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第一話:眠れぬ夜

「・・・はぁ」

アルが起きたのは、まだ満月が真上に昇っている頃だった。別に用事があるわけではないが、最近見る夢で目が覚めてしまう。あれは夢なのだろうか、古く、幼い頃の記憶が寝ている間に蘇ってきているのかもしれない。

『あれから12年かぁ・・・』

あの出来事を思い返すたびに、今でも胸が締め付けられるような気がする。しかし、彼にとってそれは少し嬉しいことでもあった。なぜなら今でも彼女のことをあきらめていないという証拠なのだから・・・。

『シェイル・・・』

月に向かい、胸の中でその名を呼ぶ。今頃どうしているのだろうか・・・。

今度は部屋を見回してみた。こざっぱりとして、独り暮らしには充分の部屋だ。さっきの事は夢だったが、こちらはどうも夢ではないらしい。

『・・・ふぅ』

昨日の昼、ようやくアルは『暁』と言うギルドに入ることができた。ここはそこの宿舎である。ギルドとは、簡単なことから普通の人にはできそうのない大事な仕事を請負う・・・平たく言うと『何でも屋』を指している。その中でも暁は、この『クレンシア王国』の中でもかなりの老舗である。

「眠れない・・・」

昨日の今日だから仕方がない。しかも明日から普通に仕事をこなしていかなければ。その緊張から、否が応でも目が覚めてしまう。

『ん〜・・・思い切って外に出てみようかな。別に夜中外出てもいいみたいだし』

寝間着に上着を羽織る。いくら暖かくなってきたとはいえ、やはり夜は寒い。準備が終了して、いざ出発!

宿舎は充分に明かりが燈されていた。明るいのはいいのだが、ここはやたらと通路が多く迷ってしまうと一筋縄では戻れなさそうだ。それを示しているかのように、

『迷子の方はこのレバーを引いてください』

と言う不思議な看板が至る所に設置されている。できればお世話になりたくない。走行しているうちに、やっとのことで中庭に出ることができる『扉』・・・ではなく『台』があった。正式名称『空間転移装置』。これはどういう原理なのか知らないが(たぶん魔法でできている)、ともかく表示されている場所まで送ってくれる優れものらしい。

『・・・』

手前でアルの動きが止まってしまった。アルはどうもこれが苦手らしい。

『これ・・・頭が痛くなるよぉ・・・』

怖気づいて数分動けなくなっていると、後ろから声がかかった。

「君、どうかしたかい?」

振り返ると、声の通りに優しそうな紺色の髪をしたお兄さんが立っている。

「あ、あはは・・・」

嬉しさのあまりにぎこちない笑いとなってしまった。その変な顔にも臆せずお兄さんは続ける。

「あぁ〜・・・君、『ワープ』苦手かい?」

「は、はい」

そう言うとお兄さんは愉快そうに笑う。

「ははは、はじめての人にはこれが苦手って言う人も少なくないから仕方ないよ。そうだ・・・他の道を案内しようか?」

アルはお兄さんの優しさに感動した。アルはお兄さんに導かれて階段を降りていった。

「あ・・・ありがとうございますっ!あ、あのボク・・・昨日ここに来たばかりで・・・」

「そうかそうか、それは大変だね。・・・やっぱり眠れないかい?」

「はい・・・明日からのこと考えると緊張しっぱなしで・・・」

そうこうしている内に二人は中庭へ着いた。

「まぁ、これだけは言えるかな。『無理せずに自分のできる範囲のことをしろ』危ない目に会うのは辛いからね、慣れてきたら徐々に上のランクに挑戦すればいいし」

「ふむふむ・・・あ、ここの仕事ってどういう風にすればいいんですか?」

こんな素朴な疑問にもお兄さんは真剣に考えてくれる。

「ん〜・・・そうだな。明日多分教えてくれるかもしれないけど、まずはカウンターで自分がやりたい仕事をきめるんだ。ただし、自分のランクよりうえの仕事。自分に不向きな仕事はやらないことだ。もし、特にこれと言ってやりたい仕事がなければ受付の子に言って決めてもらうのも悪くない。んでもって、仕事を請負ってからその依頼者のところまで行って仕事の確認をするんだ。そこから仕事開始。終わってから依頼者にもう一度会って報酬を貰いここへ帰る。そしてカウンターで結果の報告っと・・・大体の流れはわかったかい?」

アルはそれを一言残さずメモした。

「ありがとうございます、これで明日も何とかいけそうです」

「そうかい、それはよかったよ。・・・それじゃあ、私からも質問いいかな?」

突然の質問に少し戸惑ったが、さっきの御礼も含めて答えるようにした。

「質問って・・・なんですか?」

「・・・どうしてここに入ろうと思ったんだい?」

この質問に答えるのは少し時間がかかった。

「あの・・・お兄さんは12年前のクレーヌの村で起こった事件知ってますか?」

「あぁ、たしか村人が惨殺されたって話か・・・」

「はい、ボクは・・・その村の生き残りなんです」

突然の告白に驚きを隠せなかったが、お兄さんは推測を言ってみた。

「・・・敵討ちかい?」

「いえ・・・その時、僕の妹が犯人に連れ去られたんです。だから妹を見つけたいんです」

さっきまでへなへなな感じが漂っていたアルだが、このときばかりは真剣だ。

「そうか・・・悪かったね」

「いえいえ、もう慣れましたから」

「・・・いつか見つかるといいな」

そのまま二人はベンチからこの中庭名物の巨大桜を眺めていた。しばらくすると、玄関ホール辺りから誰かが手を振っている。

「あ・・・そうだった。悪いけどそろそろお暇させてもらうよ」

「ありがとうございました!・・・またお話ができると嬉しいです」

お兄さんは立ち上がる際にこちらに向き直った。

「君の名前は?」

「ボクはアル。アル・フリーウェルです」

「そうか、私の名前はジン。ジン・グローウェルだ、君に逢えて嬉しいよ」

その名を聞いてアルはたちまち固まってしまった。ジンが手を出して無意識のうちに握手を交わす。

「それじゃあまた今度!」

そう言って彼は走り去ってしまった。

『あ・・・あ、じ、ジン・クローウェルってここのスターじゃ・・・?』

いろいろな気持ちが入り混じり、少し興奮した状態でアルは部屋に戻ることにした。

『寝れなくてもいいからベッドに潜っておこう・・・』

明日はもっと緊張するかもしれない。

ようやく本編スタートです↑↑やたらと長くなってしまいました(汗)ごめんなさい↓これからもがんばりますのでよろしくお願いしますっ!

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