこの武士だ!)


 べしゃっと景気よくカエルよろしく床に張りついた晶は、すかさず起き上がった。


 軽く身を屈め、気遣わしげな表情を浮かべている翔のジャケットを、むんずと掴む。


「問題ねえわけねえだろおおおぉが!? アホだなおまえ、本格的なアホだろう!? おれがどんだけ、自分ののーみそがおかしな電波を受信するようになっちまったのかーとか、やっぱお脳の病院行った方がいいのかなーとか、寝不足で授業中ツッコミしにくい数学やら物理やらで本格的に死にそうになってたり、目の下のクマやらお肌の荒れ具合が気になったりして悩んでたと思ってんだ!?」


 翔がおののいた顔をして、半歩下がる。


「肌荒れって……。おまえ、スキンケアとかしてたのか……」


 晶はえっへん、とふんぞり返った。


「ちょっとノリで言ってみただけだ! 実は三日で飽きた!」

「そ、そうか……」


 翔が若干引き気味になっているが、晶は彼のジャケットを絶対に離すもんかいと握り締める。


「あぁ……っ、これでようやく、みんなの愛くるしい耳のぴろぴろや、前足のくいっと加減や、尻尾のふっさりもふもふについて語り合える相手が……!」

「合わないぞ!? 合わないからな!?」

「なんだとおおおぉ!?」


 晶が彼らのらぶりーなチャームポイントについて、更に熱く語ろうとしたときだった。


「――一ノ瀬、晶くん?」


 その場の喧噪にあまりにそぐわない、ひやりと温度のない声が響く。


 振り返るとそこにいたのは、ラフなジーンズ姿ながら、華奢な作りの眼鏡越しにも驚くほど怜悧な美貌が見てとれる青年だった。


(アルビノ……?)


 淡く金色がかった白髪と病的なまでに白い肌。


 何より、眼鏡の奥で軽く眇められている瞳は、血の色をそのまま透かした濃いピンク色だ。


 それらが先天的に体組織の色素を持たずに生まれた人々の特徴であることは、知識としては知っていた。


 だが、そのことをどうこう言う以前に、晶が何より気になったのは――


(……なんっでこんな美人が男デスかー!?)


 これが女性だったら、一目でフォーリンラブしそうなほどの超絶美人さんだというのに、その胸元は悲しいくらいに真っ平らだ。


 こんなに女王さまのコスが似合いそうなクール系美人だというのに、男だなんて残念すぎる。


 そんな晶の内心での絶叫など知らぬげに、眼鏡美人は気怠げに背後を振り返ると、いかにも面倒そうな仕草で顎をしゃくった。


「おら、この坊主だろ? ったく、おれはてめえの便利屋じゃねえっつうの」

「っせェな! オレは、てめェみてえな真性の変態とは違うんだよ!」


 そんなことを喚きながら人混みをかき分けるようにして現れたのは、地味なスーツ姿の青年、とギリギリ呼べるだろう年頃の男だった。


 幼い子どもに「おじさん」と呼びかけられ、「お兄さん、だろ?」と言っているところが容易に想像できる感じの、眼鏡美人とはまた違ったタイプのイイ男である。


 男くさい、とでもいうのだろうか。


 少年漫画に必ずひとりは出てくるアニキタイプの、きらっと額に輝く汗がムカつく系だ。しかめっ面をしていても美形度が減ってないとはどういうことだ。


 アニキ男に「真性の変態」呼ばわりされた眼鏡美人の額に、すかさずびしっと青筋が浮く。


「ほほう……。おまえがどうしてどのように変態じゃないのか、ここにいらっしゃる善良な市民のみなさんに判定してもらうとするか」


 アニキ男は、即座にコメツキバッタになった。


「スイマセンゴメンナサイ、カンベンシテクダサイ」

「よし」


(早いよ!? っていうかアナタ、変態なのは否定しないと!?)


 なぜだろう。ムカつくほどの美形が変態だと、なんだか悲しい。


 そこはかとない哀愁に晶が打ちひしがれていると、美形アニキな変態男(確定)は、翔と晶に視線を向けた。


 納得したようにうなずいて、晶に向き直る。


「一ノ瀬晶くん。――少しきみに尋ねたいことがあるんだが、構わないだろうか?」


 そう言って相手が背広の内ポケットから取り出したのは、ドラマの中ではしょっちゅう見かけるが、晶の人生設計の中では目にすることはきっとないというか、あったら困るものベストスリーに間違いなくランクインする物体。


 手帳と名前が付いているくせに手帳部分のない謎のモノ――即ち、警察手帳であった。


(変態でも警察官になれるんだ……。知らんかった)


 いくらなんでも、警察に名指しで話を訊かれる覚えはない。


 一体なぜ、と固まっていると、翔がすいと晶の前に割って入る。


「警察の方が、こいつに何を聞きたいんですか?」

「きみは?」


 翔は相手の訝しげな視線にまったく怯む様子もなく、淡々と応じる。


「神谷といいます。……あなたの所属をうかがっても?」

「――警視庁刑事部捜査第一課特殊事件捜査室第二分室の桐原だ」


 あからさまに「なんだこの生意気なガキは」という顔をした桐原に、翔は少し考えるような間のあと、ゆっくりと告げた。


「『あなたの卒業式の思い出はなんですか?』」


(はぁ?)


 一体全体、翔はいきなり何を言い出したのやら、と晶は目を丸くする。


 しかし、その問いかけに桐原は盛大に顔を引きつらせ、彼の隣で軽く腕組みをしていた眼鏡美人も驚いたように目を瞠る。


 桐原は「く……っ」と指先で眉間を抑えると、ひどく押し殺した声を絞り出した。


「……殿だ」

「……殿、ですか」


 なぜか翔が、憐憫の眼差しを桐原に向ける。


「ああ……。オレの人生で、最悪の思い出だ。……ふっ、スマン、忘れてくれ。過去を嘆いたところで、人生の何が変わるわけではないものな」


 翔がぺこりと頭を下げた。


「すいません。なんだかオレ、痛々しい過去の古傷を抉ってしまったみたいで」

「いや、気にするな。この世界では、誰もが通る道だからな……」

「桐原さん……」


 翔と桐原の間に、妙に理解し合う男同士の空気が流れる中、「おい」と水を差したのは眼鏡美人。


「そういうことなら、話は早い。こんなとこじゃろくに話もできねえし、とりあえずおまえらウチに来い」

「アキオ?」


 不思議そうな声を上げた桐原に、眼鏡美人が軽く肩を竦める。


「なりゆきだ、仕方ねえ。――なんだか名前も似てるし、よろしくな、アキラくん? おれは明るいに糸偏の緒で、明緒」

「よ、よろしくお願いします……」


 にっ、と男らしく太い笑みを浮かべると、その超絶眉目秀麗な顔が一気に親しみ深いものになるのは意外だったが――


(本当に、なんで男なんですか明緒さん……!)


 男のくせに、ここまで好みにどストライクな美人顔をしていなくてもいいじゃないですか、と少々いじけたくなった晶であった。


 いくら他人のことには興味のないお年頃の高校生で溢れかえっている店内とはいえ、さすがにそろそろ自分たちに周囲の視線が集まってきているのがわかる。……その原因のほとんどは、そこにいるだけで目立ちまくりの明緒のせいだろうが。


 それから、晶が彼の言うままに店を出たのは、翔が当然のような顔をしてその提案に従っていたからだ。


「おい……。神谷」


 掴んだジャケットの裾を引っ張ると、翔は昔のようにへらっと笑って「大丈夫大丈夫」と軽く手を振る。


「悪いようにはなんねえから。多分」

「多分かよ!」


 確かに、桐原が警察の人間である以上、市民の義務としてそのお仕事には惜しみない協力をせねばならないとは思う。


 だが、やっぱりどう考えても、晶に思い当たるフシなどまるでない。


 内心首を捻りながら、すぐそこだからと言う明緒と桐原が何やら話しながら先を進むのについていく。


 そうして桐原の運転する車に乗って連れていかれたのは、特急の止まる駅からほど近い場所に建つ四階建ての建物だった。


 まだ築数が浅いらしく、真新しく近代的なエントランスは広々として明るい。ちらりと入り口に掛かっていたパネルを確認すると、「C.B.探偵事務所」と書いてある。


(警察と探偵って……。おぉう、なんちゅー刑事ドラマの王道展開!)


 それにしても、探偵事務所というのはもっと大々的に表札なり看板なりを掲げているものだと思っていた。


 ここはあの看板を見過ごしたら、なんの会社なんだかさっぱりわからない。むしろ、普通の居住用マンションに見えるくらいだ。


 こんな様子で依頼人が来るのだろうか、と素朴な疑問を感じながら二階の事務所に入ってみると、ゆったりとした空間はどこぞのカフェのような洒落た佇まいであった。


 大きな窓から差し込む陽光に、観葉植物の緑が映えて実に美しい。


「ちょっと待ってなー。今、茶ー淹れっから」


 それから、十分後。


 明緒が奥から盆に載せて持ってきたのは、見るからに滑らかな白磁が高級そうなティーポットと、いわゆるアフタヌーンティーセットといわれるのだろう、三段重ねのアレだった。


 下の皿には美味そうな具だくさんのサンドイッチ、真ん中にはこんがりきつね色のタルトやキッシュ、一番上の皿には色とりどりのクッキーやマカロン。


 ――ここで笑い出さなかった自分を褒めてやりたい、と晶は思った。


(に……っ、似合いすぎ……っ)


 ここは本当に一体、どこのカフェなのだろうか。黒い腰巻きエプロンが似合いすぎである。


「急だったもんだから、あり合わせで悪ぃんだけど」

「……おまえ、また腕を上げたんじゃないのか? どんだけヒマなんだ」


 桐原の言葉に明緒がやかましい、と眉を寄せる。


 それは要するに――


(これって、手作りデスかー!?)


 なんなんだ、一体どこまでハイスペックなんだ、と晶は目を丸くする。


 美人で料理上手でインテリアのセンスも抜群とは、このひとは世の中の女性陣にひとりで喧嘩を売りまくっているんじゃないだろうか。


 香り高い紅茶の色も、実に美しい。


 こんなことなら翔にファストフードをあんなに奢らせるんじゃなかったと思ったが、男子高校生の胃袋というのは、世の母親たちが「あれは絶対、四次元に繋がってるわ……」と一度ならず戦慄するモノなのである。


 その例に漏れない晶も、はじめてナマで見るアフタヌーンティーセットに感動しつつ、「遠慮しないで」と言われるままに手を伸ばす。


 最初のスモークサーモンとアボカドのサンドイッチに「うま!」と叫び、海老ときのこのキッシュに「何コレ、こんなん食ったことねー!」と目を瞠り、あんまりいろいろな種類がありすぎて、一体何で着色しているんだろうと悩んだ末に、結局選んだ無難なチョコレート風味のマカロンの上品な甘さに感涙する。


 うまうま、と幸福感に満たされていた晶は、向かいの席に腰かけていた桐原がじっと見つめてくる視線に気づいて首を傾げた。


「あ、スイマセン。そういや、なんかおれに聞きたいことがあったんですよね?」


 出されたものがあまりに美味なものだから、うっかりもっしゃもっしゃとぱくついてしまった。


 隣の翔からの呆れ返ったような視線は、気づかなかったことにする。


「いや……」


 なんだか、桐原の歯切れが悪い。


 そんなに言いにくいことなのだろうか、と晶が不安に思ったところで、翔が溜息混じりに口を開いた。


「桐原さん。あなたがどんな事件を追っているのかは知りませんが……。多分、コイツは無関係だと思いますよ」

「む……」


 桐原が困ったように眉を寄せる。


 翔は一度こちらに視線を寄越してから、再び桐原に言葉を向けた。


「正直なところを言うと、オレの仕事は『見え』はじめたばっかのコイツのケアです。といっても、ご覧の通りの図太さなんで、上にはしばらく静観してみると報告するつもりだったんですが……。こんなふうに警察の方から接触があるというなら、話は変わってきます。詳しいお話を聞かせてもらうわけにはいきませんか?」


(は? 何ソレ?)


 きょとんと目を丸くしている晶を尻目に、桐原は何ごとかを考え込むように腕を組む。


「タクト」


 そこで、それまでずっと黙っていた明緒が口を開いた。


「バカの考え休むに似たりだ。余計なことを考えとらんで、とっととさっさと吐いてしまえ」


 酷い言いようである。


「おまえなあああぁ!」


 桐原が喚くが、明緒はどこまでも涼しい顔だ。


「ったく、これだからドラマの影響でSATを目指すようなバカはいやなんだ。おまえのようなヘタレが、エリート揃いの警備部でやっていけるわけがねえだろう」

「やってみる前にトバされた人間に、そういうことを言ってくれやがりますか!?」

「あー、うるせーうるせー」


(……このふたりの関係も、なんだかわからんなー)


 もの凄く仲が悪そうなのに、随分互いのことをよく知っているようでもある。


 しばらく「うぬぬぬぬ」と唸ってから、桐原は何かを諦めたように溜息をつくと、どこか遠いところを見ながら語りはじめた。

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