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 そして今、〈赤の雫〉にいる。〈始まりの庭〉に一人だ。皆はモーフィアスの〈始まりの庭〉に移動した。そこで待つという。

 不安と息苦しさは少し和らいだ。だが胸に微かに残っていて、いつでも再発しそうな気配はある。

 目の前に広がる青空、頬を撫でる風、そよぐ草原、自分の身体、衣服、腰に差した刀。

 今、自分は不破光春だ。結局、〈赤の雫〉にきてしまった。これからどうするのか。それを考えなければ、決めなければならない。この場所で。自分の現実世界が仮想世界だと認めて。

 今はどう考えている? 仮想世界だと認めているのか? 直前の、家で皆の消失を見たばかりだから、自分の世界が仮想世界だろうという気持ちが強いのかもしれない。

 だが、認めずにどうする? あの世界を現実世界だと信じること。それではあの世界の〈仮想の住人〉になるということではないか。

 仮想世界だと認めるしかない。受け入れるしかない。その上で、これからのことを考えなければならない。この場所で。〈赤の雫〉で。

 ふと、この世界で生きていくことを考えた。不破光春。この名前はこの体のもの。

 無理だ。ここは自分が生きていく世界ではない。この世界で生活なんてできない。

 では生活ができれば生きていけるのか? 日常生活を送る場所が自分にとっての現実世界なのか。

 自分とはどちらだ。不破光春か。名前のない現実世界の自分か。

 名前のない自分だ。不破光春じゃない。こんなことを考えても意味がない。あの世界でどう生きるか。〈日常生活の仮想世界〉でどう生きるか。それを考えなければ。

 男は好きしてやるといった。世界を。自分にとって世界とはどんなものか。自分の周り、自分の感覚で知ることができるもの、生きている環境。それが世界なのか。他の世界のこと、自分の知らない人達や知らない場所、知らない出来事はどうだ?

 自分の知らないところで世界は作られている。動いている。それらも自分の世界か。では自分の世界ではないものとは? 自分が知り得ない情報? 自分の行けない場所? 自分が存在しない場所? 自分の影響がない場所? 皆の世界は、自分の世界か? 自分の世界と皆の世界との違いは? 自分の世界にあるものが、皆の世界にもあるのか。その逆は?

 皆の現実世界をどう考えればいいのか。自分にとってもそちらが真の現実世界なのか? 行けないのに? 知らないのに?

 現実とは何か? この体は現実か? 目の前のこの風景は、世界は現実か? 例えば現実だと思い込むことで、現実世界になるのか?

 いいや、ならない。ここは仮想世界だ。そして自分の世界も。しかしそれをどうやって判断している?

 この世界、〈赤の雫〉は、自分の常識とかけ離れている。死からの復活や、場所、時代、人々、生活、戦い、怪物、すべてが。

 では自分の世界は? 自分自身の名前、過去の記憶がないこと。家族との生活の疑問点。マルスやあの男の話。皆の態度。人の消失と出現。家族が家から消えたこと。

 これだけか? 自分の世界が仮想世界だという根拠は。もしこれらがまったくの嘘だったら? すべて仕組まれたこと。あそこは現実世界で、自分は何かしらの記憶障害なだけ。人の入れ替わりも、家族の消失も演出だとしたら? だが何の為に?

 何を信じればいいのか。誰を信じれば? マルスやあの男以外の誰を? うた、モーフィアス、猫。しかし誰の言葉でも、信じることができるかわからない。

 皆。皆の現実世界。そちらこそが仮想世界だったらどうする? 自分が皆の現実世界に行けないから、だから自分の世界が仮想世界だというのか。しかし確かめようがない。皆が戻った方法では、自分は戻れなかった。

 自分の現実世界。皆の現実世界。皆の現実世界はあるのか。恐らくあるのだろう。そして自分の世界が仮想世界である疑いは強い。

 いまだ、仮想世界だと完璧に認めることができない。どうして認められない? どうやって認めることができるのか。仮想世界。仮想世界にしたくないのか。現実世界であってほしいのか。どうすれば現実世界になるのか。男に要求すればそれは叶うのか。

 何故、現実世界にこだわるのか。その現実世界とは、皆の現実世界なのか。どうして皆の世界を? そちらが真の現実世界だと考えているから? 皆の現実世界に行きたいのか。そこで暮らしたいのか。それを望んでいるのか? 何故? 自分の世界が仮想世界だから? 作られた世界だから? でも行けない。身体がないから。では身体を作れば……

 馬鹿馬鹿しい。そんなことできるはずがない。

 あの作られた世界を、どうすれば自分の現実世界にできるのか。自分の認識次第か。仮想世界であるという記憶を消せばいいのか。あの男のいうように。

 記憶を消す。それは正しいことか。今の自分ではなくなる。結局、それはその世界の〈仮想の住人〉になるということではないか。

 しかし、自分はどうあっても〈仮想の住人〉なのではないか? 皆の現実世界に肉体は存在しないのだから。

 皆。どうして皆のことを考える? 男が言うには、皆は自分の世界には来なくなる。そして自分も皆の世界には行けない。マルスは連絡してくるかもしれない。使徒へ協力してほしいというのだから。そのマルスの提案。家族を戻すこと。そして世界の今の状態を維持すること。

 家族。望めば家族は戻るのか。しかし彼らが住人だと知ったうえで、生活できるのか。それに家族を戻すという行為自体が、世界を仮想世界にしてしまう行為ではないのか。

 記憶を消した方がいいのか。そうすれば家族が〈仮想の住人〉だと考えなくて済む。しかし自分ではなくなる。

 自分とはなんだ? 今の自分と、記憶を消して仮想世界を現実世界として認識し、生きる自分。それは自分ではない。今の自分では。

 今の自分であること。このままでいること。それが今の望みなのか。

 では自分はこのままで、世界はどうするのか。

 マルスは調査の協力をしてほしいと言った。使徒の為に。調査の内容は話さなかったが。どんなことをするのか。協力しなければどうなるのか。世界を壊されるのか。

 仮想世界の破壊。どうなるのか想像できない。それを防ぐ手段は自分にはない。世界を壊させない為に、協力すべきなのか。自分があの世界で生きる為に。

 自分にとっての生きる場所、世界はあそこしかないのか。あの世界の住人。住人は住人らしく。猫の言葉。

 しかし、その世界の住人であるということ。それは皆にも言えることではないか。皆は皆の世界の、自分は自分の世界の、住人だ。

 自分の世界が仮想世界だとして、それを受け入れ、生活できるか? しなければならないのか。

 現実と同じならば。自分も皆の現実世界の住人ならば。

 皆と同じ現実世界にする? それは可能なのか。そんなに皆と別れるのが嫌なのか。

 自分は皆と同じ世界で生きたいのか? たかだか〈赤の雫〉という仮想世界の中だけの関係なのに、それに執着するのか。

 皆を自分の世界に作る? だめだ。そんなものは虚構だ。

 皆、他人の存在。自分にとって他人とは。皆の存在とは。うた、モーフィアス。二人の存在は?

 二人とは強い絆があるわけではない。本名すら知らない。現実世界ではどんな人物なのかも。

元々、現実世界で二人と会うつもりなどなかった。〈赤の雫〉で出会い、その世界の中で会えれば十分だった。それ以上を望んでいたのか? わからない。ひょっとすれば、現実でも会おうという話が出たかもしれない。そしてその時に会えないとわかり、自分の世界の異変に気付いたかもしれない。

 二人との関係。これでおしまいなのか。おしまいにしていいのか。だが自分になにができる? もう〈赤の雫〉という共通点もなくなるのに?

 怖いのか。〈赤の雫〉なしで現実の彼らと向き合うことが? 不破光春ではなく自分自身を晒すことが? しかし、不破光春も自分自身だ。別人格、役を演じていたわけではない。

 自分は二人との関係を続けたいのか? 終わらせたいわけじゃない。〈赤の雫〉での二人との時間は、苦痛もあったが充実や達成感もあった。楽しかった。しかしそれも〈赤の雫〉があればこそ。しかし〈赤の雫〉や他の仮想世界は使えなくなるらしい。

 メールなどで連絡は取り合えるらしい。〈赤の雫〉なしで、関係を続けるのか? 自分自身をさらけ出し、踏み出すべきなのか。関係を求めるべきなのか。自分から求めていいのか。二人の判断を聞かなければ。二人が関係を続けてくれるなら……

 返事を相手に委ねることは甘えか? 卑怯なことか? 自分のようなわけのわからない存在が、関係を要求してもいいのか。独りよがりではないのか。二人に迷惑が掛からないか?

 しかし、自分の望みは伝えるべきだ。最初から二人の判断に任せるのではなく。自分から関係を続けたいと言う。そして二人が拒否したなら、それを受けとめ、関係を諦める。一人になるが、それでも生きていく。そうするしかない。

 うた、モーフィアス、二人に対する気持ちは決まった。他の二人にはどうか。猫は、自分と友達になってくれるかわからない。そもそも彼女のことは知らない。ほとんど他人と言っていい。彼女が友達になってくれるなら、自分も応じるべきか? 想像できないことだが。

 そしてマルス。使徒だ。彼らに協力すべきかそうでないか。

 協力すべきだろう。世界を壊されたくはない。どんなことをさせられるのかわからないが、無理なことは無理だと言えばいい。

 家族はどうするか。わからない。

 世界を変えるか。使徒に協力するなら、変えない。マルスの要求を受け入れる形になる。今の状態を維持すると。

 自分の記憶は消すか。消さない。今の自分でいたい。しかし今の自分、自分が今のままの自分であるということ。それは正しいことなのか。

 自分。自分。自分。

 自分として生きていくこと。改めて意識すると動機が早まった。

 生きていけるか。しかしそれ以外にできない。死ぬことなど一片たりとも考えたことはない。生きていく。あの世界で。自分のままで。

 今、胸に広がった感情は喜びだろうか。たったそれだけのことを自分で見つけられた、そのことに安堵したのか。しかし、この決意はまだ柔らかいような感触だ。揺らいでいる。決意が固まった、とは言えない。方向が、道が見つかったという感じだ。

 それにまだ決まっていないこともある。家族だ。家族を世界に戻すか否か。自分にとって家族とは。

当たり前のものだった。だが疑問を突き付けられ、どう考えていいのかわからなくなった。〈仮想の住人〉か。真実の家族か。

 今まで違和感なく家族として暮してきたことをどう考える? そのように世界が作られていたから? 自分の感覚が、そう感じるように男に刷り込まれていたからなのか。だから家族を家族だと思っていたのか。家族との生活を実現するために。

 この感覚を消せば、家族を家族と思わなくなるのか。その必要があるのか? 今の感覚、今の自分を作るもの。それを否定するのか。

 そもそも自分で得たものではない。では、自分で得られたものとは何だ? わからない。

 家族を消すこと。家族のいない生活。あの家に一人。想像し、世界から隔絶されたように感じた。家族を消すことが正しいことだとは思わない。思えない。消したくない。

 では家族を〈仮想の住人〉と認めて、そのうえで生活していけるのか? 世界が作り物だと認めたうえで? 

 いいや、まだわからないのだ。あの世界が仮想世界か現実世界か。

 しかし、もう心の中では決まっているのではないか。仮想世界だと。現実世界である可能性は低いと。

 仮想世界。それでも生活していけるのか? だが自分にとっては現実世界でもある。結局、決めるのは自分の主観なのか。自分の属する世界。そこから抜け出せない限り、どうあってもその世界の住人。

例えば家族を戻して、自分が何も言わなければ、今まで通りの生活が送れるのか? 

 いや、こんな話をしても、家族が信じるかわからない。この世界に生きる人間、仮想世界だと疑わない人間に疑問をぶつけても、意味はないのかも。

 何か変えたら? 世界に変化を与え、それを目撃したら? 自分は世界を仮想世界として受け入れるようになるのか?

 その為に、世界を変えるか? 事実を明確にするなら、変化を与えるべき。

 しかし望んでいるのか? 自分で可能性を消すことになる。現実世界であるという可能性を。

 そんな可能性に縋ってどうする? 卑怯なのではないか? 仮想世界にしたくないから、確かめないというのは。

 確かめるべきなのだ。変化を与えて。

 しかしその変化で、今後の生活に影響は出ないのか? 常に仮想世界であるという証明を続けるような変化は、自分にとってストレスにならないか?

 天気はどうだろう? 自分の望む天気に変えられる。それなら対して気にもならないはず。証明にもなる。いや、ならないか。たまたま偶然天気が変わるなど。それが続けばどうだ?

 考えをとめる。この考え自体が、見当違いなものだとしたら?

 それに仮想世界だと証明されて、そこでどうやって生活していく? 今まで通りの生活ができるのか? 学校に行き、将来を模索する。その繰り返しか? 多分、自分が動けば状況は変わるはず。現実世界と同じように作ったと男はいうのだから。

 自分がすべきこと。あそこは仮想世界であり、しかし自分にとっての現実世界であること。それを受け入れることか。

 いいや。この結論は、変化を避けようと、確かめることから逃げようとする気持ちが強く働き、出てきたものだ。それを自覚する。もし、そうするしかないとしても、その前に世界に変化を与えて確かめるべきだ。世界が仮想世界であるという証明。その変化は必要なんだ。

 ではどんな変化を与えるか。案は浮かばない。助力を得るべきだろうか。マルスや皆の。しかしマルスは世界の変化を望んでいない。世界を今のままの状態で維持することを望んでいる。

 話してみるべきか。こちらの望みを。自分が未だにあの世界を仮想か現実か判断できないから、確かめるために世界を変えたいと。拒否されるだろうか。しかし自分の世界のことだ。マルスは拒否できないはずだ。

 問題は変化の内容。天気以外に何かいい案はあるか。それを話し合いたい。

 まだ迷っているのかと思われるだろう。メタトロンを調べて、現実世界に戻れないとわかったのに。

 だがそれは彼らが戻れる方法では戻れなかったというだけだ。だからまだ信じられない。

 皆には何と説明しようか。自分がこれからどうしたいのか。生きていくことに変わりはない。そのうえで使徒に協力する。家族、記憶は消さずに。そして初めに仮想世界であることを証明するために世界に変化を与えたいということ。その変化の内容を一緒に考えてほしい。

 これらを伝えることができるか? 伝えなければ。

 もし拒絶されたら? 世界を変えるなと言われたら? マルスと協力できなければ、一人でも行うのか? 変化を。その可能性はある。

 そうなってしまっても、変化を行う。それ以外にない。では内容は? 考えつかない。男に時間をもらうべきだろうか。

 この問題で使徒と決裂したら、恐らく皆とも別れることになる。一人で立ち向かうことになる。その事態を想像し、不安になる。だがやらなければ。

 今、何時だろうか。六時十分。それを知って焦りが膨らんだ。確か男は七時にくるという。もう時間はない。

 どうする? 変化の内容を自分で考えるべきか。それとも皆に話すべきか。

 まず話すべきだ。話し合いでどうなるかわからないのだから。

 深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせる。

 皆に来てもらうか。それとも自分が行くべきか。逡巡し、こちらから行くことにする。モーフィアスの〈始まりの庭〉へ。


「決まったの?」

〈赤の雫〉でのマルスの姿は、自分と同じく侍、女剣士だった。一瞬、桜花のことを思いだした。

「記憶は消さない」最初に口から出たのはそれだ。自分にとって大事だからだろうか。

「使徒に協力する。世界はあのままで、だけど家族は戻す」

 要点だけ淡々と伝える。上手く言葉を練ればよかったが、そんな余裕もない。

「自分の世界が仮想か、まだ判断できない。だから、世界に変化を与えたい」

「変化? どんな?」とマルス。

「それを一緒に考えてほしい」

 自分を情けなく感じた。こんな要求をする都合のいい奴だと。

「難しいわね、何か考えがあるの?」

「天気を変えるとか」

 マルスは少し考え、「それでいいと思うわ。不破の直感、感覚で信じられるものなら」

 あっさりだった。まるで重要ではないかのような。拍子抜けして、次の言葉を失う。マルスが口を開いた。

「使徒へ協力してくれて感謝するわ。ただし、最初は返答の引き伸ばしを伝えてほしい」

 賛成すべきか。しかし自分にも時間は必要だ。考える時間が。男がそれを許すかわからなくても。

「わかった」

 もう一つ伝えなければならないことがあった。皆との関係についてだ。

 うたと、モーフィアス。猫はこちらに興味がないとでもいうようにそっぽを向いていた。

「モーフィアス、うた」

 二人を見る。見慣れた姿。黒い僧衣に幼い顔立ちの彼女。逞しい肉体、銀の鎧、厳しい顔立ちの彼。

「二人がもしまだ自分に付き合ってくれるなら、俺も関係を続けたい」

 言い終わった後の気持ちは乱れていた。二人以外人間の目があるからなのか、恥ずかしい。そして拒絶されることへの不安、言ってしまったという後悔。

「不破が〈仮想の住人〉か実在する人間か、俺にもまだ判断がつかない」とモーフィアス。

「俺の現実世界で不破と直接会うことが出来れば、現実世界の人間だと疑わないだろう。だが不破が〈仮想の住人〉だとして、友人になれないわけじゃない。〈仮想の友人〉を否定するつもりはない」

 仮想の友人。作られた〈仮想の住人〉と友人になること。そのように作られた世界、住人もいる。

「俺は不破を人間として見ていた。住人らしさは感じられなかった。確かにこれからのことはわからない。それでも今は、そうだな、俺も友達として付き合っていければと思っている」

 友達。モーフィアスの言葉を信じられないわけではない。ただ実感はなかった。まさか、という思いがあるだけ。

 そして、うた。彼女は苦しそうだった。返答に困っている。沈黙が続く。

「彼女は迷っている」モーフィアスが代弁する。「それも仕方がない。人間だと思っていた相手が住人だったら、戸惑うだろう」

 そうかもしれない。

「それに〈仮想の住人〉がどんなものか、経験が浅いから判断できない」

 うたが仮に〈仮想の住人〉だったら、自分はどうするのか。彼女のことを人間だと見ることができるだろうか。わからない。だがすぐに答えるのは無理だ。

「わかった」そう答えるしかない。

「猫さんは?」とマルスが聞く。

 猫はこちらを向き、「私は不破と友達になろうと思っていない。不破もそうでしょう?」

うたがあの時、何を思って猫を紹介したのはわからない。これから共に遊ぶ仲間ということだったのか。もし続けていれば、そうなっていたのか? わからない。

「知り合っても、それ以上はなにもないわ。私は友達になる気はない」

 自分も猫と同じ気持ちなのだろう。だからはっきりそう言われても悲しくなかった。

「わかったわ。では、不破の世界で男を待ちましょう」


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