第十三話:多勢に無勢…?
栄えある(?)十三話です!今回は何故か長めです〜
走っている間に、イノは島の状況を説明した。それは、機械の暴走は一ヶ月前から始まったことや、その機械を作った人の名が『テラ・クレウス』と言うことなど、様々だった。
「う〜…そんなに沢山言われても…」
「そう言う時は、メモするのが一番いいんだなあ」
ジンが先輩らしい(?)アドバイスでフォロー。すかさずアルは懐から取り出した手帳とペンでメモを始めた。
「あの〜質問いいですか?」
「どうした?」
「テラさんは、今どこにいるんですか?」
「あいつは、さっき行った役所の地下牢に容れられてる。一応犯罪者だからな」
その時イノは何となく寂しそうだった。
「ふむふむ…」
一通りメモをとり終わった後、アルは考え始めた。
「ジンさん、やっぱりテラって人に会うべきですよね?」
「うん、それが妥当だね。イノ君、会えるかな?」
イノは困ったように首を傾げた。
「会えるけど、多分話できない」
「どうしてですか?」
「ちょっとな…錯乱状態みたいで、ずっと譫言ばかり言ってる」
アルとジンはお互いを見て肩を竦めた。原因が掴めないと、対処できない。そうこうしていると目的地の北門にたどり着いた。
「こりゃ酷いぞ…」
辺りには、狼型の機械の残骸が散らばっている。その先では、二人の少年が戦っている。
「…ところで、アル。武器はどうするのかな?」
あっ、と口を開け慌てるアルにジンは指示した。
「私とイノで、彼等に加勢してくるから、アルは適当に武器を拾って、街の中にいる生き残りをかたずけること!」
「は、はい!!」
そう言って飛び出すアル。それを見届け、ジンは向き直った。
「あんたも大変だな」
「いやいや、なかなか楽しいものだよ、新人君は限りない可能性を秘めてるからね…そろそろ行きますか!」
走り出すジンにつられて、イノも戦場に駆け出した。
「武器、武器…」
走りながら、アルはそればかり口ずさんでいた。が、木の枝すら見つからない。
『さっきの武器ってどうすれば…』
『そう言えば、さっきは危なくなった時に…』
などと考えてると、悲鳴が道の先から聞こえた。反射的にアルは走り出す。しかし、少し走っただけで息が上がってしまった。たどり着いたときには、へたり込んでしまいそうだった。
「いやぁ〜!」
声の主は小さな女の子だった。アルに向かって助けを求めたが、その彼は戦う前から戦闘不能状態。顔を上げるのが精一杯だった。
「あ……」
その瞬間、彼は言葉を失った。数匹の狼に囲まれている少女が、アルの眼には『あの人』にしか見えなかったのだ。
「シェイル!!!」
次の瞬間、信じられない速さでアルは少女の側に駆け出した。そして彼の手には例の剣が。「お、お兄ちゃん・・・」
突然の加勢に狼達は驚いたが、すぐに体制を立て直して二人を囲んだ。
「よっと…しっかり捕まってて!!」
アルは少女を抱えて、一目散に北門に向かって走り出した。
「きゃぁっ!」
すかさず狼が襲い掛かるが、一瞬で真っ二つに斬られてしまった。「……まだまだだね」
狼の残骸を見て、アルは鼻で笑った。そして再び走り始める。狼達も後を追うが、攻撃はせずただ二人を囲むようにした。
「あれ…?」
最初は狼の数も少なかったが、門に近付くにして数が増えてきた。「結構しつこいなぁ…」
北門に近づくにつれて、四人の姿がはっきりと見えてきた。
「お、お兄ちゃん…」
脇に抱えていた女の子は震えていた。
「ん?大丈夫だよ」
いつものアルでは一生聞けなさそうな戦闘での余裕の言葉。しかし、一番驚くのが、彼自身だとその時は誰も知らない。
「…これじゃあ、きりがないな」
リュートが呟いた。
「そうですねぇ…ちょっとヤバイかも…」
と、アリオン。「無理はするな。お前の分も片付けてやる」
「そんな〜…先輩に申し訳ないですよ」
…まったく。ピンチのはずなのにどうしてここまで余裕なのか。一方ジンとイノは…。「いつもこんなにやってくるの?」
ジンからは、まだまだ余裕が感じられる。
「………」
身の丈以上の槍をぶんぶん振り回しているが、喋る余裕はないようだ。
「いやぁ、今日もいい天気だねぇ」
構わず喋り続けるジン。ともかく喋っていたいようだ。何となく賑やかな四人(三人?)だが、敵の数は一向に減る気配がない。
「これじゃ全くきりがないな…あんたら何かいい方法はないのか!?」
必死に戦っていたイノが、ようやく口を開いた。
「魔法が使えるなら簡単なんだけどねぇ…生憎私はそれほど得意じゃないんだ」
と、ジン。
「俺もだ…」
「ぼくは…さっきのやつで力が…すみません」「そういえば…」
イノが再び口を開く。
「あの新米は?」
「残念だけど…彼には無理だと思う。戦いにおいて素人だからね」
残念そうに(?)ジンは告げた。
「全く…使えない奴だ」
「これから大変ですねぇ…大丈夫かな?」
などといろいろ言われてるアル。…と言うより、戦闘中にここまで喋れる人はそうそういない。
「あ…あいつ、来た…しかも結構な数連れて…」
「よかった…武器は持ってきたみたいだね…」
四人は、アルの変化に未だ気付いていなかった。
「くっ…しつこいな、こうなったら」
アルは空高く跳び上がった。それを追うようにして周りの狼も跳び上がる。近づく狼に少女は再び悲鳴を上げた。
「邪魔だぁ!!!!」
アルは空かさず回転りを放ち、さらに高くジャンプする。そして、剣を空に向けて掲げ、何かを唱え始めた。
『天より来りし雷鳴の力、この剣に宿し、彼の者を打ち砕かん』
「行くぞ!『サンダーソード』!!!」
一瞬にしてアルの剣にカミナリが落ち、バチバチと恐ろしい音を上げながら雷の力が宿った。それを地面に向けて勢いよく投げ付けた。
「やばい!飛び上がれ!!」
四人は間一髪でアルの一撃をよけた。が、狼の軍勢は、避けることが出来ず、更に弱点の電気により次々と倒れていった。
「ふう…やっと片付いた…大丈夫だった?」
「う、うん…お兄ちゃん強いね」
「守りたい人のためには頑張らないとね…そろそろ戻らないと」
ようやく地上に戻ったアルと少女。しかし、アルの様子がどうもおかしい。
「アル……凄いね!まさか魔法が使えるなんて…」
ジンはアルの両手を握り、振り回した。
「え…?僕が魔法?」アルは、いつもの、どこか腑抜けたような顔をした。
「まさかぁ…僕が…そんな事出来るわけ…」
彼の体がぐらついた。そして、そのまま地面に突っ伏してしまった。
「アル!…アル?!」
ジンが揺するものの、全く動かない。すると、イノが提案した。
「まず、役場に戻ろう。そいつの事もあるし、町長にこの事を説明しなきゃならない」
ここまで読んでくださってお疲れ様です!&ありがとうございます!!これからも頑張るつもりですが、もしかしたら新しいものも書いていくかも…いろいろネタが浮かんできて…ウズウズしてます。もしよかったらそちらの方も読んでみていただけると幸いです(笑)それではっ!!