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8 訃報と

 神様というものは意外と多忙なのである。

 自分の管理下にある世界を見たりがその主な仕事になるが、力があればあるほど管理する世界は増え、仕事が増える。

 里紗のもとを離れて、僕は別の世界にやってきていた。


 この世界の科学はほとんど発展していない。

 銃もなく、核兵器もない。


 神の中でも核兵器というのは嫌われ者である。

 何しろ、核兵器は一つだけでも多くの命を途絶えさせるのだから。

 ちょっと減っただけで大きな影響を及ぼすものがあることを人間は理解していない。

 だから、核兵器のないこの世界は、神にとって監視のしやすい世界だった。


 そんなことを思いながら仕事をしていた僕に、複数の部下が血相を変えて飛び込んできたのは僕が留守し始めて2日目の午後。




 伝えられたのは、里紗の訃報だった。




 それから一日間。その間の記憶が全くない。































 自我を取り戻して初めに見たのは、母上の顔。

 周りには何もなかった。






「…瑠璃。貴方は……恋をしたのね」

「……」

「聞きました。神としての義務を果たすために向かった地球で出会った女性の元へ毎日出掛けていたそうですね」

「……」

「瑠璃。私は怒っているわけではないの。私もまた同じように、地球で貴方のお父様に出会ったのだから」

「……はは、うえ」

「恋した相手とまた会いたいでしょう」

「……」

「彼女の魂に細工をしました。きたるべき時が来れば彼女は前世を、貴方と出会った時の記憶を思い出すでしょう。後悔したくなければ、彼女が生まれる世界を上手く管理しなさいな。もう、後悔したくないでしょう?」

「魂に、接触するのは」

「我等神でも禁忌とされている。でも、何事も例外というのはあるのですよ」

「れいがい?」

「そう。いつかはわかるでしょう。少しだけ、休んで、……後悔しないようにしなさい」

「……はい」


 可愛い可愛い息子。

 瑠璃の箍が外れたと聞いて向かった先では、全てに絶望したような表情の息子がいた。

 理性どころか自我を失い、ただひたすら力を暴走させる瑠璃。

 複数の知り合いが手を貸してくれたから、両方が無傷なまま事を終わらせられたけれど、私だけだったらきっとただでは済まなかった。

 それが、昨日のこと。


 昏睡していた瑠璃が目覚めたとき何があっても良いようにと待機していた間、瑠璃の変貌の原因を知った。

 慕情故にその身を滅ぼす神というのは多い。

 神故に一途で、神故に融通が利かず、その為に想い人を亡くす。

 瑠璃も、その一人になろうとしていたのだ。


 神と人の子とはいえ、私の血を色濃く発現させた瑠璃の力は強い。

 これだけで済んだのは偏にこの子の人望とあの人の繋がりがあったから。


「瑠璃の想い人への細工も済ませました。が…あの男。私では力不足だったようですね……」


 輪廻転生の輪を見つめて瑠璃の想い人を殺した挙句に逃走し、自害した男の魂を見る。

 かつて地球を治めていたとはいえ、昔の話に過ぎない。そのために掛けた封印は不十分なものになっていた。

 それでも、『狂い』の前兆であるあの光の大部分を抑えられたのだから、後でもう一度封ずればいいかと思い、考えるのをやめる。


「瑠璃が、また……恋できますように」


 母親として、彼女はただ願う。




後回しにして結果忘れるのが作者の常

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