1 その時までは
こんにちは、宙来です。
今作は共通プロローグ企画の番外編です。そちらを読まなくても支障がない様に書いてまいります。
キーワードをご確認のうえ、読んでいただけると幸いです。
不定期更新。
私の名前は岡田里紗。どこにでもいるだろう平凡なOLである。
大学卒業と同時に就職できたから比較的幸運なのだろうとは思うけど。
両親は健在。貧乏すぎることもなく、普通に暮らしていた。
ただ、最近……男にストーカーされている、らしい。
出社するとき、退社するとき、家へ帰ってくるとき。
休みの時、実家へ行くとき。
必ずとも言って良いほど男の姿を見かけるのだ。
最初に気づいたのは同じ部署、反対の方面に住んでいて同じ時間帯に出社してくる女性の先輩だった。
私の教育係になった先輩で、今でも何かとお世話になっている。
その先輩曰く、私が出社するとき、私が来ると後ろからその男が必ずくっついて来ているというのだ。
客観的に見るならその男は美男、である。
私の後を付けている?時もきゃーきゃー騒がれているのに何で気づかなかったの?と呆れられた。
教えられたときから注意し始めると、確かに男がついて来ていた。
不気味と感じつつも日常を過ごし、会社が推奨する健康診断を受けて、
――癌と、診断された。
ステージ④。助かる見込みはないと診断され、絶望した。
体調に変化が出にくい癌だったらしく、既に、手遅れの状態にまでなっていたのだ。
そのことを両親に伝えて、出した私の結論は、『できることはやる』。
できる限り治療を続け、間際まで抗う。
二人とも、貴女がやりたい方にと言ってくれた。
そして、会社を辞め、治療のため入院した。
入院した部屋は一人部屋で、最上階に近い部屋。
聞けば、大部屋が満杯なのだとか。
そのときは、そうなのかーと思っただけだった。
実家から駆けつけてくれた両親には、医師が丁寧に説明してくれて。
毎朝の健康診断以外は煩わしいものもなく治療を受ける日々を過ごしていた。
あのときまでは。