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4 歓喜

 美しい、金髪の少年。

 太陽を背にこちらへ向いているからか、瞳の色は分からない。が、とても美しいのは分かる。


「……」

「……」


 見つめあうこと暫し。

 少年が、動いた。


 すーっと横へスライドするように動き、それを私の目が追い、またすーっと動いて、私の目の前へ来た。


「……」

「……」


 病室の明かりを受けて、見えなかった瞳の色が見えた。

 その色は、吸い込まれそうな蒼。

 僅かに紫が混ざるその色は、とても、綺麗で。


 それが、私達の出会いとなった。





 扉が開く音がして、はっと振り向くと看護師と医者がいた。

 少年と見つめあっている間に男達はどこかへ行ったらしい。


 点滴の取り換えと、医師との会話をしている間に少年もどこかに行ってしまったらしく、一人になった時、既に少年の姿は無かった。


「また、会えるのかな…?」


 ふと、呟いた。





 正午になって、その男の姿を確認するために病院へ近づいたら、男と頻繁に会っているという報告が上がっていた女性の目が、僕の姿を捉えていた。

 最初は、偶然だと思った。その視線が向いているのは空だと思って。

 でも。

 横に動くと彼女の視線も合わせて動いた。

 近づくと、しっかり目を合わせてきた。


 僕は、初めて人間に姿を見られたということに、かなり動揺していたんだと思う。

 彼女が病室の扉が開くのに反応して背を向けた瞬間、僕は一目散に神界へと駆け込んでいた。



 軽くパニックになってた。

 僕の様子がおかしいことに気付いた部下達が母上を呼んで来るまで、周りの声も聞こえなかった。

 母上に、時々そういった人間がいるのだと教えられなければ二度とあそこへ行かなかっただろう。

 神の姿が見える人間は、昔であれば巫女だと持ち上げられていただろうが、今の時代では頭のおかしい人にしか見えないから、彼女と接触する必要がある場合には細心の注意を払うよう言われた。

 僕のためにも、彼女のためにも。




 それからというものの、人目を忍んでちょくちょくと会いに行く日々を過ごしていた。

 彼女は日々会いにやってくる男の所為で相当ストレスが溜まっていたらしく、僕の姿は他の人間に見えないことを教えると、愚痴を言ってくれるようになった。

 それが、何故か嬉しかった。



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