5 選択
瑠璃君が来てくれるようになってから三日。
良性腫瘍から悪性腫瘍に診断が変わり、入院を余儀なくされて今日。
このまま延命治療を続けるか、薬を飲んで症状を緩和しながら家で残りの人生を過ごすか。
選択肢を提示された。
『…患者様にこんなことを言っていいとは思いませんが……短い、御命ですから。ご自分でお好きなほうを選ばれるべきだと思います。………申し訳ない』
治せない状況にあった私の病気。
主治医になってくれたこの先生は、本当に力を尽くしてくれているとは思う。
けれど、私は……人間として、生きていきたい。
女として、生きていきたい。
だから、自宅に帰ることを選ぶ。
勿論、同じ場所で先生からの話を聞いていた親は反対してきた。だけど、私の意志が変わらないことを知ると、毎日電話をすることを条件に許してくれた。
自宅は、見舞いに来てくれていた二人が使っていたから綺麗なままだった。
…が。
「理沙、盗聴器あったんだけど心当たりある?」
くるりと宙返りした瑠璃君が差し出した壊れかけ?の盗聴器。
「ない」
「……うふふふ、どうしよう。神矢ルト、だっけ。消しちゃってもいいよね」
即答すると瑠璃君の笑顔が怖くなった。
「神様が人を殺しちゃってもいいの?」
「もともと神矢ルトは監視対象なんだ。彼の魂は世界に悪影響を及ぼす可能性があるからね」
「……そうなんだ」
殺すのと監視するのとは全然違う気がするのだけど……。
大丈夫なのかな?
☆
神矢ルトが里紗の家に盗聴器を仕掛けていた。
そのことに、とても苛ついていた。
誰が見ても不機嫌に見えるだろう表情に、薄ら笑いを浮かべる。
「さくっと消しちゃおう」
「…だ、誰をですか!?」
「ん?神矢ルトだよ?」
「いやいや人間を殺すのはいかがなものかと思いますが!」
「うるさいなあ…封印を施す予定が抹殺する予定に変わるだけじゃないか」
「……」
僕の顔をみた部下達が揃って顔を引き攣らせ、背けた。
そんなに酷い顔かな?
母上も父上も美形だ。だからその血を継いでいる僕も結構イケてる顔だと思うんだけど。
この時、僕は苛立ちを募らせるこの感情の名前を知らなかった。
ずっと、無縁だと思っていたから。
もっと早くに気づいていれば、
結果は変わったのだろうか