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5 選択

 瑠璃君が来てくれるようになってから三日。


 良性腫瘍から悪性腫瘍に診断が変わり、入院を余儀なくされて今日。

 このまま延命治療を続けるか、薬を飲んで症状を緩和しながら家で残りの人生を過ごすか。

 選択肢を提示された。


 『…患者様にこんなことを言っていいとは思いませんが……短い、御命ですから。ご自分でお好きなほうを選ばれるべきだと思います。………申し訳ない』


 治せない状況にあった私の病気。

 主治医になってくれたこの先生は、本当に力を尽くしてくれているとは思う。

 けれど、私は……人間として、生きていきたい。

 女として、生きていきたい。


 だから、自宅に帰ることを選ぶ。


 勿論、同じ場所で先生からの話を聞いていた親は反対してきた。だけど、私の意志が変わらないことを知ると、毎日電話をすることを条件に許してくれた。

 自宅は、見舞いに来てくれていた二人が使っていたから綺麗なままだった。



 …が。



「理沙、盗聴器あったんだけど心当たりある?」


 くるりと宙返りした瑠璃君が差し出した壊れかけ?の盗聴器。


「ない」

「……うふふふ、どうしよう。神矢ルト、だっけ。消しちゃってもいいよね」


 即答すると瑠璃君の笑顔が怖くなった。


「神様が人を殺しちゃってもいいの?」

「もともと神矢ルトは監視対象なんだ。彼の魂は世界に悪影響を及ぼす可能性があるからね」

「……そうなんだ」


 殺すのと監視するのとは全然違う気がするのだけど……。

 大丈夫なのかな?





 神矢ルトが里紗の家に盗聴器を仕掛けていた。

 そのことに、とても苛ついていた。

 誰が見ても不機嫌に見えるだろう表情に、薄ら笑いを浮かべる。


「さくっと消しちゃおう」

「…だ、誰をですか!?」

「ん?神矢ルトだよ?」

「いやいや人間を殺すのはいかがなものかと思いますが!」

「うるさいなあ…封印を施す予定が抹殺する予定に変わるだけじゃないか」

「……」


 僕の顔をみた部下達が揃って顔を引き攣らせ、背けた。

 そんなに酷い顔かな?

 母上も父上も美形だ。だからその血を継いでいる僕も結構イケてる顔だと思うんだけど。



 この時、僕は苛立ちを募らせるこの感情の名前を知らなかった。

 ずっと、無縁だと思っていたから。


 もっと早くに気づいていれば、



 結果は変わったのだろうか





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